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自営業者の休業損害固定費について判断した地裁判例紹介

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平成31年 4月29日(月):初稿
○事業者(自営業者)の休業損害算定基礎収入は、原則として事故前年の確定申告所得額になりますが、家賃・光熱費・損害保険料・雇用維持のための人件費等いわゆる固定費の支出をどこまで休業損害と認めるかが問題になります。

○交通事故により頭部外傷、外傷性頸部症候群、右腰部、右下腿部打撲傷を負った被害者(年齢不明・女・喫茶店経営)につき、事故による1回目の入院時には喫茶店を休業しなかったが、2回目の入院をきっかけとして191日間喫茶店を休業した場合に、受傷日から症状固定日までの期間のうち、入院期間である156日間については完全に休業を要し、1回目及び2回目の入院の直前の期間(合計18日間)は平均して50パーセントの労働能力が低下した状態であり、最終的な退院後、症状固定日までの222日間については平均して20パーセントの労働能力が低下した状態であったとして休業損害が算定された平成11年11月9日大阪地裁判決(交通民集32巻6号1792頁)の必要部分を紹介します。

○この判決では、固定費として店舗家賃、駐車場賃料、光熱費、西日本KSD会費、自動車保険料、火災保険料、自動車税、個人事業税が損害と認められましたが、携帯電話料金については、喫茶店の営業の維持・存続のために必要やむをえないものとは認められず、損害と認定されませんでした。

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主  文
一 被告らは、原告に対し、連帯して金635万3147円及びこれに対する平成8年12月1日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 原告のその余の請求をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、これを3分し、その2を原告の負担とし、その余を被告らの連帯負担とする。
四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。

事  実
第一 当事者の求めた裁判
一 請求の趣旨

1 被告らは、原告に対し、連帯して金1870万5346円及びこれに対する平成8年12月1日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は被告らの負担とする。
3 仮執行宣言

二 請求の趣旨に対する答弁
1 原告の請求を棄却する。
2 訴訟費用は原告の負担とする。

第二 当事者の主張
一 請求原因

1 事故の発生(以下「本件事故」という。)
(一) 日時 平成8年12月1日午後12時57分ころ
(二) 場所 大阪府堺市向陵東町二丁六番20号先の交差点内路上
(三) 加害車 普通乗用自動車(大阪79ね8827)(以下「被告車両」という。)
 右運転者 被告Y1
 右所有者 被告Y2
(四) 被害車 普通貨物自動車(和泉○○や○○○○)(以下「原告車両」という。)
 右運転者 原告
(五) 事故態様 原告が、原告車両を運転し交通整理の行われていない交差点(以下「本件交差点」という。)を時速5キロメートルから10キロメートルで東から西に向けて直進しようとした際、前方不注視のまま同交差点を北から南に向けて時速約40キロメートルで進行してきた被告車両が、一時停止の標識の手前で一時停止することなく、原告車両に衝突した。

2 責任原因

         (中略)

理  由
一 請求原因1(事故の発生)、2(責任原因)、抗弁1(過失相殺)について
1 請求原因1(事故の発生)のうち、(一)ないし(四)の事実は当事者間に争いはない。
2 前記争いのない事実、証拠(甲1、2、12、191ないし12、30、乙二ないし五、原告本人、被告裕子本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

         (中略)

三 損害額について
1 原告の受傷、治療経過、後遺障害について


         (中略)

(五) 休業損害 金472万3659円
(1) 固定費以外の損害について

 証拠(甲10、原告本人)によれば、〈1〉原告は、本件事故当時の平成8年度に599万3828円の年収を得ていたこと、〈2〉原告の具体的な労働内容は、事務作業にとどまらず、喫茶店内の立ち仕事が主であったこと、〈3〉原告は、一回目の入院時には原告喫茶店を休業しなかったが、二回目の入院をきっかけとして平成9年1月29日から同年8月7日まで191日間、原告喫茶店を休業したことが認められるが、前記三1で認定した原告の傷害の程度、治療経過及び前記三2(一)で認定した原告の入通院状況にかんがみると、受傷日である平成8年12月1日から症状固定日である同10年1月8日までの期間のうち、入院期間である合計156日間については完全に休業を要し、平成8年12月1日から同月8日までの8日間及び平成9年1月12日から同月29日までの18日間の合計26日間については平均して50パーセント労働能力が低下した状態であり、同年6月1日から平成10年1月8日(症状固定日)までの222日間については平均して20パーセント労働能力が低下した状態であったと認められる。
 したがって、固定費を除く休業損害は350万4336円(一円未満切り捨て)となる。
 (計算式) 5,993,828×{(156÷365)+(26×0.5)÷365+(222×0.2)÷365}=3,504,336

(2) 固定費について
 証拠(甲14、原告本人)及び弁論の全趣旨によれば、原告がその請求にかかる固定費を支出した事実は認められるが、そのうち、携帯電話料金については、原告喫茶店の営業の維持・存続のために必要やむを得ないものとは認められず、また完全に休業を要する期間は5・2ヶ月とみるのが相当であるから、固定費として認容すべきは、左記のとおりであり、合計金121万9323円(一円未満切り捨て)となる。
   記
〈1〉 店舗家賃 金48万8800円
 駐車場 金47万8400円
 合計 金96万7200円
〈2〉 光熱費のうち、携帯電話料金を除いた額 金6万6372円
〈3〉 西日本KSD会費
 1500円(月額)×5・2=金7800円
〈4〉 自動車保険料
 11万4260円(年額)×5・2÷12=金4万9512円
〈5〉 火災保険料
 4万3400円(年額)×5・2÷12=金1万8806円
〈6〉 自動車税
 8万8500円(年額)×5・2÷12=金3万8350円
〈7〉 個人事業税
 16万4500円(年額)×5・2÷12=金7万1283円
   (3) 休業損害合計 金472万3659円

(六) 後遺障害による逸失利益 金81万8457円
 原告は本件事故により、14級10号(局部に神経症状を残すもの)の後遺障害を残したところ、このため症状固定後3年間にわたり労働能力を五パーセント喪失したと認めるのが相当である。そして、原告の本件事故当時の年収は599万3828円であったから、新ホフマン方式により中間利息を控除すると、後遺障害逸失利益は、金81万8457円(一円未満切り捨て)となる。
 (計算式) 5,993,828×0.05×2.7310=818,457
以上:2,856文字

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