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過怠約款付分割支払債務消滅時効起算点についての最高裁判例紹介

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平成30年11月22日(木):初稿
○民法第166条で消滅時効の起算点について「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。」と規定されています。この「権利を行使することができる時」について、分割払いで「1回でも支払を怠った時は期限の利益を喪失して残額を一括で支払う」との期限の利益喪失約款がついている場合の消滅時効起算点は、1回の不履行があつた時から進行するか、それとも債権者が残債務全額の請求をした時から進行するかが争いになっている事件があります。

○私としては、1回でも支払を怠れば債権者は、一括返済請求ができるのだから、1回の不履行があつた時から進行すると考えていたのですが、残念ながら、最高裁は債権者が残債務の請求をしたときとしていました。その昭和42年 6月23日最高裁判決(判タ209号141頁、判時488号56頁)全文を紹介します。

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主   文
原判決中金1万8744円およびこれに対する昭和29年4月1日から支払ずみに至るまで年1割の割合による金員の支払請求に関する部分を破棄し、右部分につき、第一審判決を取り消す。
前記金員請求に関する部分につき、被上告人の請求を棄却する。その余の上告を棄却する。
訴訟の総費用はこれを5分し、その1を上告人の負担とし、その余を被上告人の負担とする。

理   由
 上告代理人○○○○の上告理由第一点について。
 原審の確定したところによれば、被上告人の前身であるA銀行を債権者とし、上告人、訴外Bおよび同Cの3名を連帯債務者とする本件割賦金弁済契約において、連帯債務者が半年賦払その他の約定に違反したときは債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務の全部または一部を弁済する旨の約定がなされていたというのであり、そして、当事者双方の弁論の経過に徴すれば、被上告人らが昭和28年9月30日になすべき第3回割賦金の支払を怠つたことにより残債務金額について履行期が到来したとして、上告人に対して右全額およびこれに対する翌10月1日からの遅延金の支払を求めたのに対して、上告人もまた、右割賦金の支払を求めたのに対して、上告人もまた、右割賦金の支払遅怠により残債務全額について履行期が到来したことを認めるとともに、昭和28年10月1日から右全額について消滅時効が進行したと主張していることが明らかである。
 論旨は、上告人の右主張が債務弁済期に関する自白にあたるというが、前記のような約旨の契約において、連帯債務者が半年賦払その他の約定に違反した場合、残債務の弁済期がいつ到来するかは、単なる事実問題ではなくて契約の解釈に関する法律上の問題というべきであり、したがつて、右のように弁済期がいつであるかについて当事者間に見解が合致したとしても、これをもつて裁判上の自白があつたものとすることはできず、裁判所の判断がこれによつてなんら拘束を受けるべきものではない。それゆえ、論旨は採用しえない。

 同二点および第三点について。
 論旨は、原判決には本件割賦金債務の弁済期の確定に関して民法166条の解釈を誤つた違法があるのみならず、かりに、本件割賦金弁済契約において、債権者の請求があつた時から残債務全額について消滅時効が進行すると解すべきものとしても、原審としては、第4回およびそれ以降の各割賦金についても消滅時効完成の有無につき判断すべきであり、少なくとも上告人に対して右時効完成の主張をするかどうかを釈明すべきであつたのに、これを怠つた点において、原審は民法145条に違反し、釈明権不行使、審理不尽の違法を犯したものであるという。

 しかし、本件のように、割賦金弁済契約において、割賦払の約定に違反したときは債務者は債権者の請求により償還期限にかかわらず直ちに残債務全額を弁済すべ旨の約定が存する場合には1回の不履行があつても、各割賦金額につき約定弁済期の到来毎に順次消滅時効が進行し、債務者が特に残債務全額の弁済を求める旨の意思表示をした場合にかぎり、その時から右全額について消滅時効が進行するものと解すべきである(昭和14年(オ)第625号同15年3月13日大審院民事連合部判決・民集19巻544頁参照)。

 そして、原審の確定したところによれば、右第4回割賦金1万8744円の弁済期は昭和29年3月31日であつたところ、被上告人がはじめて残債務額の請求をしたのは昭和34年7月8日であつたというのであるから、その間5年以上を経過していることが明らかであり、しかも、本件割賦金債務は訴外Bの商行為によつて生じた債務にあるというのであるから、連帯債務者たる上告人についても商法が適用され、上告人自身の第4回割賦金債務も商事債務として右5年の経過とともに時効完成によつて消滅したものというべきである。

 しかるに、原審は、右第4回の割賦金債務が依然として存在するものと判断して、これにつき被上告人の請求を認容しているのであるから、この点において原判決は違法であつて破棄を免れず、論旨は理由がある。しかし、第5回すなわち昭和29年9月30日支払分以降の各割賦金については、原審の確定した事実関係によつても、被上告人の右全額請求の時までいまだ5年を経過していないことが明らかであるから、原審がこれにつき消滅時効の完成を認めなかつたのは当然であつて論旨は理由がない。

 したがつて、右第4回割賦金額およびこれに対する昭和29年4月1日から支払ずみに至るまで年1割の割合による金員の支払を求める部分については、原判決を破棄し、第一審判決を取り消すべく、かつ、右部分については、叙上事実関係によつても、被上告人の請求の理由のないことが明らかであるから、右部分につき被上告人の請求を棄却し、その余の部分については、上告を棄却すべきものである。
 よつて、民訴法408条、396条、386条、384条、96条、89条、92条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。(奥野健一 草鹿浅之介 城戸芳彦 石田和外 色川幸太郎)
以上:2,496文字

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