令和 4年12月13日(火):初稿 |
○「家財道具を勝手に処分できる契約条項は適法と判断した高裁判決紹介」で、原告NPO法人「消費者支援機構関西」が2016年、被告家賃債務保証会社「フォーシーズ」を相手取り、契約条項の差し止めを求めて提訴し、一審大阪地裁判決は、原告の請求を認め、差し止めを認めましたが、令和3年3月5日大阪高裁は、家賃の滞納や連絡がとれないなどのいくつかの条件を満たしている場合「借り主は物件を住居として使用する意思を失っている可能性が極めて高く、占有権を放棄している」と判断し、一審判決を取り消して条項は適法としたことを紹介していました。 ○その上告審令和4年12月12日最高裁判決は、大阪高裁判決を破棄し、原告NPO法人「消費者支援機構関西」の請求を認め、いわゆる「追い出し条項」を無効としました。そのニュース報道は以下の通りです。 ******************************************** 「家賃滞納で明け渡し」条項は違法 最高裁が初判断 日経新聞2022年12月12日 18:19 (2022年12月12日 21:26更新) 賃貸住宅の家賃を借り主が2カ月滞納するなどして連絡も取れない場合、物件を明け渡したとみなす家賃保証会社の契約条項の是非が争われた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(堺徹裁判長)は12日、消費者契約法に基づいて条項を違法とする初判断を示し、条項の使用差し止めを命じた。 賃貸住宅では入居に当たり、滞納時に家賃を家主側へ立て替え払いする家賃保証会社との契約を求めるケースが近年急増し、滞納者に対する行為が問題化。借り主側の保護を重視した今回の最高裁判決は今後の賃貸実務に影響を与えそうだ。 同小法廷は借り主の権利が一方的に制限されているとして、消費者契約法上の「消費者の利益を一方的に害する条項」に該当すると判断。家賃保証会社「フォーシーズ」(東京)の敗訴が確定した。 争われたのは同社が借り主らと交わしていた契約条項。家賃を2カ月以上滞納し、電気やガスの使用状況から部屋を利用していないとみられる場合などに部屋を明け渡したとみなすとしていた。 判決は賃貸借契約を直接結んでいるのが家主と借り主である点を重視。借り主の権利が当事者ではない家賃保証会社の一存で制限され、法的な手続きに基づかずに明け渡しと同様の状態になる点を著しく不当だとした。 また、3カ月以上の滞納で家賃保証会社が事前通告なく賃貸借契約を解除できるとした別の条項も同様に違法と指摘し、「契約解除は生活の基盤を失わせる重大な事態を招き得るため、先立って通告する必要性は大きい」とした。 当事者に代わって訴訟を起こす適格消費者団体の「消費者支援機構関西」(大阪市)が提訴。2019年の一審・大阪地裁判決は明け渡し条項に限って違法としたが、21年の二審・大阪高裁判決は「借り主の不利益は限定的で、条項には相応の合理性がある」としていた。 フォーシーズは「判決文が届いていないので現時点ではコメントできない」としている。 消費者契約法10条は、消費者と事業者が持つ情報の量や質、交渉力に格差があることを踏まえ、消費者の権利を制限または義務を加重する条項で、消費者の利益を一方的に害するものは無効と規定している。〔共同〕 ○判決主文と事案の概要は以下の通りです。 ******************************************** 主 文 1 原判決主文第1項を破棄し、被上告人の控訴を棄却する。 2 原判決中、別紙契約条項目録記載1の内容の条項に係る請求に関する部分を次のとおり変更する。 (1)上告人の控訴に基づき、第1審判決中、上記請求に関する部分を次のとおり変更する。 (2)被上告人は、賃貸住宅の賃借人となる消費者との間で当該消費者の賃料等の支払に係る債務の保証委託に関する契約を締結するに際し、別紙契約条項目録記載1の内容の条項を含む契約の申込み又はその承諾の意思表示を行ってはならない。 (3)被上告人は、別紙契約条項目録記載1の内容の条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙を廃棄せよ。 上告人のその余の請求を棄却する。 3 上告人の別紙契約条項目録記載2の内容の条項に係る請求に関する上告及び同目録記載3の内容の条項に係るその余の請求に関する上告を棄却する。 4 上告人のその余の上告を却下する。 5 訴訟の総費用は、これを5分し、その3を上告人の負担とし、その余を被上告人の負担とする。 理 由 第1 事案の概要 1 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。 (1)上告人は、消費者契約法(以下「法」という。)2条4項にいう適格消費者団体である。 (2)被上告人は、賃貸住宅の賃借人(以下、単に「賃借人」という。)の委託を受けて賃借人の賃料等の支払に係る債務(以下「賃料債務等」という。)を保証する事業を営む会社である。 (3)被上告人は、賃貸住宅の賃貸人(以下、単に「賃貸人」という。)、賃借人等との間で、「住み替えかんたんシステム保証契約書」と題する契約書(契約書ひな形が印刷された契約書用紙。以下「本件契約書」という。)を用いて、賃貸人と賃借人との間の賃貸借契約(以下「原契約」といい、原契約の対象物件である賃貸住宅を「本件建物」という。)に関し、賃借人が被上告人に対して賃料債務等を連帯保証することを委託し、被上告人が賃貸人に対して当該賃料債務等を連帯保証すること等を内容とする契約を締結している。 上記契約のうち、被上告人と賃借人との間の契約部分は、法2条3項にいう消費者契約に当たる。 (4)本件契約書には、次のような条項がある。なお、本件契約書において、「賃料等」とは、賃料、管理費・共益費、駐車場使用料その他の本件契約書固定費欄記載の定額の金員をいい、「変動費」とは、光熱費などの月々によって変動することが予定されている費用をいうものとされている。 ア 被上告人は、賃借人が支払を怠った賃料等及び変動費の合計額が賃料3か月分以上に達したときは、無催告にて原契約を解除することができるものとする(別紙契約条項目録記載1の内容の条項。以下「本件契約書13条1項前段」という。)。 イ 被上告人は、賃借人が賃料等の支払を2か月以上怠り、被上告人が合理的な手段を尽くしても賃借人本人と連絡がとれない状況の下、電気・ガス・水道の利用状況や郵便物の状況等から本件建物を相当期間利用していないものと認められ、かつ本件建物を再び占有使用しない賃借人の意思が客観的に看取できる事情が存するときは、賃借人が明示的に異議を述べない限り、これをもって本件建物の明渡しがあったものとみなすことができる(別紙契約条項目録記載3の内容の条項。以下「本件契約書18条2項2号」という。)。 (5)被上告人は、本件訴訟において、賃料債務等につき連帯保証債務を履行した場合であっても、本件契約書13条1項前段に基づいて無催告で原契約を解除することができる旨を主張しているほか、原契約が終了していない場合であっても、本件契約書18条2項2号の適用がある旨を主張している。 2 本件は、上告人が、被上告人に対し、本件契約書13条1項前段、本件契約書18条2項2号等の各条項が法10条に規定する消費者の利益を一方的に害する消費者契約の条項に当たるなどと主張して、法12条3項本文に基づき、上記各条項を含む消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示の各差止め、上記各条項が記載された契約書ひな形が印刷された契約書用紙の各廃棄等を求める事案である。 (後略) 以上:3,112文字
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