令和 1年 8月 9日(金):初稿 |
○「婚姻中夫婦の一方が不貞行為をした場合の対処法1」に不貞が発覚した場合に怒り狂って不貞をした配偶者と不貞相手を責め続けることは、その配偶者との円満な結婚生活に取り戻すためには愚の骨頂と考えた方が良いでしょう。まして不貞相手に対する慰謝料請求は、その配偶者との円満な結婚生活に取り戻すためには却って、逆効果で、夫婦関係の破滅を招来する可能性が極めて高いものです。私が、間男・間女側として関与した例でも、不貞行為相手に厳しい慰謝料請求を継続することで,自己の配偶者との関係が崩壊した例は多数あります。と記載しておりました。 ○この記述と同趣旨の記述を、「離婚判例ガイド第3版」170頁に著者立命館大学法学部教授二宮周平氏Column③に見つけましたので、以下に引用して紹介します。 不貞の相手方に対する慰謝料請求訴訟は、配偶者と相手方を別れさせる結果となることがないわけではないが、以下のような弊害もしばしば見られる。 ①訴訟で婚姻の破綻、不貞行為の経緯・実情等が主張・立証され、プライバシーが暴露される。 プライバシーの暴露は、離婚訴訟でも同じだが ②本来目ざしていた婚姻の修復が困難になる。 ①との関連で、被告と不貞配偶者がいかに愛し合っていたかを知ることになる。被告と配偶者の結束を強めるなどの副作用がある。 ③不貞行為から離婚に至る場合、①②によって信頼関係を破壊された(夫婦)当事者間で、財産分与や子の監護に関して客観的な話し合いは難しい。 ④不貞の結果、子が生まれた場合、相手方女性は、妻から慰謝料請求をされることを恐れて、認知請求や養育費の請求をしにくく、子の福祉を害することもある。不貞のあった配偶者夫が認知の遺言を作成し、子どもが成人した後で自分の死後にようやく認知が成される事案もある。 ⑤美人局、つまりわざと配偶者に不貞行為をさせ、私の妻あるいは夫に手を出した、慰謝料を払えと脅すケースが出てくる(判例は権利濫用とする。「不貞行為第三者に対する請求を権利濫用とした最高裁判決解説」) ○不貞配偶者と婚姻関係修復を目ざしている場合は、不貞配偶者の相手を責めることは、不貞配偶者をその相手の方に押しやることに等しいことです。二宮教授は、「被告と不貞配偶者がいかに愛し合っていたかを知ることになる。被告と配偶者の結束を強めるなどの副作用がある。」と表現しています。その上、関係修復を諦め離婚に至る場合でも「信頼関係を破壊された(夫婦)当事者間で、財産分与や子の監護に関して客観的な話し合いは難しい。」として、弊害が大きさを強調されていますが、全く同感です。 ○二宮教授は、不貞の結果生まれた子どもにまで言及されています。私は、ここまで考えませんでしたが、生まれた子どもには何ら罪はないのに、親のいざこざで、子にまで不幸をもたらすことは絶対に避けるべきとの考えは全く同感です。 ○二宮教授は、「不貞の慰謝料を認め続けることは、一見すると婚姻や配偶者を保護するかのようであるが、実際には『争いの醜い拡大に裁判所が手を貸す』(伊藤昌司「今期の裁判所」判タ499号141頁)ことにほかならない。」と結論付けており、これも全く同感です、過去の裁判例にこだわり続ける裁判官に強く訴えたいところです。 以上:1,334文字
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