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将来の退職金請求権は財産分与の対象になるか4

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令和 5年 7月 7日(金):初稿
○「将来の退職金請求権は財産分与の対象になるか2」を読んだ方から、東京地裁平成11年9月3日判決(判時1700号79頁、判タ1014号239頁)の「将来退職金を受け取れる蓋然性が高い場合には、将来受給するであろう退職金のうち、夫婦の婚姻期間に対応する分を算出し、これを現在の額に引き直したうえ、清算の対象とすることができると解すべき」との解説について、中間利息を控除するということで間違いないですねとの質問を受けました。

○そこでこの判決の中間利息控除に関連する部分を紹介します。

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主   文
一 原告と被告を離婚する。
         (中略)
六 原告は、被告に対し、金587万9000円を支払え。
         (中略)
九 訴訟費用はこれを2分し、その1を被告の、その余を原告の負担とする

         (中略)

第三 当裁判所の判断

         (中略)

四 将来の退職金の財産分与について
 前記認定のとおり、原告は、現在A株式会社に勤務しているが、平成17年9月29日には定年退職の予定であると認められるところ、被告は、原告が現在勤務中の会社から将来退職の際に取得する退職金についても、清算的財産分与の対象とすべきであると主張する。

 これに対し、原告は、将来の退職金については、近い将来(6か月からせいぜい2年以内)に受領しうる蓋然性が高い場合に、支給を条件として分与の対象とすることができると解すべきで、原告の場合は、退職ははるか先のことで、その間に経済情勢の変化、会社存続の可否、給与体系の変化、経営基盤の変遷といった不確定な事態が起こる可能性も高く、しかも原告の事情による勤務不能ということもありうるので、財産分与の対象とはなりえないと主張するので検討する。

 いわゆる退職金には賃金の後払いとしての性格があることは否定できず、夫が取得する退職金には妻が夫婦としての共同生活を営んでいた際の貢献が反映されているとみるべきであって、退職金自体が清算的財産分与の対象となることは明かというべきである。問題は将来受け取るべき退職金が清算の対象となるか否かであるが、将来退職金を受け取れる蓋然性が高い場合には、将来受給するであろう退職金のうち、夫婦の婚姻期間に対応する分を算出し、これを現在の額に引き直したうえ、清算の対象とすることができると解すべきである。

 これを本件についてみると、原告は昭和58年3月に現在の勤務先に入社し平成17年9月に定年退職予定であるところ、前記認定の事実によっても、右入社当初から別居に至った平成7年5月までは、原告と被告の夫婦としての婚姻生活が継続していたと認めるべきである(なお、原告は既に平成元年ころから家庭内別居の状態にあったかのように述べるが、被告の供述及び弁論の全趣旨によれば、夫婦関係自体は悪化していたとはいえ、別居時までは、被告なりに家庭内における妻としての役割を果していたと認められる。)。

 また、原告は平成11年2月時点で退職した場合でも、すでに699万円の退職金を受け取れるとされているし(乙10、乙11)、原告の供述及び弁論の全趣旨によれば、原告が現在の勤務先の会社に6年後の定年時まで勤務し、退職金の支給を受けるであろう蓋然性は十分に認められる。そうであるとすれば、原告としては、退職時までの勤務期間総数271か月(昭和58年3月から平成17年9月まで)のうちの実質的婚姻期間147か月(昭和58年3月から平成7年5月)に対応する退職金につき、中間利息(法定利率5パーセント)を複利計算で控除して現在の額に引き直し、その5割に相当する額を被告に分与すべきである。

 その額は、次の計算式のとおり、188万円と認められる。
929万円×271か月分の147か月×0.74621540(6年のライプニッツ係数)×0.5(清算割合)=188万円

 なお、原告の主張するとおり、6年後の退職ということを考えると、不確定な要素を全く否定することはできないので、右退職金の現在額の算出に当たっては、現行市中金利からすると極めて高率の年5パーセントの中間利息を複利計算で控除しているし、929万円という退職金の額も原告の今後の昇給分を考慮しておらず、できるだけ控え目な額を算出したものである。
以上:1,807文字

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