平成18年 1月11日(水):初稿 |
○平成18年1月10日は午後1時から4時まで日弁連交通事故相談センターの電話相談でした。これは原則として毎月10日に電話で担当弁護士2名が無料で交通事故に関する相談に応ずるものです。これまで数回担当したことがありますが、何れも1,2件の相談しかなかったところ、昨日は、6件の電話相談があり、2人の弁護士で3件ずつ担当しました。 ○私担当の案件はいずれも追突等での物損事故に関する相談でした。そこで今日は物損事故で特に多い相談について私の備忘録として説明します。物損とは、人損即ち人身傷害についての損害と相対するもので、人ではなく物の滅失・毀損による損害であり、典型的には自動車が壊れた場合の損害です。 ○交通事故で自動車が壊れた場合、多くの方は修理では到底納得できない、新しい車に代えて欲しいと希望されます。しかし、自動車が壊れた場合の損害賠償額の原則は修理費相当金額です。修理費が事故に遭った自動車の時価額を上回る場合にのみ全損として、その自動車の事故時における時価相当額とその自動車の事故後の処分額との差額が損害賠償額となります。 具体的には事故自動車の時価相当額が100万円で事故自動車として5万円で処分出来た場合、その差額95万円が損害賠償額になります。 ○問題は時価相当額の具体的な算定方法です。時価相当額とはその自動車を下取りに出すときの査定額ではなく、その自動車と同等の価値を持った自動車を再調達する価額です。換言すれば同レベルの自動車を買い換えるためにかかる費用一切が損害になります。 ○買い換えるために必要な費用とは、買い換えた自動車自体の価額の外に登録費用、車庫証明手数料、納車費用、事故自動車を廃車した場合は廃車費用、更に自動車取得税、未経過期間の重量税・車検整備費用、新車購入の場合は、車検登録費用、車検登録手続代行費用等も認められる場合もあります。 ○問題になるのは被害自動車の時価額の算定方法で、①裁判上の鑑定、②オートガイド自動車価格月報(レッドブック)・中古車価格ガイドブック(イエローブック)、③日本自動車査定協会の査定、④税法上の減価償却等の方法がありますが、これ決定版というのは最終的には①裁判上の鑑定です。しかしこれは裁判になって初めて活用できるものであり、実務では②~④で事故に有利なものを使用する例が多いようです。 ○良く問題になるのは新車登録時から10年以上経過して査定価額が殆どゼロに近い場合です。査定価額が殆どゼロとしてもその自動車の所有者はその運行によって利益を得ていたわけですから、損害がゼロに近いとは言えません。この場合は使用価値相当額をもって事故当時の自動車価格と評価します。その自動車の維持経費額、未経過車検期間等を考慮して決定しますので査定価額がゼロだからと言って諦める必要はありません。 ○自動車全損事故の場合の判例は結構ありますので、争い金額が小さくても保険会社の言いなりにはならず、専門家の相談を受けることをお薦めします。 以上:1,230文字
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