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平成26年 7月25日(金):初稿 |
○「過失割合不明な場合の人身傷害保険金請求金額・順序等関する質問」を続けます。 「但し、この考えは、あくまで被害者側最大有利解釈での、現時点ので私の思いつきであり、裁判になった場合、最終的にこのようになるとの保障は一切ありません(^^;)。」と無責任な記載をしていましたが、余りに無責任を反省して、関連判例を紹介します。 ○原告らに人身傷害保険金を支払ったX損保が被告側の自賠責保険金を受領している事案での原告らの自賠責の損害填補につき、「被告らにとっては、自賠責保険会社からの回収手続が原告側の人身傷害保険会社との調整に代わったものである」とし、従って原告らに対しては「X損保が自賠責保険から受取った金額は損益相殺の対象とならない」と認定した平成21年12月22日東京地裁判決(交民集42巻6号1669頁)の理由記載部分です。 ○結論として、人身傷害保険会社が、自賠責保険からの受領した自賠責保険金は損益相殺の対象にならないとしていますが、「仮に、この自賠責保険からの受取額が原告らの被告らに対する損害賠償請求の損益相殺の対象になるとすると、原告らは、X(※注;人身傷害保険会社)に対して、損益相殺された金額(※注;自賠責保険金受領額)を請求しなければならないことになる。」、「人身傷害保険会社が自賠責保険の請求をすることができるとされていても、人身傷害保険会社が損害賠償の代位取得をできる範囲が被保険者の権利行使を害しない残額に限られることに変わりはなく」と言っています。この判例の考え方からは、被害者が先に自賠責保険会社から受領した場合でも、人身傷害保険会社は、この自賠責保険金受領金を控除することが出来ないようにも読めます。更に、同種判例がないかどうか、検討を続けます。 ************************************************ 第3 争点に対する判断 1 争点(1)(事故態様、過失相殺)について (中略) 2 争点(2)(人身傷害保険会社の自賠責からの回収と損益相殺)について 第二の1(4)のとおり、原告太郎が契約していた人身傷害保険の保険会社であるXは、原告らに人身傷害保険金を支払い、その後、被告側の自賠責保険会社であるWから自賠責保険金を受け取っている。 Xは、約款上、被保険者又は保険金請求権者の権利を害さない範囲内で被保険者又は保険金請求権者の損害賠償請求権を代位取得することができるとされているから、人身傷害保険金として支払われた金額のうち、損害賠償金の填補の対象となるのは、被保険者である原告太郎の過失に対応する損害額(過失相殺により減額される金額)を上回る部分に限られると解すべきである。原告らの損害のうち、原告太郎の過失に対応する損害額及び上記の「上回る部分」を控除した残額は、Xが自賠責保険から回収したか否かにかかわらず、全額が原告らに支払われるべきである。 原告らは、人身傷害保険金のほかに自賠責保険金を受け取ったわけではないから、 仮に、この自賠責保険からの受取額が原告らの被告らに対する損害賠償請求の損益相殺の対象になるとすると、原告らは、Xに対して、損益相殺された金額を請求しなければならないことになる。原告らの事情でなく、Xの事情(自賠責保険から回収したかどうか)によって、原告らが不利益を受けるのは相当でない。 他方、損益相殺の対象とならないとすると、被告らは、自賠責保険から回収ができなくなった部分について、Xとの間で調整をしなければならないことになるが、被告らにとっては、自賠責保険会社からの回収手続が原告側の人身傷害保険会社との調整に代わったものである ということができる。 被告らは、自賠責保険への請求は被害者の損害賠償請求の代位取得を前提としてし かできないから、人身傷害保険会社が自賠責保険から支払を受けた場合は、「人身傷害保険会社は被保険者の権利行使を害しない残額についてのみ損害賠償請求権を代位取得できる」という理由が妥当せず、自賠責保険金から支払がされた金額は控除されるべきであると主張する。 しかし、人身傷害保険会社が自賠責保険の請求をすることができるとされていても、人身傷害保険会社が損害賠償の代位取得をできる範囲が被保険者の権利行使を害しない残額に限られることに変わりはなく、被告らの主張は採用できない。被告らは、自賠責保険は賠償義務額を填補するためにかけている保険であるから支払額が賠償義務額から控除されないことはあり得ないとも主張するが、原告らは自賠責保険金の支払を受けているとはいえないから、当然に控除されることにはならない。 以上の検討によれば、Xが自賠責保険から受け取った金額は損益相殺の対象とならないと解すべきである。 以上:1,960文字
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