仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 貸借売買等 > 賃貸借 >    

賃借人の破産のみを理由に賃貸人は契約解除できないとした最高裁判決紹介

貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。
令和 5年10月24日(火):初稿
○旧借家法時代の古い判例ですが、建物の賃借人が差押を受け、または破産宣告の申立を受けたときは賃貸人はただちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、借家法6条により無効であるとした昭和43年11月21日最高裁判決(判タ229号149頁)を紹介します。

旧借家法
第1条ノ2
 建物ノ賃貸人ハ自ラ使用スルコトヲ必要トスル場合其ノ他正当ノ事由アル場合ニ非サレハ賃貸借ノ更新ヲ拒ミ又ハ解約ノ申入ヲ為スコトヲ得ス
第6条 前7条ノ規定ニ反スル特約ニシテ賃借人ニ不利ナルモノハ之ヲ為ササルモノト看做ス


○賃貸借契約書には、明確に賃借人が破産した場合に解除できると記載されている例は多く、それでも解除することはできないのですか、という質問を受けることがありますが、残念ながらできないと答えざるを得ません。賃借人の破産を理由とする解除については、旧借家法の時代に、以下の最高裁判決が下されているからです。

○この最高裁判決は、旧借家法の判例ですが、旧借家法1条の2は、借地借家法28条に、旧借家法6条は、借地借家法30条にそれぞれほぼ同趣旨で受け継がれていますので、この最高裁判決は今でも受け継がれていると考えられます。

********************************************

主   文
本件上告を葉却する。
上告費用は上告人の負担とする。

理   由
 上告人の上告理由(1)について。
 建物の賃借人が差押を受け、または破産宣告の申立を受けたときは、賃貸人は直ちに賃貸借契約を解除することができる旨の特約は、賃貸人の解約を制限する借家法1条ノ2の規定の趣旨に反し、賃借人に不利なものであるから同法6条により無効と解すべきであるとした原審の判断は正当であつて、原判決には何ら所論の違法はなく、論旨は理由がない。
 同(2)、(3)について。
 所論の点に関する原審の認定判断は正当であつて、所論はひつきよう原審の適法にした事実認定を非難するか、原審で主張しない事実若しくは原審の認定にそわない事実を前提として原判決を非難するに帰し、論旨はいずれも理由がない。
 よつて、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(岩田誠 入江俊郎 長部謹吾 松田二郎 大隅健一郎)


********************************************

原審昭和42年4月26日福岡高裁判決(最高裁判所民事判例集22巻12号2739頁)

主   文
本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人の負担とする。

事   実
控訴代理人は、「原判決を取り消す。
被控訴人らは控訴人に対し原判決別紙第一目録記載の建物を明け渡し、かつ、昭和37年7月1日以降右明渡ずみに至るまで一ケ月金6万5000円の割合による金員を支払え。
被控訴人安部は控訴人に対し、同第二目録記載の物件を引き渡せ、もし右引渡をすることができないときは金18万5050円およびこれに対する昭和38年4月25日以降完済まで年5分の割合による金員を支払え。
訴訟費用は第1、2審とも被控訴人らの負担とする。」
との判決を求め、被控訴代理人は主文同旨の判決を求めた。

事実、証拠関係は、
控訴代理人において、原判決3枚目表10行目から11行目「この契約に基づく100万円は返還の要なき旨」とあるのは、本件賃貸借契約にもとづき被控訴人安部が控訴人に対して差入れた保証金100万円は控訴人において後日これを返還する必要のないものという趣旨であると述べた。

立証(省略)

理   由
当審も控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきものと考えるがその理由は以下のとおり補加訂正するほか、原判決説示の理由と同様であるから、これを引用する。

一 原判決10枚目裏末行に「原告はこれを理由として」とあるのを「原告はこれを特約違反として」と訂正する。原判決11枚目表1行目「被告らは、」から同11枚目裏11行目「相当でないものと解する。」までを以下のように訂正する。「成立に争いがない甲第7号証によれば、控訴人主張のように、本件建物の賃借人たる被控訴人安部真木において差押を受け、または破産宣告の申立を受けたときは控訴人は直ちに本件賃貸借契約を解除することができる旨の特約が結ばれていた事実を認めることができる。

しかしながら、右のように単に賃借人が差押または破産宣告の申立を受けたことを以て直ちに解除の原因とする約定は、賃貸人の解約を制限する借家法第1条ノ2の規定の趣旨に反し,賃借人に不利なものであるから無効であるというべきである。よつて、右特約違反を前提とする控訴人の主張は採用できない。」

二 原判決12枚目表2行目「被告安部真木本人尋問の結果の次に当審被控訴本人安部真木尋問の結果をつけ加える。同12枚目表7行目に「実質上経営には」とあるのを「本件建物の使用状況も実質的には」と訂正する。

三 同12枚目表末行に当審被控訴本人安部真木尋問の結果を、同12枚目裏3、4行目「これに反する原告本人尋問の結果(第2回)」の次に「当審控訴本人尋問の結果(第一、2回)」をそれぞれつけ加える。
四 同12枚目裏9行目の「総行すれば、」の次に「仮りに、右物件が控訴人において所有かつ賃貸したものであるとしても、」を入れる。

結局、原判決は相当で控訴は理由がない。よつて、民訴法第384条、第95条、第89条にしたがい主文のとおり判決する。
(昭和42年4月26日 福岡高等裁判所第一民事部)

以上:2,253文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック

(注)このフォームはホームページ感想用です。
貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。


 


旧TOPホーム > 貸借売買等 > 賃貸借 > 賃借人の破産のみを理由に賃貸人は契約解除できないとした最高裁判決紹介