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平成17年 8月 6日(土):初稿 |
⑤「意匠の要部」の特定の仕方(各論2)~公知意匠・周知意匠との関係 公知意匠、周知意匠が存在するということは要部の範囲を縮小する 審決取消訴訟・・・公知、周知形状も意匠の要部。意匠登録を認めるかどうかについて出願意匠の要素から公知、周知部分を除いて新規性や創作容易性(進歩性)を判断することは意味をなさないから。 侵害訴訟 ・・・上記は要部から除外。公知、周知意匠を意匠権者の権利範囲に属せしめると本来世人の自由に使用できる領域を侵すことになるから、要部に含めてはならない。 裁判所は、意匠権を設定、剥奪する権利を持たない(特許庁が持つ)が、裁判所も侵害の有無を判断するにあたり、意匠権の存在は前提としてその権利範囲の幅に関して公知、周知意匠を参酌した判断をすることはできる。 ・物干し器具事件 公知意匠にない新規な部分であって見る者の注意を惹く部分があればそこに当該意匠の要部がある・・・ 侵害訴訟における被告に最も主要な訴訟活動の一つは、公知、周知意匠をどの程度裁判に提出できるか(意匠広報、実用新案広報、公然実施の製品の広告写真)。原告登録意匠の要部は、公知、周知意匠があればあるほど狭まっていくから。 ⑥「意匠の要部」の特定の仕方(各論3)~類似意匠・関連意匠との関係 (a)類似意匠(関連意匠新設により廃止されたが旧制度もなお存続する)は要部認定に参酌されるべき。但,類似意匠が登録意匠(本意匠)よりもイ号意匠(侵害対象品)に類似しているような場合でイ号意匠が類似意匠の出願前に公知になっている場合には参酌しない。無効事由あることが明らかな類似意匠を参酌すべきでないから(大阪地判H15.4.15荷崩れベルト事件)。 (b)類似意匠があることが原告に有利に働く場合は,イ号意匠が登録意匠の類似の範囲内に収まっているか不明な場合(イ号意匠と同一の類似意匠があれば本意匠との類似が認定されるし,そうでなくても少なくとも類似意匠の範囲までは本意匠の類似範囲であることを証明してくれる)。 (c)反対に被告に有利に働く場合は,登録意匠の類似範囲すなわち要部に公知意匠が含まれることが類似意匠の存在によりより明白になってしまう場合。登録意匠の要部を限定する効果あり。 (d)なお,類似意匠があっても被告意匠との類似は,登録意匠との間で判断される(電線保護カバー事件(大阪地判S59.4.26))。 (e)関連意匠も本意匠の要部認定に役立つ (f)逆に関連意匠の要部認定に本意匠との類似性が問題となる。 ⑦「意匠の要部」の特定の仕方(各論4)~用途や機能あるいは技術といったものに伴う必然的な形状との関係 (侵害訴訟)作業手袋事件 「・・・技術的要請に基づく当然の形状であり,・・・広く用いられ・・・,いわゆるありふれた形状及び模様であって,看者の注意を惹く部分ではない」 勉強用足温器 「(保温着に類似するかが争われ)用途,機能に伴う必然的形状・・・ありふれた形状として看者の注意を惹く部分ではない」 (審決取消訴訟)カンの提げ手事件 「物品の当然持つ機能を考慮して範囲を定めるべき・・・」 ⑧「意匠の要部」の特定の仕方(各論5)~意匠登録出願の経過において為された出願人の主張 禁反言の問題 または 権利範囲の解釈問題 コンクリートブロック事件・・・拒絶理由通知に対して出願人が新規特徴と釈明した部分等を重視した判例 但,どういうものが参酌されるかの基準は現時点ではない。 ⑨意匠の要部と物品の基本的形態、基本形状、基本的構成態様、具体的態様との関係 物品の構成によって基本形状の決定される余地が多ければ多いほど基本形状部分の要部性が否定される方向に。 スプレーガン事件控訴審 ピストル式スプレーガンにおいて構成が全体的にピストルの形態をとることは機能から考えて常識的な構想→ピストル状の基本的形態は意匠の要部とせず (b)意匠の類似の判断 ・イ号商品(侵害対象品)の現実の製品と図面から受ける印象が異なる場合,あくまで現実の製品との類似を検討すべき。 ・Q 意匠の類似の判断主体 〔A〕当業者(意匠を創作し実施する者)~創作性の保護 一般人には分からない微差についても要部と判断される傾向 〔B〕一般の需要者~不正競争防止の面 〔C〕総合説 ・意匠の類似の判断方法 ア対比観察 並べて観察 イ肉眼による観察(直接的観察)*観察距離が争われた「壁張り地事件」 ウ全体観察 全体として似ていれば類似 エ要部観察 注意を惹く中心部分である要否の類否を観察 (c)部分意匠の侵害行為(平成10年改正により導入 意2条) ~物品の特徴的な一部分に限って登録する。 ・全体意匠の中に部分意匠と類似のものが含まれるときはそれ以外の部分が非類似でも侵害。 ・当該部分以外の部分や,当該部分の全体の中における位置等は部分意匠の効力範囲に影響するか~特許庁は積極説。しかし,全体との関連性を厳格に運用すると部分意匠制度の存在意義を損なうおそれ。 (d)間接侵害 一定の範囲に意匠権侵害を擬制(意38)。業として登録意匠の物品の製造にのみ用いる物の生産をすれば意匠権侵害とみなす。ex.物品を組立セットとして販売する 以上:2,107文字
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