仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 事務所 > 大山滋郎弁護士ニュースレター2 >    

2016年07月01日発行第176号”6人の怒れる裁判員(1)”

平成28年 7月 2日(土):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成28年7月1日発行第176号「6人の怒れる裁判員(1)」をお届けします。

○繰り返し記載してきましたが、私が刑事事件を避け、平成21年から引退した理由は、難聴の進行で接見室でのコミュニケーションを取りづらくなってきたこともありますが、より根本的な理由は、日本の刑罰は甘すぎるという私の根源的感覚でした。えーっ、これだけひどいことをして、こんな刑罰で済むのかと、感じることが良くありました。弁護人になると、その軽い刑罰をさらに軽くするよう懸命に努めなければなりません。

○私自身は、これはひどい、数年刑務所に入って、シッカリ罪を償うべきと思っても、「何卒、今回に限り、執行猶予のご判決を賜りたくお願い申し上げます。」なんてやらなければなりません。被告人の弁護人となった以上、軽い刑罰では、被告人が世の中を甘く見るようになって却って本人のためにはならない、なんて考えてはいけないのです。この弁護人の職責・立場が、ちと苦しいとの思いが強くなったのが、私の刑事事件引退の最大理由でした。

○私の刑事事件引退前最後の国選刑事事件は、全く想定外の裁判員裁判予行演習事件でした。「初めての公判整理手続事件-調書原則却下に面食らう」以下にその時の感想を詳しく記載していますが、予行演習とは言え、裁判員対象事件とは、なんと疲れるものだと、痛感しました。

○裁判員裁判は私の刑事事件引退後に始まり、実際の裁判員事件を担当したことはありませんが、裁判員裁判は「刑罰が1.5倍は重くなった」、「以前は執行猶予がついて、刑務所に行かないで済んだ事件でも、裁判員たちは刑務所に入れちゃう」とのこと、一応法律専門家である、私の感覚は、裁判員の一般人感覚と比較し、異常ではなかったことに安堵しています(^^)。

*******************************************
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

6人の怒れる裁判員(1)


「12人の怒れる男」は、60年ほど前の米国映画です。アメリカの陪審裁判を扱った映画で、12人の陪審員達が、1つの部屋の中で話し合うだけの内容です。しかし、今でも多くの人に見られています。アメリカでは、一般市民から選ばれた12人の陪審員が、裁判で大きな役割を果たします。陪審員が無罪と言ったら、その事件は無罪となるのです。

この映画では、悪名高い不良少年が、自分の父親を殺したということで、裁判になります。多くの証拠(殺人が起こる前に不良少年が、父親に向かって「殺してやる!」と叫んでいたという多数の証言等)から、少年の有罪は間違いないだろうという状況です。多くの陪審員は、こんなこと早く終わらせて、ナイターを見に行きたいなんて思っているんです。確かにその気持ちも、分かります。。。

そんな中、名優ヘンリー・フォンダ演じる陪審員が、「人の一生を左右するのに、そんなに適当に考えてはダメだろう!」と、問題提起をします。安易に「空気」を読まずに、自分が正しいと思うことをしっかりと主張します。(わ、私も見習います!)最初は皆うんざりしていますが、ヘンリー・フォンダの熱意に動かされて、少しずつ、事件を本気に考えようという雰囲気になっていきます。

真剣に考えてみると、不良少年が父親を殺したという決定的な証拠は、隣のアパートから事件を目撃したという、お婆さんの証言しかないことに気が付きます。そのお婆さんの証言自体、よく考えてみれば、かなり曖昧なものだったのです。そんなわけで、陪審員は少年を無罪にします。一人の陪審員の熱意で、無実の少年を救った、アメリカの陪審制の宣伝みたいな、すごい映画なんです!

子供のころにこの映画を見て、私も本当に感動しました。その一方、何かおかしな気がしたのも事実です。この映画では「不良少年」の映像が出るんですが、それが子供っぽい、弱弱しい感じの子で、とても不良少年に見えないんです。映画を見た後知りました。アメリカの裁判で無実を主張する被告人の場合、大人びた顔の人に比べて、童顔の人の場合、2倍以上高い確率で無罪となるそうです。そんなこと聞いちゃうと、ヘンリー・フォンダの映画の場合も、被告人の外見が凶悪だったら、みんなそれほど肩入れしなかったかもしれないな、なんて考えてしまいました。。。

ということで、数年前に導入された、日本の裁判員制度の話です。一般市民から選ばれますけれど、アメリカの陪審員と違って、6名です。米国では陪審員だけで評議しますが、日本の裁判員は、3名の裁判官と一緒になって、事件の有罪無罪、有罪の場合にはどの程度の刑罰が妥当かなどを、決めていきます。裁判員制度が導入されたとき、私は軽い気持ちでいました。本当は、「別に何も変わらないだろう。」と思っていただけに、本当にびっくりしました。

例えば、性犯罪です。強姦だとか、強制わいせつをして、女性にケガをさせたような事件ですね。刑事事件を沢山やってきている私の実感では、刑罰が1.5倍は重くなったと感じています。以前は執行猶予がついて、刑務所に行かないで済んだ事件でも、裁判員たちは刑務所に入れちゃうんですね。これって、マスコミなどでも報道されてませんけど、本当の話です。

一方、性犯罪の裁判で、裁判員に感動したこともあります。裁判の中で被告人に、今後性犯罪を起こさないためにどうするかなんて質問します。「運動します」とか、「人の気持ちが分かる人間になります」なんて被告人も答えるわけです。ところが、ある裁判員が質問したんです。「風俗に行こうとは思わないんですか?」えー、そこを聞きますか?プロの法曹は、思っていても、遠慮して中々聞けません。「裁判員恐るべし!」次回に続きます。

*******************************************

◇ 弁護士より一言
くだらないニュースレターですが、月2回書くのに、無い知恵絞って、本当に苦しんでいます。そんな私を見て、中学3年生の娘が言いました。「何が大変なの?パパのニュースレターなんて、書くの簡単でしょう。」「何でもいいから適当に書いて、その中に『ううう。。。』『あ、あほか!』と入れさえすれば、パパのニュースレターになるじゃん!」あ、あほか!
実の娘に、こんなこと言われるなんて。ううう。。。
以上:2,635文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック
※大変恐縮ながら具体的事件のメール相談は実施しておりません。

 


旧TOPホーム > 事務所 > 大山滋郎弁護士ニュースレター2 > 2016年07月01日発行第176号”6人の怒れる裁判員(1)”