令和 1年 8月10日(土):初稿 |
○「不貞行為第三者に対する慰謝料請求に関する二宮周平教授コラム紹介1」の続きです。 「森法律事務所ブログ-離婚と不貞に関する日本と欧米のギャップ -紹介」に「世界的に見ると、不貞の相手方にまで慰謝料請求できる国は、先進国では日本だけである。」、「『不貞したら離婚できない』という日本の判例法である。これが外人には、??らしい。」、「不貞行為慰謝料にしても、有責配偶者離婚にしても、欧米の考え方の方が合理的であり、日本でもこの考えに近づけば良いと思っているのですが。」と記載していました。 ○この点について、二宮教授は、先ず性的関係一般論として次のように述べています。 「性的関係は、自由な合意によって成り立つべきものである。性は個人の人格に密接不可分に結びつく人格的なものであり、誰と性的関係を持つかは、自分自身で決めることである。婚姻したからといって、性的自己決定権が失われるわけではない。したがって、配偶者が自由な意思で第三者と性的関係を持った場合、第三者には不法行為責任は生じないと考えることができる。」 ○性は個人の人格に密接不可分に結びつく人格的なもので、婚姻によって性的自己決定権は失われないとの考えは、最も進んだ文明社会では当然のことと思います。文明の進んでいない社会ほど性的自己決定を認めず、違反した場合の制裁も厳しく、日本の江戸時代は、不貞行為は不義密通として打ち首獄門となる場合もありました。 ○次に、二宮教授は、文明の進んだ欧米社会について以下のように解説しています。 「比較法的にみれば、ドイツ、オーストリア、フランス、英国、オーストラリア、米国などでは、不貞行為の相手方の不法行為責任を否定するだけでなく、夫婦間でも不貞をした配偶者への慰謝料請求を否定したり、考慮しない扱いをしている(二宮=原田「貞操概念と不貞の相手方の不法行為責任」ジェンダーと法10月号96~99頁」)。 その背景には、 第1に、婚姻は人格的な結合だから、夫婦の義務は自分たちの責任で履行すべきことであり、人格的な問題に法は介入すべきではないという考え方が浸透したこと、 第2に、離婚の破綻主義が徹底し、離婚に伴う経済的損失は、離婚後扶養ないし補償給付で対応できること、 第3に、英米法圏で特徴的であるが、上述の訴訟の弊害が認識され、かつプライバシー権としての性的自己決定の考え方が広がったこと、 がある。」 ○私法は、私人間の関係を規律するものですが、二宮教授コラムでは、最後に私法の限界と適用場面について次のように説明して、締め括っています。 「法にはできることと、できないことがあり、それを自覚することから、法の守備範囲としての真の権利擁護、例えば、離婚給付(財産分与)の拡充、面会交流や養育費分担の実現、性的自己決定権の侵害としてセクシャル・ハラスメントやDV、夫婦間レイプの損害賠償などが実現するのではないだろうか。」 多くの実務家に読んで頂きたいコラムです。 以上:1,217文字
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