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令和 1年 5月29日(水):初稿 |
○併合8級後遺障害を残す33歳男子無職の原告の後遺障害逸失利益につき、「後遺障害による逸失利益は、長期の将来にわたる収入の減少に対するてん補であるから、本件事故当時無職であることなどの事情があっても、永続的に就労の蓋然性がないといえない以上は、逸失利益は肯定しうるもの」とし、「本件事故以前の職歴・稼働実績に照らし、男子・高卒・全年齢平均賃金458万8900円(平成23年の賃金センサス)の7割に相当する収入が得られる蓋然性があるものと認めるとともに、本件事故による後遺障害の内容・程度(級)を勘案すれば、本件事故と相当因果関係のある逸失利益は、労働能力喪失率45%(併合8級)、喪失期間を32年(症状固定時35歳)として算定する」と認定した平成29年10月24日京都地裁判決(自保ジャーナル・第2013号)の関連部分を紹介します。 ******************************************** 主 文 1 被告は、原告に対し、3914万9009円及びうち3180万7802円に対する平成28年1月16日から、うち328万7382円に対する平成20年5月6日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 原告のその余の請求を棄却する。 3 訴訟費用はこれを4分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。 4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。 事実及び理由 第一 請求 被告は、原告に対し、1億3109万2770円及びこれに対する平成20年5月6日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 第二 事案の概要 本件は、原告が、普通自動二輪車を運転して信号機による交通整理の行われている交差点を直進しようとした際、同交差点を対向車線から右折進行してきた被告運転の普通乗用自動車と側面衝突した交通事故につき、被告に対し、民法709条に基づき、損害賠償金1億3109万2770円及びこれに対する不法行為の日(事故日)である平成20年5月6日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。 (中略) 第三 争点に対する判断 (中略) エ まとめ 原告の後遺障害の程度については、自賠責の認定(前記前提事実(4)オ)のとおり、脊柱の運動障害(8級2号)と14級9号の非器質性精神障害の併合8級相当と認められ、その後遺障害については、これを診断した原告主治医の後遺障害診断書のとおり、脊柱の運動障害については平成23年2月9日(本件診断書1)、非器質性精神障害については同年1月27日(本件診断書3)に症状が固定したものと認められる。また、耳の症状については、非器質性精神障害の一部として、同年3月2日(本件診断書2)に症状が固定したものと認められる。 (中略) (10) 休業損害 0円 原告が本件事故当時無職であったことは当事者間に争いがない。原告は休業損害を請求するが、休業損害は傷害及び療養のために休業し、または十分に稼働することができなかったことから生じる収入の喪失をいうから、無職者については、原則として、休業損害の発生は肯定できず、本件全証拠によっても、原告に休業損害が発生したとは認められない。無職者においても就労の蓋然性があれば休業損害を肯定する余地はあるものの、稼働実績(前記2(1)ア)に鑑みても、症状固定までの期間中において原告に就労の蓋然性があったと認めることは困難である。 (11) 傷害慰謝料 384万円 原告の傷害の内容・程度、入通院期間を勘案すれば、傷害慰謝料は、384万円と認めるのが相当である。原告の通院期間が相当長期で不定期ではあるものの、原告の傷害が頸椎骨折を含むことや症状固定後も一定の治療を要することなどを踏まえると、前記慰謝料額を相当とする。 (12) 後遺障害逸失利益 2284万2713円 後遺障害による逸失利益は、長期の将来にわたる収入の減少に対するてん補であるから、本件事故当時無職であることなどの事情があっても、永続的に就労の蓋然性がないといえない以上は、逸失利益は肯定しうるものと解される。そこで、前記2(1)アの本件事故以前の職歴・稼働実績に照らし、男子・高卒・全年齢平均賃金458万8900円(平成23年の賃金センサス)の7割に相当する収入が得られる蓋然性があるものと認めるとともに、本件事故による後遺障害の内容・程度(級)を勘案すれば、本件事故と相当因果関係のある逸失利益は、労働能力喪失率45%(併合8級)、喪失期間を32年(症状固定時35歳)として算定するのが相当である。 よって、逸失利益は2284万2713円となる。 (計算式) 458万8900円×0.7×0.45×15.8026【32年間のライプニッツ係数】=2284万2713円 (13) 後遺障害慰謝料 830万円 原告の後遺障害の内容・程度を勘案すれば、後遺障害慰謝料は830万円と認めるのが相当である。 (14) 人身損害の小計((2)ないし(13)) 3888万3275円 (15) 過失相殺後の人身損害額 3305万0784円 前記(14)×(100-15)%=3305万0784円 以上:2,167文字
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