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平成18年 9月12日(火):初稿 |
○被害者の任意保険会社に対する直接請求根拠たる約款6条②(3)の「損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で約束した場合」は(1)、(2)の判決の確定や書面による示談成立を待つまでもなく、任意保険会社に直接請求が出来るはずですと記載しました。自家用自動車総合保険約款全部を十分に精査したわけではなく私の解釈が正しいとの確信はありませんが、以下の通り私の考えを述べます。 ○この約款6条②(3)意味は、損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で約束した場合には、任意保険会社が、交通事故によって被保険者が負担した被害者に対する損害賠償債務を少なくとも重畳的に債務引受したものと理解できます。 ○また判決確定や示談成立を待つまでもなく被害者が任意保険会社に対する直接請求が出来るとした方が被害者の直接請求を認めた趣旨、特に加害者が煩わしい損害賠償交渉の当事者にならずに済ませることまた任意保険会社が速やかに債務を負担し自己の債務として被害者と示談交渉し或いは訴えの被告となるとして弁護士法72条違反にならないようにする目的に沿うものです。 ○私は加害者に任意保険会社がついていた場合でも被告を加害者として訴えを提起するこれまでのやり方に疑問を感じてきました。被告を加害者としても訴えた場合でも、その実態は保険会社の顧問弁護士団が加害者のためではなく、被害者の代理人と称して実質は保険契約者(通常被保険者と同じ)との保険契約に基づく保険金支払額を出来る限り少なくすることのみを目的として保険会社のための訴訟活動を行っているからです。 ○保険契約に基づき保険会社が加害者たる被保険者のために保険金を支払う立場になった場合、厳格に言えば被保険者と保険会社は利益相反関係に立ったと言うべきです。何故なら保険会社は加害者(被保険者)のために金員を支払うべき立場になりこれは加害者本人への支払義務と同視できるもので加害者が受け取る立場、保険会社が支払う立場で明らかに利益相反です。 ○多くの心ある加害者は自分の過失責任によって被害者に損害を与えたのですから、被害者に対し出来るだけ多くの損害賠償金を保険金として支払って貰いたいと希望しているはずで、加害者は保険会社が出来るだけ多くの保険金を支払うことを期待するところ、これに対し保険会社は出来るだけ支払を少なくしたいと希望しているのであり、この意味では両者は明らかに利益相反します。 ○従って被害者側に立った弁護士は加害者側任意保険会社に損害倍請求を行う場合は、原則として約款6条②(3)に基づき「被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で約束し」訴えを提起する場合も被告は任意保険会社だけに絞って加害者自身は被告にしない方が戦略的にも有効ではないかと考えております。 注!残念ながらこの考えは、「嗚呼無情!最高裁も約款3号に基づく直接請求を認めず」記載の通り、「保険会社による保険金の給付は、これに先だって、加害者(被保険者)が負担する損害賠償の額が確定していることが論理上前提となる。」との平成26年3月28日仙台高裁判決が確定して、否定されてしまいました。これ以降、私は、加害者本人も被告に加えて訴えを提起しています。 以上:1,372文字
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