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パワハラ行為一部に消滅時効を認めた地裁判決紹介1

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令和 3年12月 6日(月):初稿
○2年ぶりに職場における被告側パワハラ事件を受任しました。私の場合、受任するのは原則として被告側です。原告側からの相談は、たまにありますが、原則としてパワハラ事件の被告側権威と言われる弁護士に紹介し、自分では受任しません。私の取扱事件で最も多いのは原告側交通事故訴訟事件ですが、訴訟では取扱件数や経験がモノをいうので、経験の多い弁護士に依頼するのが一番です。

○パワハラの定義については、「職場におけるパワーハラスメントの定義についての基礎の基礎覚書1」、「同2」にまとめており、復習しているところですが、パワハラ事件での消滅時効が論点の一つとなる事件で関連判例を探したところ平成30年3月29日東京地裁判決(労判1184号5頁)が見つかりましたので、消滅時効部分を紹介します。

○事案は、被告協会に職員として雇用されたが懲戒解雇された(本件解雇)原告が、同協会の職員、理事であった被告Y1及び被告Y2(被告Y1ら)は原告に人格を否定する発言や退職を強要する発言等のパワー・ハラスメントに当たる行為を繰り返すなどし、また、被告協会は原告に違法な本件解雇をしたと主張して、被告Y1らに対しては不法行為に基づき、被告協会に対しては債務不履行若しくは不法行為又は使用者責任に基づき、一人1000万円の損害賠償を求めたものです。

○判決は、原告主張に係る各損害賠償請求権の一部につき時効消滅を認めましたが、社会通念上許される限度を超える侮辱行為であり、原告の人格的利益を侵害する被告Y1らの各行為を認定して、その各不法行為責任を認め、且つ、被告協会の使用者責任を認めた上で、原告の被告らに対する各慰謝料請求権を認定したほか、本件解雇自体により、原告が本件解雇後の賃金の支払を受けるほかになお慰謝を要する精神的苦痛を被ったとは認められないと判断して、個人に対し40万円、協会に対し50万円の支払義務を認めました。

○1000万円の請求に対し40万円の認定では、原告側が不満で控訴したと思われますが、控訴審結果は不明です。

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主   文
1 平成27年(ワ)第32298号被告Y1は,平成27年(ワ)第32298号原告に対し,40万円及びこれに対する平成27年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 平成27年(ワ)第32298号被告Y2は,平成27年(ワ)第32298号原告に対し,40万円及びこれに対する平成27年11月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 平成28年(ワ)第10245号被告は,平成28年(ワ)第10245号原告に対し,50万円及びこれに対する平成28年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
4 平成27年(ワ)第32298号・平成28年(ワ)第10245号原告のその余の請求をいずれも棄却する。
5 訴訟費用は,これを22分し,その21を平成27年(ワ)第32298号・平成28年(ワ)第10245号原告の負担とし,その余を平成27年(ワ)第32298号被告ら及び平成28年(ワ)第10245号被告の負担とする。
6 この判決は,第1項ないし第3項に限り,仮に執行することができる。
 
事実及び理由
第1 請

1 平成27年(ワ)第32298号被告Y1は,平成27年(ワ)第32298号原告に対し,1000万円及びこれに対する平成27年5月17日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 平成27年(ワ)第32298号被告Y2は,平成27年(ワ)第32298号原告に対し,1000万円及びこれに対する平成27年11月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 平成28年(ワ)第10245号被告は,平成28年(ワ)第10245号原告に対し,1100万円及びこれに対する平成28年4月23日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,平成28年(ワ)第10245号被告(以下「被告協会」という。)に職員として雇用された平成27年(ワ)第32298号・平成28年(ワ)第10245号原告(以下「原告」という。)が,① 被告協会の職員,理事であった平成27年(ワ)第32298号被告ら(以下,それぞれ「被告Y1」,「被告Y2」といい,併せて「被告Y1ら」という。)が原告に人格を否定する発言や退職を強要する発言等のパワー・ハラスメントに当たる行為を繰り返したなどとして,被告Y1らに対しては不法行為に基づき,被告協会に対しては職場環境配慮義務違反による雇用契約上の債務不履行若しくは不法行為又は使用者責任に基づき,それぞれ,損害賠償及びこれに対する請求の日(被告Y2及び同協会に対しては訴状送達の日)の翌日からの遅延損害金の支払を求めるとともに,② 被告協会が原告に違法な懲戒解雇をしたとして,被告協会に対して不法行為に基づく損害賠償及びこれに対する同日からの遅延損害金の支払を求める事案である。
1 争いのない事実等

         (中略)

2 争点
(1) 被告Y1らの発言等による不法行為等


         (中略)

(4) 消滅時効
(被告Y1らの主張)
 原告が主張する平成17年3月から平成18年3月までの行為による不法行為に基づく損害賠償請求権については原告が損害及び加害者を知った上記行為の各時点から3年が経過し,消滅時効が完成した。

(被告協会の主張)
 原告が主張する平成17年3月から平成18年3月までの行為による不法行為及び使用者責任に基づく損害賠償請求権については原告が損害及び加害者を知った上記行為の各時点から3年が経過し,上記行為による債務不履行に基づく損害賠償請求権については上記各時点から10年が経過し,いずれも消滅時効が完成した。

(原告の主張)
 争う。
 被告Y1らの発言等のパワー・ハラスメントに当たる行為は,平成17年から継続して行われた一連の行為であるから,消滅時効は完成していない。

第3 争点に対する判断
1 争点(4)(消滅時効)について

 原告が主張する平成17年3月から平成18年3月までの行為による被告らの不法行為及び被告協会の使用者責任に基づく損害賠償請求権については原告が損害及び加害者を知った上記行為の各時点から3年が経過し,上記行為による被告協会の債務不履行に基づく損害賠償請求権については上記各時点から10年が経過し,いずれも消滅時効が完成したものというべきである。

 仮に,被告Y1らの発言等のパワー・ハラスメントに当たる行為が平成17年から継続して行われた一連の行為であったとしても,その場合に原告が被る精神的苦痛を不可分一体のものとして把握しなければならないものではなく,原告が被告らに損害賠償を求めることが妨げられるものではないから,上記結論が左右されることはない。

2 争点(1)(被告Y1らの発言等による不法行為等。ただし,平成17年3月から平成18年3月までの行為によるものを除く。)について

(後略)


以上:2,915文字

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