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ファクタリング取引が金銭消費貸借非該当とした高裁判例紹介

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平成30年11月 9日(金):初稿
○「ファクタリング取引が金銭消費貸借非該当とした地裁判例紹介」の続きでその控訴審の平成29年5月23日東京高裁判決(ウエストロー・ジャパン)を紹介します。

○事案を繰り返すと、一般貨物自動車運送事業等を業とする株式会社である控訴人が、同社と被控訴人A社又は被控訴人B社との間で「売掛債権売買契約証書(ファクタリング契約)」と題する契約書等に基づいてされた本件各取引は金銭消費貸借であって、利息制限法が適用され、控訴人の被控訴人らに対する各弁済金のうち同法1条所定の制限を超えて利息として支払われた制限超過部分による過払金が発生していると主張して、又は、本件各取引が債権の売買であるとすれば、公序良俗若しくは譲渡禁止の特約に反して無効であるなどとして、被控訴人らに対し、不当利得の返還及び民法704条前段所定の利息の支払を求めたものです。

○一審平成28年12月19日東京地裁判決は、各ファクタリング取引ははいずれも債権の売買たる実質を有しているとして控訴人の請求を棄却したので控訴しましたが、控訴審も一審判決を維持しました。

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主   文
1 本件控訴をいずれも棄却する。
2 控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人株式会社Aマネジメント(以下「被控訴人A」という。)は,控訴人に対し,132万9863円及びうち132万9378円に対する平成27年2月28日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 被控訴人株式会社Bマネジメント(以下「被控訴人B」という。)は,控訴人に対し,21万9368円及びこれに対する平成26年11月29日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 本件は,控訴人が,被控訴人らに対し,控訴人と被控訴人らとの間で,「売掛債権売買契約証書(ファクタリング契約)」と題する契約書等に基づいてなされた各取引(以下「本件各取引」という。)は,①金銭消費貸借契約であるから利息制限法が適用されるところ,同法1条所定の制限利率を超えて利息として支払われた部分については無効である,②仮に債権の売買契約であるとしても,暴利行為であるから公序良俗に反し無効である,あるいは,譲渡禁止特約が付されているから無効であると主張して,不当利得に基づく返還請求及び民法704条(悪意の受益者)前段所定の利息(以下「法定利息」という。)の支払を求める事案である。
 原判決は,控訴人の請求をいずれも棄却したところ,控訴人がこれらを不服として控訴をした。

2 争いのない事実,争点及び争点に関する当事者の主張は,次の3のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」の1及び2(2頁16行目から7頁22行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

3 原判決の補正

         (中略)


第3 当裁判所の判断
1 当裁判所も,控訴人の請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は,次の2のとおり原判決を補正するほか,原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の1から6まで(原判決7頁24行目から12頁5行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

2 原判決の補正
(1) 原判決8頁22行目及び9頁19行目の「82%」を「約78%」と改める。

(2) 原判決9頁6行目から10行目までを次のとおり改める。
 「上記①のとおり,控訴人と被控訴人A間で取り交わされた各契約書は,各売掛債権の売買契約であると定められていて,上記②のとおり控訴人に支払われる金額がその代金額とされているから,特段の事情のない限り,控訴人と被控訴人A間の契約は,各契約書のとおり,売買契約であって,控訴人が主張する金銭消費貸借契約とは認められない。

 そして,上記④のとおり,上記売買代金額の債権額に対する割合は,「契約日」から「支払期日」間の長短と対応しているものではなく,上記⑤のとおり,売掛債権の存在,内容の確認と,債務者らの信用調査も行われていることや,上記⑥のとおり,売掛債権の債務者に対する債権譲渡通知も作成されていることは,控訴人と被控訴人Aとの各契約が売買契約であることを裏付けているということができる。

 なお,上記売買代金額は,債権額の約78%から約92%で一定の割合ではなく,代金額決定に一定の根拠(法則)を認めるに足る証拠はないが,証拠(控訴人代表者,被控訴人A代表者各本人)と弁論の全趣旨によれば,売買代金額は,契約当事者間の交渉により,当時の同業他社との比較や債務者の信用力等で決定されることが認められるから,一定の根拠(法則)がないことは,売買契約であることを否定する理由にはならない。

 これに対し,控訴人は,被控訴人Aが債権譲渡通知書を受領しているにもかかわらず債務者に通知していないのは,実際には債権の売買を行っていないからである旨主張する。しかし,証拠(控訴人代表者本人)によれば,控訴人は被控訴人Aに対し,債権譲渡通知をしないよう依頼していたことが認められるのであり,控訴人自ら上記②の集金委託に基づき上記③のとおり債権回収を行えば債権譲渡通知を行う必要がなく,しかも,売掛債権の譲渡の事実を取引先である債務者らに知られずに済むことから上記通知を行わないよう依頼したものと認められるのであり,上記通知を行っていないことは,本件取引1が売買契約と認められない特段の事情であるということはできない。

 また,控訴人は,本件取引1では,控訴人がかなり広範囲にわたる表明及び保証をすることとされ(甲6の8条等),集金委託契約を締結し(甲7等),控訴人に対して別途各種義務を課す(甲7の8条等)など,譲渡債権の回収不能の実質的な危険を控訴人が負担している旨主張する。しかし,この表明及び保証の内容は,証拠(甲6,14から23の各1)によれば,債権の実在性,債権の売主による債務不履行及び不完全履行がないことなどであり,債務者の無資力ないし任意の不払いの危険を控訴人に負わせるものではなく,その意味での危険の負担は,被控訴人Aが負っていることが認められる。また,証拠(甲7,14から23の各2)によれば,控訴人は,集金委託契約上も,集金の遂行ができない場合の状況報告等の義務を負うが,これらの義務を根拠に控訴人が上記の危険の負担を負うということもできない。したがって,上記の表明及び保証や集金委託契約上の義務は
,本件取引1が売買と認められない特段の事情であるということはできない。
 そして,ほかに本件取引1が,上記各契約書の内容にもかかわらず,売買契約とは認められない特段の事情を認めるに足る証拠はない。」

(3) 原判決9頁21行目から25行目までを次のとおり改める。
「しかし,上記2のとおり,本件取引1は債権の売買契約であるというほかなく,上記の各代金額は,上記のとおり被控訴人Aが債務者からの回収不能等の危険を負担し,回収不能等の場合に控訴人に対し償還を求める権利を有していることを認めるに足る証拠もないことからすると,上記代金額が等価交換の理念に大幅に違反した暴利と認めることはできない。

 契約日から債権の支払日までが短く,債務者に信用力があること,控訴人が資金繰りに窮し,被控訴人Aがそのことを認識していたなどの控訴人主張の各事情は,いずれも,本件取引1が債権の売買契約であることを前提とするとき,暴利行為として公序良俗に反することの根拠となるということはできない。」

(4) 原判決10頁23行目から11頁初行までを次のとおり改める。
「上記①のとおり,控訴人と被控訴人B間で取り交わされた契約書では,売掛債権の売買契約であると定められていて,控訴人に支払われる金額がその代金額の一部とされているから,特段の事情のない限り,控訴人と被控訴人B間の契約は,契約書のとおり,売買契約であって,控訴人が主張する金銭消費貸借契約とは認められない。

 そして,上記④のとおり,売掛債権の存在,内容の確認と,債務者らの信用調査も行われていることや,上記⑤のとおり,売掛債権の債務者に対する債権譲渡通知も作成されていることは,控訴人と被控訴人Bとの契約が売買契約であることを裏付けているということができる。

 これに対し,控訴人は,被控訴人Bが債権譲渡通知書を受領しているにもかかわらず債務者に通知していないのは,実際には債権の売買を行っていないからである旨主張する。しかし,上記⑥のとおり控訴人は被控訴人Bに対し,債権譲渡通知をしないよう希望していたことが認められるのであり,控訴人自ら契約書(甲8)の8条(代理受領業務)に基づき前記③のとおり債権回収行為を行えば債権譲渡通知を行う必要がなく,しかも,売掛債権の譲渡の事実を取引先である債務者らに知られずに済むことから上記通知を行わないよう希望したものと認められるのであり,上記通知を行っていないことは,本件取引2が売買契約と認められない特段の事情であるということはできない。

 また,控訴人は,上記契約書上,債務者が支払拒絶をし得る事由が存在しないことなどを表明し保証していると認めることができるが(甲8の2条G等),この表明及び保証の内容は,債務者の無資力ないし任意の不払いの危険を控訴人に負わせるものではなく,その意味での危険の負担は,被控訴人Bが負っていることが認められる。したがって,上記の表明及び保証は,本件取引2が売買と認められない特段の事情であるということはできない。
 そして,ほかに本件取引2が,上記各契約書の内容にもかかわらず,売買契約とは認められない特段の事情を認めるに足る証拠はない。」

(5) 原判決11頁13行目から17行目を次のとおり改める。
「しかし,上記2のとおり,本件取引2は債権の売買契約であるというほかなく,上記の代金額は,上記のとおり被控訴人Bが債務者からの回収不能等の危険を負担し,回収不能等の場合に控訴人に対し償還を求める権利を有していることを認めるに足る証拠もないことからすると,上記代金額が等価交換の理念に大幅に違反した暴利と認めることはできない。

 契約日から債権の支払日までが短く,債務者に信用力があること,控訴人が資金繰りに窮し,被控訴人Bがそのことを認識していたなどの控訴人主張の各事情は,いずれも,本件取引2が債権の売買契約であることを前提とするとき,暴利行為として公序良俗に反することの根拠となるということはできない。」

(6) 原判決12頁3行目の「また,」の次に「本件各取引は,債権譲渡通知が留保され,控訴人は被控訴人らとの間で代理受領の合意がされているため,債務者は控訴人に対して支払えばよいのであるから,債権譲渡の無効を主張する必要性はなく,」を加える。

3 以上のとおり,原判決は相当であって,本件控訴はいずれも理由がないから,これを棄却することとして,主文のとおり判決する。
 東京高等裁判所第19民事部
 (裁判長裁判官 都築政則 裁判官 石原寿記 裁判官 野本淑子)
以上:4,585文字

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