平成19年 7月28日(土):初稿 |
○従業員が行う競業行為として、パソコン販売保守業のA社に属していたB個人が、A社の同業ライバルC社に移りC社のために営業活動を行うことを例として考えます。 ○先ずBがA社に所属している場合は、労働者として使用主A社に対する忠実義務を負い、A社の指揮命令下で労務を提供しA社の職務に専念する義務があり、これはA社にとって不利なことは行わないという義務であり、競業避止義務が重要な一部となります。在職中の職務専念義務は、特に合意をしなくても当然のことです。厳格に言えば在職中は、勤務時間中にC社へ移る準備行為をすることも競業避止義務違反行為になります。 ○会社の営業課長在職中に新会社設立のため他の社員を引き抜きし、懲戒解雇されて退職金が支給されなかったため会社に対し退職金支払を求めた事案で、「会社の職場秩序を乱し、その信用を失墜させ、ひいては会社の企業としての存立すら危うくしかねないものであった、会社に対して著しく背信的なものであり、当時原告が同社の課長という要職にあったことを勘案すると原告が25年近くにわたる勤続の功すらも抹殺してしまうほどの不信行為にあたる」として退職金請求を棄却した例があります(福岡地裁久留米支部昭和56年2月23日)。 ○問題は退職後ですが、退職後のB個人は職業選択の自由がありますので、A社の同業社であるC社に移り、C社のためにA社と同じパソコン保守業の営業行為をしても原則として競業避止義務違反行為にはなりません。 ○就業規則で退職後在職中のみならず退職後も労働者は競業避止義務を負うと定めた場合の効力は、内容が合理的なものである限り有効であるとの判例がありますが、その内容の合理性に関してはケースバイケースのようです。 ○労働契約において或いは退職時に一定期間競業避止義務を負わせる内容の特約の効力も、内容に合理性があれば有効とされています。問題は合理性の基準ですが、「制限の期間、場所的範囲、制限の対象となる職種の範囲、代償の有無等について、会社の利益(企業秘密の保護)、従業員の不利益(転職、再就職の不自由)及び社会的利害(独占集中のおそれ、それに伴う一般消費者の利害)の三つの視点に立って慎重に検討することを要する」との判例がありますが、結局はケースバイケースで検討するしかありません。 以上:953文字
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