平成22年 4月22日(木):初稿 |
○「訴訟での過失責任否定・5割過失相殺主張が慰謝料増額事由」で、平成21年9月11日名古屋地裁(判例時報2065号、101頁)での「上記のような本件訴訟における被告の主張は、正当な権利主張を逸脱したものというべきであり、正当な権利主張を逸脱したものというべきであり、慰謝料の増額事由に当たる」との判決を紹介していました。 ○これに対し、 「対人付保の場合、弁護士としては加害者側を説得して主張を展開すべき義務は観念できるものの、あくまで加害者本人が『自分の過失は50%以下』との主張に固執する場合、それを無視した数字を主張することは、懲戒申立の契機になりかねません。寺西裁判官の説示は、その点への斟酌が十分なされたものとは思われませんので、理解に苦しむ部分があります。ぜひ加害者側には控訴してほしいものですが、慰謝料の金額としては控訴に値するものとまでは言いがたいので多分控訴なしで確定したおそれがあり残念です。」 とのご感想を頂きました。 ○最近、被害者側交通事故訴訟事件が増えて、保険会社側を相手にすることが多いのですが、特に保険会社ベッタリの顧問医の意見書に腹が立つことが多く、上記判例の趣旨に従って、余りに極端な主張に対して「正当な権利主張を逸脱したものというべきであり、正当な権利主張を逸脱したもの」として慰謝料増額事由になると主張してみようかと思ったりしています。 ○上記ご感想を投稿された方は、おそらくは加害者側の代理人をされることの多い弁護士さんかと思います。実際、加害者本人が、自分の過失は小さい,相手の過失が大きいと固執される例は,実務では多くあります。保険会社としては、任意保険契約を締結して頂いたお客様で、その依頼を断る訳にはいかず、そのお客様の意向に従った訴訟活動をしなければなりません。それを「不当主張」として慰謝料増額の理由にされたのではたまったものではないとの気持ちは判ります。 ○ただ、この名古屋地裁判決は、弁護士の訴訟活動に対する慰謝料増額事由ではなく、そのような主張をした被告本人即ち当事者本人に対する慰謝料増額であり代理人に対するものではりません。しかし自分はあくまで代理人に過ぎないと割り切れないところもあるでしょう。法律専門家がそのような「不当主張」を押さえることが出来なかったかと間接的に批判されていることにもなるからです。 ○保険会社を相手とする交通事故損害賠償請求事件を多く取り扱っている私の感想としては、支払保険金を少なくするため、当事者本人ではなく保険会社自身が、被害者の過失が大きく加害者の過失は小さい、被害者の症状は軽いと言った主張をしており、むしろ当事者本人は事故を起こした本人として責任を感じて出来る限り多くの保険金を支払って早く事件を解決して欲しいと願っている例の方が多いのではと感じています。 ○余りにひどい訴訟を提起し或いは訴訟活動をしたことを理由として代理人としての弁護士自身が損害賠償請求を受ける例がないものかと探していると次のような記事が見つかりました。しかし、代理人ではなく本人としての訴え提起のようです。 ***************************************** (2010年4月14日22時05分 読売新聞) 弁護士が違法な提訴、賠償支払い命じる判決 東京弁護士会のA弁護士(67)から違法に提訴され精神的苦痛を受けたとして、A弁護士の事務所があるマンション管理会社の役員の男性が、慰謝料など40万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が14日、東京地裁であった。 宮島文邦裁判官は、「法律的根拠を欠いていることを知りながら提訴したことは明らかだ」と述べ、請求全額の支払いを命じた。 A弁護士は昨年3月、男性から虚偽の事実に基づく懲戒請求をされたとして、損害賠償を求め提訴したが、男性から反訴され、請求を放棄。今年2月には、同じマンションを巡るトラブルに絡み、拳銃のようなものを構えている自分の写真を管理会社に渡したなどとして東京弁護士会から業務停止1か月の懲戒処分を受けている。同様の写真が印刷された名刺は、同地裁にも証拠として提出していた。 以上:1,704文字
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