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平成26年 7月26日(土):初稿 |
○「過失割合不明な場合の人身傷害保険金請求金額・順序等関する質問2」を続けます。 裁判外での人身傷害保険金支払実務では、人身傷害保険金から自賠責保険金を控除することが、当然の如く行われていますが、平成21年12月22日東京地裁判決(交民集42巻6号1669頁)では、人身傷害保険金を被害者に支払った保険会社が、自賠責保険金を受領した場合、この自賠責保険は加害者との損益相殺の対象にならないとしています。 ○この問題を「過失割合不明な場合の人身傷害保険金請求金額・順序等関する質問」での事案に当てはめて検討します。 先ずAさんの裁判基準損害額は1500万円、C保険人身傷害保険損害額800万円(既払い額500万円)、自賠責保険金224万円受領済みとして、加害者Bさんの過失割合の程度を分けて考えます。 Bさんの過失割合70%の場合 Bさんの責任は1500万円×0.7=1050万円で受領済み自賠責保険金224万円を差し引くと826万円になります。Aさんは、C保険から人身傷害保険金500万円、自賠責保険224万円の合計724万円受領済みであり、裁判基準損害額1500万円との差額は776万円です。従ってAさんがBさんに対し776万を請求受領して、裁判基準損害額1500万円を確保できます。 Bさんの過失割合50%の場合 Bさんの責任は1500万円×0.5=750万円で受領済み自賠責保険金224万円を差し引くと526万円になります。Aさんは、C保険から人身傷害保険金500万円、自賠責保険224万円の合計724万円受領済みであり、裁判基準損害額1500万円との差額は776万円です。従ってAさんがBさんに対し526万を請求受領しても受領金合計額は1302万円であり、裁判基準損害額1500万円には、いまだ198万円不足します。C保険の人身傷害保険金残金が300万円ありますので、AさんはC保険に裁判基準額不足金198万円を請求受領して、裁判基準損害額1500万円を確保できます。 Bさんの過失割合20%の場合 Bさんの責任は1500万円×0.2=300万円で受領済み自賠責保険金224万円を差し引くと76万円になります。Aさんは、C保険から人身傷害保険金500万円、自賠責保険224万円の合計724万円受領済みであり、裁判基準損害額1500万円との差額は776万円です。従ってAさんがBさんに対し76万を請求受領しても受領金合計額は800万円であり、裁判基準損害額1500万円には、いまだ700万円不足します。C保険の人身傷害保険金残金が300万円ありますので、AさんはC保険に300万円全額を請求受領して合計1100万円を確保できますが、裁判基準損害額1500万円は確保できません。 ○Aさんは自分の過失割合が80%もあった場合ですら、本来、裁判基準損害額1500万円の内300万円しか賠償金を取得できないところ、自賠責保険・人身傷害保険のお陰で1100万円も確保できることになります。なお、自賠責保険金も過失割合減額になる可能性もありますが、実際は、Aさんの場合、過失割合未定で、被害者請求によって後遺障害限度額満額224万円が支払われていました。 ○以上の解釈は、平成24年5月29日最高裁判決での、「代位条項にいう「保険金請求権者の権利を害さない範囲」とは、保険金の支払によって、被害者の裁判基準損害額を確保するためのもの」であり、「人身傷害保険会社は)保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。」との結論を、被害者に最大限有利に解釈した結果の結論です。 ○要するに平成24年5月29日最高裁判決を被害者のための錦の御旗として、兎に角、被害者の過失割合如何に拘わらず、被害者の実損即ち裁判基準損害額、Aさんの場合1500万円確保のために奉仕するのが、人身傷害保険金の趣旨であり、その確保に近づけるために人身傷害保険算定基準額800万円が最大限Aさんに支払われるとの結論です。但し、この結論が、裁判上認められるかどうかは、同様事例についての裁判例が見つからず、やってみないと判りません(^^;)。 なお、この事案ではAさん、Bさん、いずれも相手方が信号を無視したと主張し、その真偽は不明なままです。この場合の過失割合については別コンテンツで説明します。 以上:1,874文字
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