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退職後元従業員の競業避止義務否定具体例1

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平成22年 4月24日(土):初稿
「競業避止義務ー従業員の場合」で、「労働契約において或いは退職時に一定期間競業避止義務を負わせる内容の特約の効力も、内容に合理性があれば有効とされ」、合理性の基準は「制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる職種の範囲、代償の有無等について、会社の利益(企業秘密の保護)、従業員の不利益(転職、再就職の不自由)及び社会的利害(独占集中のおそれ、それに伴う一般消費者の利害)の三つの視点に立って慎重に検討することを要する」との判例を紹介していました。

○今般、前勤務会社との当初雇用契約で3年間の競業避止義務を負わされた元従業員が、退職後同業業種を創業したところ、前勤務会社から競業避止義務違反を理由に中止を勧告されたとの相談を受け、具体的判例を調べてみました。退職後の一定期間競業避止義務を課す合意の有効性基準である「合理性」は相当厳しく解釈されており、多くの事例で退職後の一定期間競業避止義務を課す合意を無効としていました。以下、無効例です。

平成21年11月9日東京地裁(平20(ワ)8488号)
元従業員である被告が退職直後に競業他社に就職したことは退職金不支給事由に該当すると主張する原告が、支払済みの退職金につき不当利得に基づく返還請求をした事案について、原告にとって競業禁止等条項によって守っている営業機密は要保護性が低いことや、禁止の範囲が広汎に及ぶのに対し、代償措置もないことなどを前提とすると、競業禁止等条項は従業員の職業選択の自由に対する過度の制約を課すもので公序良俗に反し無効であるとして、請求を棄却

平成20年12月16日東京地裁(事件番号 平20(ワ)8703号)
イベントの舞台照明・音響装置等の制作を業とする原告が、原告の従業員であった被告に対し、被告は退職時に差し出した誓約書ないしは就業規則に基づき競業避止義務を負うところ、被告はかかる義務に違反したとして、退職金の返還等を求めた事案において、原告の就業規則の規定が、競業避止義務の範囲を退職後2年間に限ったことは、職業選択の自由の制約を限定したものとして評価できるが、一般従業員に対して、代償措置等なしに一律に競業避止義務が課せられることを考えると、これのみでその規定を有効と解することはできず、まして、本件誓約書は今後一切照明の業務から手を引くという内容であり、そのまま効力が認められるようなものではないのであり、被告は、本件誓約書及び就業規則によって競業避止義務を負うことはないなどとして、原告の請求を棄却

平成20年3月28日東京地裁(事件番号 平19(ワ)15186号)
被告会社を退職した原告の退職金に関する被告の就業規則における退職金不支給条項である退職後一定期間内の競業避止義務違反、転職勧誘の禁止につき、原告の行為は外形的には当該条項に該当するものの、本件退職金の請求権を失わせるほどの背信性なり悪質性はないとして、上記不支給条項の解釈・適用は原告の被告に対する長年の勤続の功労を抹消してしまうような事情の存する場合に限定されるべきであるとした上で退職金請求をほぼ認容

平成19年10月5日福岡地裁(事件番号 平18(ワ)2157号、判タ1269号197頁)
入社時の誓約及び会社の就業規則に規定する退職後の競業避止条項が公序良俗違反と認定

平成18年9月4日東京地裁(事件番号平17(ワ)9263号、労判933号84頁)
在宅介護サービスを行う原告会社の従業員であった被告Aが在職中に被告会社Bを設立して原告と同様の営業をしたことによる原告から被告会社Bへの営業活動の差止及び損害賠償請求につき、原告と被告A間で適用となる就業規則に在職中及び退職後の競業避止義務が規定され、被告Aが原告への就職に当たり差し入れた誓約書にも退職後における競業避止条項があるところ、在職中の競業避止義務を負わせる点は公序良俗に反するとはいえないが、退職後に期間の定めなく広範囲(半径一〇キロメートル以内)で競業避止義務を負わせることは公序良俗に反するとして同社への営業活動の差止請求を棄却

平成16年3月24日宇都宮地裁大田原支部(事件番号平14(ワ)125号)
原告はパソコンスクールの経営等をしている会社であり、被告が在職中に就業規則の一部を変更し、就業規則30条に従業員の退職後の競業避止義務を定めるとともに、従業員が競業避止義務に違反した場合には当該従業員に対し過去6か月分賃金相当額を損害賠償として請求することができる旨を定めたところ、原告の従業員であった被告が退職後前記就業規則に反して近隣の同業他社に就職したとして、原告が、被告に対し、就業規則に基づき被告の退職前6か月分賃金相当額の金員の支払を求めた事案において、被告の退職前に就業規則30条の周知手続が採られたと認めることはできず、少なくとも被告との関係で就業規則30条が法的規範としての拘束力を有するとは認めることができないとして請求を棄却


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