令和 5年 7月 6日(木):初稿 |
○「平成12年3月21日最高裁判決」の続きで、その上告審平成12年3月21日最高裁判決(判タ1038号179頁)全文を紹介します。第一審平成8年11月26日東京地裁判決(判タ954号151頁)で、「被告MNTエステート管理組合は原告に対し、金12万7200円及びこれに対する平成8年3月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。」と命じられ、控訴審でも維持されたMNT管理組合は、これに承服できないとして上告していました。 ○最高裁判決も、マンションの専有部分である甲室の床下コンクリートスラブと階下にある乙室の天井板との間の空間に配された排水管の枝管を通じて甲室の汚水が本管に流される構造となっている場合において、甲室から右枝管の点検、修理を行うことは不可能であり、乙室からその天井裏に入ってこれを実施するほか方法はないなど判示の事実関係の下においては、右枝管は、建物の区分所有等に関する法律2条4項にいう「専有部分に属しない建物の付属物」であり、区分所有者全員の共有部分に当たるとして上告を棄却しました。 ○関係する区分所有法は以下の通りです。 第2条(定義) この法律において「区分所有権」とは、前条に規定する建物の部分(第4条第2項の規定により共用部分とされたものを除く。)を目的とする所有権をいう。 2 この法律において「区分所有者」とは、区分所有権を有する者をいう。 3 この法律において「専有部分」とは、区分所有権の目的たる建物の部分をいう。 4 この法律において「共用部分」とは、専有部分以外の建物の部分、専有部分に属しない建物の附属物及び第四条第二項の規定により共用部分とされた附属の建物をいう。 第4条(共用部分) 数個の専有部分に通ずる廊下又は階段室その他構造上区分所有者の全員又はその一部の共用に供されるべき建物の部分は、区分所有権の目的とならないものとする。 2 第一条に規定する建物の部分及び附属の建物は、規約により共用部分とすることができる。この場合には、その旨の登記をしなければ、これをもつて第三者に対抗することができない。 第11条(共用部分の共有関係) 共用部分は、区分所有者全員の共有に属する。ただし、一部共用部分は、これを共用すべき区分所有者の共有に属する。 2 前項の規定は、規約で別段の定めをすることを妨げない。ただし、第27条第1項の場合を除いて、区分所有者以外の者を共用部分の所有者と定めることはできない。 3 民法第177条の規定は、共用部分には適用しない。 *********************************************** 主 文 本件上告を棄却する。 上告費用は上告人の負担とする。 理 由 上告代理人○○○○の上告理由について 原審が適法に確定した事実の概要は、次のとおりである。 1 本件建物の707号室の台所、洗面所、風呂、便所から出る汚水については、同室の床下にあるいわゆる躯体部分であるコンクリートスラブを貫通してその階下にある607号室の天井裏に配された枝管を通じて、共用部分である本管(縦管)に流される構造となっているところ、本件排水管は、右枝管のうち、右コンクリートスラブと607号室の天井板との間の空間に配された部分である。 2 本件排水管には、本管に合流する直前で708号室の便所から出る汚水を流す枝管が接続されており、707号室及び708号室以外の部屋からの汚水は流れ込んでいない。 3 本件排水管は、右コンクリートスラブの下にあるため、707号室及び708号室から本件排水管の点検、修理を行うことは不可能であり、607号室からその天井板の裏に入ってこれを実施するほか方法はない。 右事実関係の下においては、本件排水管は、その構造及び設置場所に照らし、建物の区分所有等に関する法律2条4項にいう専有部分に属しない建物の附属物に当たり、かつ、区分所有者全員の共用部分に当たると解するのが相当である。これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ,原判決に所論の違法はない。論旨は採用することができない。 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。 (裁判長裁判官 金谷利廣 裁判官 千種秀夫 裁判官 元原利文 裁判官 奥田昌道) 以上:1,757文字
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