仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 >    

”偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書”紹介

貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。
令和 2年12月 3日(木):初稿
○「注!ファクタリングと称する違法貸付-ファクタリング=貸付認定判例紹介」で、「ファクタリングは、他人が有する売掛債権を買い取って、その債権の回収を行う金融サービスを指し、様々な種類があると解説されていますが、実質は、貸金業法規制違反の貸金であることが多く注意が必要です」と記載していました。

○現在、ファクタリングと称して年利400%近い資金借入をしていた事案を扱っています。ファクタリングに関する裁判例はまだ余り見受けられませんが、裁判例を多くするため民法第708条不法原因給付を理由とする債務不存在確認訴訟を準備中です。

○適法ファクタリングと違法貸付を分ける基準は、金融庁HPで以下の通り説明されています。

中小企業の経営者などを狙い、貸金業登録を受けていない者が、ファクタリングを装って、業として、貸付け(債権担保貸付け)を行っている事案が確認されています。
○ ファクタリングとして勧誘を受けたが、契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが定められていない
○ ファクタリング業者から受け取る金銭(債権の買取代金)が、債権額に比べて著しく低額である
などのケースは、ファクタリングを装った貸付けの疑いがありますので、十分注意してください。

また、ファクタリングであっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります。
例えば、譲渡した債権の回収(集金)がファクタリング業者から売主に委託されており、売主が集金できなかった場合に、
・売主が債権を買い戻すこととされている
・売主自身の資金によりファクタリング業者に支払をしなければならないこととされている
などといったようなものについては、貸金業に該当するおそれがあります(貸金業の該当性については、契約書の文言だけでなく、経済的側面や実態に照らして判断されるものです。)。
少しでも不審に思ったら、下記の相談窓口に情報提供・相談をお願いいたします。

(参考)
裁判例においても、
・ファクタリング業者が債権回収のリスクをほとんど負っていない
・債権の額面と無関係に金員の授受がなされていた
・売主は、買戻しを行わざるを得ない立場にあった
・債権が回収不能となった場合には代金を減額されるなど、債権の回収リスクが売主の信用リスクと同じとなっている
といった事情等を考慮して、金銭の授受が金銭消費貸借契約に準じるものと判断されたものがあります(大阪地方裁判所平成29年3月3日判決)。
業として、金銭消費貸借を行う場合には、貸金業登録を受ける必要があります。


○「ファクタリング」で検索するとファクタリング業者は相当増えています。日本ファクタリング協会なんてHPもあり、その会員は適法ファクタリング業者の如く記載されていますが、そうとは限りませんので注意が必要です。同協会HP掲載貸金業と見なされる以下の行為基準は、適正です。現在当事務所で扱っている事案は、以下の10基準のうち7つに該当し、実質年率400%近い実質貸付ですが、同協会の会員です。

貸金業とみなされる行為
1.ノンリコース(償還請求なし)の契約で、譲渡人に請求する行為
2.買戻し特約が付された契約
3.回収業務委託契約を締結して、代表者保証、第三者保証を付する契約
4.売買債権以外の第三債務者の債権を譲渡担保とする契約
5.契約の終了した債権譲渡通知書を返却せず、流用して送付、回収する行為
6.債権譲渡通知を留保する契約
7.譲受人が債権譲渡通知書(電子内容証明を含む)を作成して送付する行為
8.取引に関係のない親族、会社等に架電して請求する行為
9.譲渡人を恐喝して、譲渡代金の回収を図る行為
10.個人事業者に債権譲渡登記費用として5万円を請求して領収書を発行しない行為


○以下、偽装ファクタリング業者に関する東京弁護士会意見書を紹介します。

*****************************************

偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書
2020(令和2)年5月13日

東京弁護士会 会長 冨 田 秀 実


第1 意見の趣旨
1 捜査当局(検察庁・警察)は、ファクタリングと称して、貸金業の登録を受けずに、業として、年利換算で20%を超える高額な手数料で、「金銭の貸付け」に該当すると解すべき資金融通サービス(具体的には、ファクタリング契約ないし債権譲渡契約において、譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合、債務者への通知や債務者の承諾の必要がない場合や、譲渡人が譲受人から債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合など)を行う者(以下「偽装ファクタリング業者」という。)について、貸金業法違反(無登録営業)および出資法違反(高金利)の摘発・取締りを強化すべきである。

2 国(金融庁・法務省)、都道府県および国民生活センターは、前項のような偽装ファクタリング業者についての実態把握に努め、広く国民に対し、その手法を公開し、これら偽装ファクタリング業者を利用することのないように注意喚起するとともに、すでに偽装ファクタリング業者を利用してしまった被害者のための相談体制を強化すべきである。

3 国(衆議院・参議院・金融庁・法務省)は、法解釈上の疑義が生じる余地がないよう、貸金業法第2条、第42条及び出資法第7条を改正して、第1項のような偽装ファクタリング業者の行う資金融通サービスについても、金銭の貸付けとみなす(金銭の貸付けに含む)ことを、条文上、明記することを検討すべきである。

第2 意見の理由
1 ファクタリングの増加

いわゆるファクタリングとは、企業が保有している売掛債権を割り引いて買い取り、その債権の管理・回収を行うサービスであると考えられているが、このところ、ファクタリングと称して、実質的には、高金利で金銭を貸し付けているものとみるべき事例が増えてきている。
これらファクタリング業者は、自らの行っている事業は「債権の売買」であり、金銭の「貸付け」には当たらないから、貸金業法や出資法の適用を受けないなどと主張し、貸金業の登録も受けないまま、あたかも、合法な金融サービスであるかのように、堂々と、インターネット上で宣伝広告をし、広く顧客を募っている。その上で、年利に換算すると数百パーセント以上にも相当するような高額な手数料(債権額と債権買取金額の差額)を徴収している。

さらに、最近では、給与ファクタリングと称して、給与所得者から、賃金債権を買い取るという形式を用いて、年利に換算すると数百パーセント以上にも相当するような高額な手数料を徴収して、資金融通サービスを行う者も増えてきている。
これらの事例のほとんどは、債権の買い取りの際に債務者への通知を行わない、いわゆる「二者間ファクタリング」であり、ファクタリング業者が自ら債権の管理・回収を行っているという実態はない。

2 ファクタリング取引も「貸付け」に該当し得ること
貸金業法は、「金銭の貸付け」は「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付を含む。」としている(同法第2条第1項)。また、出資法も、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付」は「金銭の貸付けとみなす。」としている(法第7条)。

したがって、たとえファクタリング取引(売買契約)の形式(金銭消費貸借契約以外の法形式)をとっていたとしても、それだけで、当然に貸金業法および出資法の適用を免れるものではない。いわゆるファクタリング取引であっても、経済的に貸付け(金銭の交付と返還の約束が行われているもの。)と同様の機能を有しているものは、貸金業法第2条第1項および出資法第7条の「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当することになる。この点、例えば、ファクタリング契約ないし債権譲渡契約において、譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合など、債権譲受人は回収不能のリスクを負わず、これを譲渡人が負担するような形になっている場合には、手形の割引にも近く、経済的に貸付けと同様の機能を有しているといえるから、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当すると解すべきである。

また、ファクタリング契約ないし債権譲渡契約において、売掛先への通知や承諾の必要がない場合や、債権の譲渡人が譲受人から債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合(いわゆる二者間ファクタリング)も、売買の目的物とされる債権を譲渡人から譲受人に確定的に移転させ、譲受人から債務者に対して直接その支払を求めることは、原則として予定されず、譲受人は通常、譲渡人に対してその支払を求めることが想定されていることなどからすれば、実質的には、経済的に債権担保貸付けと同様の機能を有しているものといえるから、「手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法」に該当すると解すべきである。

このところ問題となっている事例の多くは、これらに当たると考えられるものである。したがって、貸金業法の登録を受けずに、業として、このような資金融通サービスを行っている場合には貸金業法違反(同法第47条第2号、第11条第1項)であり、また、その手数料(債権額と買取金額の差)が年率換算で出資法違反の高金利となる場合には出資法違反(同法第5条第2項、同第3項)となる。

3 ファクタリング被害ホットラインの実施
当会では、近年、貸金業登録のない業者がファクタリングを謳って売掛金や給与などの債権の売買を装い、実質的に利息制限法や出資法の上限利率を超える高い利息を取っている事案が増えていることから、このような悪質なファクタリング取引に苦しんでいる方からの相談に応じるとともに、ファクタリング被害の実態を把握することを目的として、2019年12月10日、「ファクタリング被害ホットライン」と題して、無料電話相談を実施した。上記のホットラインに寄せられた相談の多くは給与ファクタリングに関するものであり、いずれも、約1か月先の給与債権の一部を債権額の6~8割程度で売ったこととするなど、これを年利に換算すると、数百パーセント以上と、出資法5条第1項・第3項の上限利率をも大幅に上回るものであった。

また、事業者の売掛債権ファクタリングについても、同様に、約1か月先が支払期日となっている売掛債権の一部を債権額の8割程度で売ったこととするなどであり、やはり、これを年利に換算すると、出資法5条第1項・第3項の上限利率をも大幅に上回るものであった。
このような偽装ファクタリングを利用してしまった被害者らの多くは、資金繰りに窮している中で、あたかも、それが適法な金融サービスであるかのような宣伝広告に接し、これを利用してしまったものであり、また、もし偽装ファクタリング業者への支払をしないときは、売掛先や勤務先に知られてしまうことを怖れている。これら偽装ファクタリング業者は、こうした資金需要者らの弱みにつけこんだ悪質な手法である。

4 違法ファクタリング業者の被害の根絶のための取組の必要性
金融庁は、2019年初めに、ホームページ上で、「違法な金融業者からの借入れに関する相談等」に対する「アドバイス」として、次のとおり、注意喚起をした。
すなわち、「ファクタリング契約や売掛債権売買契約において、譲受人に償還請求権や買戻請求権が付いている場合、売掛先への通知や承諾の必要がない場合や、債権の売り主が譲受人から売掛債権を回収する業務の委託を受け譲受人に支払う仕組みとなっている場合は、ファクタリングを装ったヤミ金融の可能性が高いことから、相手方業者の貸金業登録の有無を確認のうえ、手数料(又は債権額と買取額の差)が年率換算で事実上の高金利になっていないか、十分にご注意ください。」というものである。

しかし、このような注意喚起にもかかわらず、その後も、インターネット上などでは、あたかも、合法な金融サービスであるかのように、堂々と、違法なファクタリング取引の宣伝広告が行われている。その結果、このような偽装ファクタリング業者による被害は、さらに増大している。しかも、被害にあっても泣き寝入りする者も少なくないと推認されるから、表に出ている被害は、あくまでも氷山の一角に過ぎないとも考えられる。

このような偽装ファクタリング業者による被害の拡大を踏まえ、金融庁は、2020年3月5日付で、一般的な法令解釈に係る書面照会手続に対する回答において、給与ファクタリングを業として行うことが貸金業法上の貸金業にあたるとの解釈を示しており、また、東京地方裁判所令和2年3月24日判決は、かかる給与ファクタリング契約は貸金業法第42条第1項により無効となることを明らかにしているところであるが、かかる被害を根絶するためには、関係各機関の一層の取組の強化が不可欠である。

5 関係各機関への要請
当会としても、このような偽装ファクタリング業者による被害が、社会問題と言いうるほどに拡大している現状を踏まえ、貸金業法及び出資法の潜脱を赦さず、引き続き被害救済に向けた取組を一層強化していく所存であるが、関係各機関に対し、以下の通り要請する。
このような偽装ファクタリング業者は、貸金業法に違反して、無登録で貸金業を営む者であり、出資法に違反して、同法所定の上限金利を超える利息の契約をし、これを受領し、又はその支払いを要求している者であるから、捜査当局(検察庁および警察)においては、その摘発・取締りを強化すべきである。

国(金融庁・法務省)は、都道府県及び国民生活センターは、かかる偽装ファクタリング業者についての実態把握に努め、広く国民に対し、その手法を公開し、これら偽装ファクタリング業者を利用することのないように注意喚起するとともに、すでに偽装ファクタリング業者を利用してしまった被害者のための相談体制を強化すべきである。

このように、現行法の範囲内においても、関係各機関の取組の強化によって、偽装ファクタリング業者について、適切な規制及び取り締まりを行うべきであるが、さらに、「金銭の貸付け」について法解釈上の疑義が生じる余地のないようにし、法の潜脱を許さないためには、国(衆議院・参議院・金融庁・法務省)において、貸金業法第2条、第42条及び出資法第7条の改正を行うことも、検討すべきである。

以上
以上:5,901文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック

(注)このフォームはホームページ感想用です。
貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。


 


旧TOPホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 > ”偽装ファクタリング業者に対する適切な規制を求める意見書”紹介