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工事代金差押申立について特定性を欠くとして却下した地裁判例紹介

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平成31年 1月18日(金):初稿
○判決に基づく工事代金差押を検討していますが、その工事代金の特定程度が問題で、関係する判例を探しています。
債権者が、債務者に対する執行力ある執行証書正本に基づき、債務者が第三者債務者らに対して有する舗装工事、建設工事等の契約に基づく請負代金債権につき、債権差押命令及び転付命令を申立てた事案があります。差押対象債権の記載は以下の通りです。

別紙 差押債権目録
(第三債務者有限会社a)
 金3、500、000円
 ただし、債務者と第三債務者有限会社aとの間の舗装工事の設計、積算、施工、監理及び監督業務、建築工事の設計、積算、施工、監理及び監督業務、上記に附帯する一切の業務に関する契約に基づき、平成21年12月1日から平成24年3月30日までの間に施工した工事等の請負代金債権のうち、支払期の早いものから頭書金額に満つるまで。


○この債権差押申立について、本件申立ては、期間等による一応の限定はされているものの、債務者がその営業目的の範囲内で第三債務者らとの間で締結した契約に基づいて取得した請負代金債権を、概括的ないし包括的に差押えの対象とするものであると解さざるを得ないから、本件申立ては差押債権の特定を欠き不適法であるとして、申立てを却下した平成24年4月25日福岡地裁判決(判時2195号34頁<参考収録>)全文を紹介します。

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主  文
一 本件申立てを却下する。
二 申立費用は債権者の負担とする。

理  由
第一 申立ての趣旨

 債権者は、債務者に対し、別紙請求債権目録記載の執行力ある債務名義の正本に記載された請求債権を有しているが、債務者がその支払をしないので、債務者が第三債務者らに対して有する別紙差押債権目録記載の債権の差押命令を求める。

第二 当裁判所の判断
一 債権者は、別紙差押債権目録記載のとおり、債務者と第三債務者らとの間で締結された、舗装工事、建設工事等の契約に基づく請負代金債権の差押えを求めるものである。

二 民事執行規則133条2項は、債権差押命令の申立書に強制執行の目的とする財産を表示するときは、差押債権の種類及び額その他の債権を特定するに足りる事項を明らかにしなければならないと規定しているところ、同項の求める差押債権の特定とは、債権差押命令の送達を受けた第三債務者において、直ちにとはいえないまでも、差押えの効力が上記送達の時点で生ずることにそぐわない事態とならない程度に速やかに、かつ、確実に、差し押さえられた債権を識別することができるものでなければならないと解するのが相当であり、この要請を満たさない債権差押命令の申立ては、差押債権の特定を欠き不適法というべきである(最高裁平成23年(許)第34号同年9月20日第三小法廷決定・民集65巻6号2710頁)。

三 本件申立ては、別紙差押債権目録記載のとおり、債務者が平成21年12月1日から平成24年3月30日までの間に施工した工事等によって、第三債務者らに対して有する請負代金債権を、支払期の早いものから順次差し押さえるというものであるが、申立書には、債務者と第三債務者らとの間に継続的な請負契約が締結されている旨の記載はなく、また、一件記録上もこれをうかがわせるに足りる資料は提出されていないから、上記期間内に施工された単発的な工事等の請負契約に基づく代金債権を差押えの対象とするものであると解される。

単発的な請負契約に基づく代金債権を差し押さえるためには、第三債務者において差し押さえられた債権について他の債権と識別することができるようにするため、契約の日時と契約の目的(仕事の内容、場所等)を記載して差押債権を特定する必要があるというべきであるが、本件申立てにおいては、契約の種類について「舗装工事の設計、積算、施工、監理及び監督業務、建設工事の設計、積算、施工、監理及び監督業務、上記に附帯する一切の業務に関する契約」などと債務者の商業登記簿上の目的をそのまま記載するにすぎず、契約の日時や契約の目的については何も記載していない。

本件申立ては、期間等による一応の限定はされているものの、結局のところ、債務者がその営業目的の範囲内で第三債務者らとの間で締結した契約に基づいて取得した請負代金債権を、概括的ないし包括的に差押えの対象とするものであると解さざるを得ず、このような差押債権の表示では、送達を受けた第三債務者において、前記の程度に速やかに確実に差し押さえられた債権を識別することができるものであるとはいえないことが明らかである。

 したがって、本件申立ては、差押債権の特定を欠き不適法というべきである。

四 よって、本件申立てを却下することとし、申立費用の負担につき民事執行法20条、民事訴訟法61条を適用して、主文のとおり決定する。
 (裁判官 家原尚秀)

別紙 当事者目録〈省略〉
別紙 請求債権目録〈省略〉
別紙 差押債権目録
(第三債務者有限会社a)
 金3、500、000円
 ただし、債務者と第三債務者有限会社aとの間の舗装工事の設計、積算、施工、監理及び監督業務、建築工事の設計、積算、施工、監理及び監督業務、上記に附帯する一切の業務に関する契約に基づき、平成21年12月1日から平成24年3月30日までの間に施工した工事等の請負代金債権のうち、支払期の早いものから頭書金額に満つるまで。
 〈以下省略〉

以上:2,234文字

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