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平成26年 7月24日(木):初稿 |
○交通事故によって自賠責後遺障害等級第12級に認定されたAさんから次のような質問を受けました。事案は次の通りです。 ・Aさんの事故は交差点内での出会い頭衝突事故で、衝突した相手方Bさんとは、お互いに自分が青信号で進行したと主張し、Bさんは自分の過失割合は2割と主張して譲らない。 ・そこでAさんは、自分がかけていたC保険の人身傷害保険から休業補償等の支払を受け、最終的な損害額は治療費を含めて次のような金額になった。 ・裁判基準損害額1500万円、人身傷害保険損害額800万円、自賠責保険金額224万円のところ、C保険から、治療費を含めて500万円を受け取り、更に被害者請求で自賠責保険金224万円を受領した。 ・C保険は、最終的に人身傷害保険金800万円のところ、500万円支払い済みで、且つ、自賠責保険から224万円が支払われたので、人身傷害保険金の残金は76万円しかないと主張している。 ・衝突したBさんは、自分の過失割合は2割だけであり、裁判基準損害額1500万円としてAさんは、既に自賠責保険金を含めて724万円も受領済みであり、Bさんの支払義務は全くないと主張している。 ・Aさんは、自分の過失割合は多くても5割、従ってBさんの過失割合は2割に止まらず、5割はあると思っているが、事故の目撃者もなく、また、Aさん自身は、事故で80日間も入院する大怪我をして、事故後直ちに救急車で病院に搬送されて事故後の実況見分には立ち会わず、事故後の実況見分調書としては、Bさん立会のAさんが赤信号を無視して交差点に進入したと記載されたものしか残っていない。 ・AさんとBさんの衝突事故の目撃者がおらず、どちらが赤信号で進入したかの客観的立証資料がないためか、Aさん、Bさん、いずれも刑事処分・行政処分を受けていない。 ○この事案で、Aさんから、私はC保険が主張する人身傷害保険金残金76万円を受領すれば、あとは、C保険にもBさんにも一切請求は出来ないのでしょうかと質問です。 ○先ず確実に言えることから回答します。 裁判基準損害額1500万円、人身傷害保険金損害額800万円も、現時点ではあくまで仮定の数字で、最終的には訴えを提起して裁判所が決める金額になります。ですから訴えを提起して判決を受けるまでは確定しない金額ですが、数字を上げないと検討できませんので、この数字を前提に考えます。 まずBさんの過失割合が2割の場合は、その責任額は1500万円×0.2=300万円のみですから、既払いの自賠責保険金224万円を控除した76万円しかありません。 問題は、C保険からの既払い人身傷害保険金500万円をBさんの支払分として控除できるかと言う点です。 ○この問題は、「人身傷害補償担保特約最高裁判決紹介-事実関係」から「人傷保険に関する平成24年5月29日最高裁判決紹介」までに紹介した最高裁判決の考え方で検討します。 この平成24年5月29日最高裁判決の人身傷害保険金の趣旨に関する結論は、以下の通りです。 「(人身傷害保険会社は)保険金請求権者に裁判基準損害額に相当する額が確保されるように,上記保険金の額と被害者の加害者に対する過失相殺後の損害賠償請求権の額との合計額が裁判基準損害額を上回る場合に限り,その上回る部分に相当する額の範囲で保険金請求権者の加害者に対する損害賠償請求権を代位取得する。」 ○その理由は、2つあり、人身傷害保険金は ①被害者が被る実損(裁判基準損害額)をその過失の有無,割合にかかわらず填補する趣旨・目的の下で支払われるもの ②代位条項にいう「保険金請求権者の権利を害さない範囲」とは、保険金の支払によって、被害者の裁判基準損害額を確保するためのもの であるということです。 ○ということは、Bさんの支払責任を検討するに当たっては、人身傷害保険金からの既払い金は、Bさんの支払責任金額から控除することは出来ません。従って本件でAさんがC保険から受領した金500万円はBさんの支払責任金額から一切控除できません。また、自賠責保険金224万円の支払も人身傷害保険損害金から控除することも出来ません。 ○結論として、Aさんの実損(裁判基準損害額)が1500万円とすれば、加害者Bさんからの支払金と自賠責保険金からの支払金の合計額が、その実損即ち裁判基準損害額1500万円に不足している分を全て人身損害保険金の算定基準限度額の範囲内で支払わなければならないと言うことになります。過失割合如何にもよりますが、仮に加害者Bさんに約47%の過失割合が認められるとAさんが支払責任ある賠償額は約700万円になります。ここから自賠責保険から金224万円を差し引いた476万円がBさんの支払責任になります。そこでAさんは、Bさんから476万円、自賠責保険から224万円、C保険から800万円(500万円受領済みなので残300万円)を受領することで、合計1500万円の実損(裁判基準損害額)を確保できることになります。 但し、この考えは、あくまで被害者側最大有利解釈での、現時点ので私の思いつきであり、裁判になった場合、最終的にこのようになるとの保障は一切ありません(^^;)。 以上:2,114文字
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