平成30年11月 7日(水):初稿 |
○「民法第235条”目隠し”設置要求が一部認められた判決紹介1・2」の続きでそのまとめと説明です。 ○本件は、被告がその所有する土地上に三階建のアパート(被告建物)を建築したところ、この土地に隣接する土地上にそれぞれ居宅(A建物及びB建物)を所有するA及びBが原告となり、民法235条又は建築前の合意に基づいて、被告に対し、原告らの居宅に面するアパートの窓全部及び2、3階のベランダの手すり部分に目隠しを設置するよう求めた事案でした。 ○建物の各窓及びベランダが、A所有土地との境界線から1メートル未満の位置にあることは争いがなく、被告は、本件の各窓が、曇り硝子や押し開き式の小窓であるため、「他人の宅地を観望すべき窓」にはあたらないと主張し、さらに原告らの所有建物の窓も被告所有の土地との境界線から1メートル未満の位置に設置されていること等から、原告らの請求が権利濫用であるなどと主張して争いました。 ○本判決は、被告建物とA建物及びB建物との位置関係、本件各窓及びベランダの構造・寸法、右窓及びベランダからA所有土地の方向を向いた際の観望状況等を認定したうえ、浴室及び便所に設置された押し開き式小窓(縦約50センチメートル、横約40センチメートル)及び三階ベランダについては、「他人の宅地を観望すべき窓ないし縁側」にあたらないとしましたが、他の引戸窓(縦約100センチメートル、横約90センチメートル)及び二階ベランダについては、これに該当するとしました。 ○これらの各窓からの原告ら建物の観望状況に加えて、原告ら建物の窓自体も境界線から一メートル以内の位置にあること、被告の側でも窓を曇り硝子にするなどの配慮を示していること等の事情を考慮し、Aとの関係では、三階の窓及び原告ら建物の壁に面している窓等一部の窓について、Bとの関係では、全部の窓について、権利濫用として目隠設置請求を否定し、A建物の脱衣所及び居室に面した被告建物1、2階のダイニングキッチンの窓並びに二階ベランダの袖部分についてのみ、Aからの目隠し設置請求を認容しました。 ○被告は、民法235条と異なる慣習の存在を主張するほか、建築基準法65条によって民法235条の規定が排除される旨の主張をして争ったが、本判決では、いずれの主張も排斥されました。 ○民法第235条に基づく目隠し設置要求事案に関する先例としては、以下の判例があります。 ①ビルの3、4階の窓について目隠設置請求を認めるも、5階については観望すべき窓にあたらないとしてこれを否定した大阪地判昭56.2.4、 ②曇り硝子のはめ殺し窓について観望すべき窓にあたらないとした東京地判昭56.12.15 ③権利濫用として一部の窓の目隠設置請求を否定した名古屋地判昭54.10.15、横浜地判昭57.4.22、 ④後から境界により接近して建物を建築した者からの目隠設置請求を排斥した東京地判昭60.10.30 ○民法235条と異なる慣習の存在が主張されたものとしては、 ①京都市内の高層ビルに関する京都地判昭42.12.5、 ②東京都のマンションに関する東京高判昭60.3.26 がありますが、いずれの主張も排斥されています。 ○ベランダが民法235条の縁側に含まれるか否かについては、名古屋高判昭56.6.16等、これを肯定する裁判例が支配的であり、本判決も、ベランダが同条にいう縁側に含まれることを当然の前提として判断しています。 以上:1,407文字
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