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平成17年 8月 6日(土):初稿 |
第3節 当事者の主張・立証 1 原告の主張・立証 (1)はじめに 【差止請求】①意匠権者又は専用実施権者(意匠権の存在),②被告が侵害行為 〈訴状記載骨子〉 a 原告は次の意匠を有する b 登録意匠は別添意匠公報のとおりであり,登録意匠の構成は次のとおりである c 登録意匠の要部は次のとおりである d 被告は別紙目録記載の製品を製造,販売している e 被告製品の意匠の構成は次のとおりである f 被告製品の意匠の構成は,それぞれ登録意匠の構成と要部において一致し,同一又は類似であり全体として登録意匠と同一又は類似の美感を有する 【損害賠償請求訴訟】①②のほか,③故意過失,④損害,⑤因果関係,⑥損害額 以下,個別要件のうち①②について解説。 (2)意匠権の存在 (ポイント) ・意匠という無体財産を排他的に支配する権利 ・類似意匠にも及ぶ。類似範囲もすべて専用権。商標法では専用権,禁止権の別。 ・設定登録が権利発生要件 ・意匠登録簿,意匠公報等で明らかにする ・美感という感性の世界。範囲確定には他の工業所有権と比して困難伴う ・特許のように「請求の範囲」が願書に記載されないので要部特定に争い Q「類似する意匠」(意23)の解釈(判例も両説ある) 〔A〕創作説 創作の同一性の範囲内か否かで決める 〔B〕混同説 一般需要者が混同するおそれの有無で決める (注)「類似」~23条と3条1項3号で有り様が異なることもある 23条 侵害系事件で権利範囲の射程距離に関する問題(民事司法判断) 3条1項3号 出願審査において登録要件具備の権利成立過程の問題(行政判断) (3)侵害行為 他人が無断で登録意匠又は類似意匠を実施すれば,専有する実施権を侵害したものということになる。 意匠権者又は専用実施権者は,侵害の停止又は予防を請求できる(意37条1項)。意匠の同一性又は類似性が問題。~「意匠の要部」はなにか (a)意匠の要部 ①「意匠の要部」の意味 ~意匠の本質論とリンク。但,結論にさほど差違出ず。 なお判例は各説あり。侵害系事件or出願審査系の事件かによって異なってくる 〔A〕意匠の本質を美的創作外観の保護とみる創作説 →外観において美的創作の存する部分。特許法,著作権法的 〔B〕意匠の本質を外観による出所識別力にあるとする混同説 →見る者の注意を喚起する出所識別作用を持つ部分。商標法,不競法的 〔C〕意匠の本質を需要者の購買意欲をそそる外観の特異性にあるとする需要説 →購買意欲を喚起する外観上の特異部分 ②「意匠の要部」の機能 意匠では願書に請求の範囲が記載されない(文章化が困難であるため)から類比判断は図面や写真から抽出されるものを文章化して構成しなければならない。困難な作業。 ③「意匠の要部」の特定の仕方(総論) 願書には図面しかないから創作過程が見えない。審査官がどこにポイントを置いたかも文章に残るわけでない。どうやって統一判断を行うか。 第一 性質,使用目的,用途,使用態様から要部抽出 第二 出願時点での公知意匠,周知意匠を参酌して比較をする 第三 類似意匠登録があるときは本意匠との共通点ある要部を探る 第四 機能的,技術的要素。これによって要部が限定されることもあるから ・資料は? 先行関連登録例,拒絶先願意匠例,刊行物,インターネット上の意匠,見本市,展示場などの実地調査資料,出願過程の出願人の意見書 ④「意匠の要部」の特定の仕方(各論1)~具体的な商品との関係 物品を取り巻く具体的な取引の実情に即して勘案した上で当該意匠の要部を認定する。 (例~侵害訴訟) ・カットグラス事件 サラダボール等の意匠が類似するかの判断は概観を全体的に観察して看者の審美感に差異を生じるか否かにより決する →通常使用状態においた場合に看者の目に触れる範囲内の外観面が要部。 ・学習机事件 性質上正面及び側面を天板よりやや高い視点から見た外観が最も視覚に訴える・・・ ・プラスチック製提手事件 提手は、用途上、紐掛部の意匠が最も人の注意を引きつける・・・ ・クッキングテーブル事件 需要者たるホテルは、客側の視点で観察した美感を重要視するとの点から要部認定。 (例~審決取消訴訟) ・ボーリング用手袋事件 ボーリングは手の動きが激しく、その手の動きを示す手袋の外観・・・はボウラーの服装等とともにひときわ目立つものであり、・・・。したがってボーリング用手袋については単に裏側のみならず表側の形状・・・はその意匠上ゆるがせにできない ・帽子事件 本体裏側は通常人の目に触れることが期待されていないから、・・・その形状等は要部にならない 以上:1,871文字
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