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離婚に至らない婚姻破綻に至った不貞行為慰謝料200万円認定地裁判決紹介

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令和 6年 1月12日(金):初稿
○認定不貞行為は平成29年7月・11月の2回でもその結果、婚姻関係が破綻し、平成30年2月に別居し現在に至っているとして、500万円の慰謝料請求に対し、200万円の慰謝料を認定した令和4年4月22日東京地裁判決(LEX/DB)全文を紹介します。

○「離婚慰謝料支払義務を否認し不貞行為慰謝料200万円を認めた地裁判決紹介」で紹介した判例も不貞行為に200万円の慰謝料を認めていますが、こちらの不貞行為は、不貞行為者が妊娠・出産し、且つ、離婚に至っています。それでも3000万円の請求に対し認定額は200万円です。金額は同じですが、裁判官によって不貞行為評価は随分異なると感じます。

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主   文
1 被告は、原告に対し、220万円及びこれに対する平成30年3月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを5分し、その3を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は、原告に対し、550万円及びこれに対する平成28年5月14日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 原告は、被告が、原告の配偶者と不貞行為に及んだと主張して、被告に対し、不法行為に基づき、慰謝料等の損害合計550万円及びこれに対する不法行為の日である平成28年5月14日から支払済みまで民法(平成29年法律第44号による改正前のもの。以下同じ。)所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めている。

2 前提事実(証拠等の掲記のない事実は、当事者間に争いがない。なお,以下においては、証拠について枝番を全て挙げる場合には、枝番の記載を省略する。)
(1)原告は、平成5年8月、C(以下「C」という。)と婚姻し、Cとの間に長男(平成5年○○月生)、長女(平成8年○月生)、二女(平成10年○月生)をもうけた。(甲1)
(2)被告は、平成29年7月及び同年11月、Cと不貞行為に及んだ。
(3)原告は、平成30年3月26日、Cと別居した。 

3 争点及び争点に関する当事者の主張
 本件の争点は、損害額であり、争点に関する当事者の主張は、以下のとおりである。
(原告の主張)
(1)原告は、C及び3人の子らとともに円満な家庭生活を送っていたが、被告の不貞行為により、Cとの別居を余儀なくされ、婚姻関係も破たんした。被告の不貞行為により、原告は、甚大な精神的苦痛を受け、現在まで、睡眠障害、頭痛、胃痛、フラッシュバックなどに苦しんでいる。原告が被った精神的苦痛に対する慰謝料は500万円を下らない。また、本件の弁護士費用相当損害金として50万円が相当である。

(2)被告は、遅くとも平成28年5月14日にCと肉体関係を持った。原告とCとの夫婦関係は円満であったのであり、平成29年7月28日に不貞行為が発覚した後も、夫婦ともに関係修復に努力していた。そのような中、被告は、平成29年11月14日からCの出張に同行し、不貞行為に及んだのであり、被告の行為は極めて悪質である。

(被告の主張)
 被告は、平成29年8月中旬から同年11月中旬までの間及び平成29年12月から平成30年10月までの間は、Cとの不貞関係を解消していた。

 また、慰謝料の算定に当たっては、Cが不貞関係に積極的であったこと、不貞行為当時、原告とCの婚姻関係は円満ではなかったこと、被告は原告に対して謝罪したこと、現在、被告は、Cとの肉体関係を解消していること、原告の子らはいずれも成人していること、原告とCとは離婚していないことを考慮すべきである。

第3 当裁判所の判断
1 前記前提事実に、後掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、以下の事実が認められる。
(1)被告は、平成28年秋頃まで、Cと同じ職場に勤務していたところ、被告とCは、同年5月、沖縄県へ出張した。
 その際、被告は、Cの宿泊先のホテルのCの部屋において、下半身に何も身に着けておらず、上半身の着衣が胸の上まで捲り上げられて胸部を露出してベッドに横たわっている状態となり、Cはこの被告の姿を写真撮影した。(甲14)

(2)被告は、平成29年7月、Cと不貞行為に及んだところ(前提事実(2))、これを認識した原告は、同年8月、Cに対し、不貞行為を知ったことを告げた上、Cとの夫婦関係の再構築に向けて話し合うなどし、Cは、原告に対し、被告との関係を終了させたと報告した。(甲20)

(3)被告は、平成29年8月頃、Cから、原告に不貞行為が発覚したことを聞き、Cとの間で、LINEで、原告との関係では、被告とCとの交際関係は終了したという整理にする旨のメッセージのやり取りをした。(甲12)

(4)被告は、平成29年11月、Cと不貞行為に及んだところ(前提事実(2))、原告は、平成30年2月、平成29年11月の被告とCの不貞行為を認識した。(甲20)

(5)原告とCは、平成30年3月26日、別居し、現在まで別居を継続している。(甲20)

(6)被告は、平成30年11月、Cと不貞行為に及んだ。


(1)上記認定事実によれば、原告は、被告とCの不貞行為を契機にCと別居に至り、その婚姻関係が破たんに至ったというべきである。そして、被告は、不貞行為が原告に発覚し、原告が、Cと被告との不貞関係は終了したと思っていることを認識していた(認定事実(3))にもかかわらず、再度、Cとの不貞行為に及んでいること、その他本件に現れた一切の事情を考慮すると、原告の被った精神的苦痛に対する慰謝料を200万円とするのが相当である。

(2)本件事案の内容等に照らすと,被告の不貞行為と相当因果関係のある弁護士費用相当損害金は20万円とするのが相当である。

(3)原告は、被告の不貞行為は、遅くとも平成28年5月に被告とCが出張した際に開始されたと主張するが、本件において、被告の不貞行為が同月から開始されたか否かにより上記損害額の判断は左右されない。

3 小括
 以上によれば、原告は、被告に対し、不法行為に基づき、220万円及びこれに対する不法行為が終了した日である平成30年3月26日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めることができる(なお、原告は、被告の不貞行為全体に対する損害賠償を請求していると解されるところ、原告とCは、被告の不貞行為が原告に2度目に発覚した後、平成30年3月26日から現在まで別居を継続していること(認定事実(4)、(5))に照らせば、同日にはその婚姻関係が破たんしたと認めるのが相当であり、同日に被告の不法行為が終了したといえるから、原告の損害賠償請求権に対する遅延損害金は、同日から発生する。)。

第4 結論
 よって、原告の請求は、上記の限度で理由があるから、その限度でこれを認容し、その余は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。
東京地方裁判所民事第37部
裁判官 岩田真吾
以上:2,915文字

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