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中途解約条項がない定期借地契約を中途解除できるか-参考判例紹介1

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平成26年12月11日(木):初稿
○「中途解約条項がない定期借地契約を中途解除できるか」を続けます。
期間50年の定期借地契約を20年経過した時点で、事情変更を理由に解除した場合、違約金として残り30年分の賃料相当額の支払義務があるかについて検討するのに参考判例がありましたので2回に分けて紹介します。平成19年5月29東京地裁判決(ウエストロー・ジャパン、LLI/DB判例秘書)です。

○参考部分は、契約期間5年で、中途解約の場合、契約残存期間の賃料合計額に相当する金員を違約金として直ちに支払うとの約定があり、1ヶ月60万円の賃料の契約残存期間21ヶ月分1260万円の請求に対する判断を示した部分です。


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主 文
1 被告は,原告に対し,1751万4023円及びこれに対する平成17年2月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを2分し,その1を原告の負担とし,その余を被告の負担とする。
4 この判決は第1項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

 被告は,原告に対し,3193万4160円及びこれに対する平成17年2月25日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,診療所施設を所有する原告が,その診療所を歯科医院として賃借した被告に対し,未払賃料等を請求する事案である。
1 前提となる事実
(1) 原告は,別紙物件目録記載の建物(以下「本件診療所」という。)を所有し,同診療所において,「A歯科医院」を開業していた歯科医師であった。
(2) 被告は,医科,歯科に関する機械,材料の輸入及び販売,医療経営に関する総合コンサルタント業等を目的とする株式会社である。
(3) 原告は,刑事事件を起こし,歯科医院の経営が困難となったため,B弁護士(以下「B弁護士」という。)を介して,歯科医院の経営者を探していた。そして,平成13年11月14日,原告と被告との間で,歯科医院定期建物賃貸借契約書を交わして,本件診療所を,同月1日から平成18年10月31日までの5年間,原告が被告に対して賃貸する旨の賃貸借契約を締結した(以下「本件賃貸借契約」という。)。

2 原告の主張
(1) 本件賃貸借契約においては,月額賃料は60万円とされていた。また,賃料不払等により本件賃貸借契約が解除された場合には,被告は,原告に対し,契約残存期間の賃料合計額に相当する金員を違約金として直ちに支払うこと,被告は,本件診療所の電気,ガス,水道等の料金,電話料金,レセプトコンピューターのリース料,警備補償料,本件診療所所在地以外の看板賃借料を支払うことの特約があった。また,賃借人である被告において,「A歯科医院」のステンレス製看板板文字部品材料を無償で保管するものとされていた。

(2) しかしながら,被告の賃料滞納は常態化し,平成17年1月末の時点において,1614万円に達していた。そこで,原告は,被告に対し,同年2月22日,賃料不払を理由として本件賃貸借契約を解除する旨の通知をし,同通知は,同月24日,被告に到達した。

(3) 被告は,レセプトコンピューターのリース料のうち115万4160円,警備会社への補償金54万円を支払っていない。また,被告は,「A歯科医院」という看板を保管していたところ,それを破棄又は紛失し,その返還を不能にして,150万円相当の損害を与えた。

(4) よって,本件賃貸借契約等に基づき,未払賃料1614万円,違約金1260万円,リース料115万4160円,補償金54万円及び損害賠償金150万円の合計3193万4160円及び賃貸借契約終了後の平成17年2月25日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める。

3 被告の主張
(1) 被告は,原告の代理人であるB弁護士から歯科医師を紹介して欲しい旨の相談を受け,被告が経営母体となって,原告から診療場施設を一括して賃借した上,被告が医師等のスタッフを雇用して歯科医院を経営することを提案した。その結果,平成13年11月14日,原告と被告との間で,本件賃貸借契約が締結されたが,賃料については,契約書上は,月額50万円と60万円のものがあり,前者は銀行用,後者は当事者用という説明があり,賃料の支払時期は平成14年3月末から開始されることとされていた。

(2) その後,医師の確保が難航し,平成14年12月ころ,被告は,B弁護士に対し,賃料を50万円とすることを確認するとともに,賃料を開業開始時期に合わせて平成15年3月からとすることを求めたが,B弁護士からも賃料支払時期については金融機関がこれに応じる見通しであることを伝えられ,その旨の合意が成立した。

(3) 本件賃貸借契約には,賃借人の債務不履行による解除等の場合,賃貸借契約の残存期間の賃料合計額に相当する金員を違約金として支払う旨の記載があるが,賃借人に一方的に不利益を課すものであり,公序良俗に反し,無効である。

(4) 原告は,平成17年2月ころ,被告が歯科医院を経営するために所有していた株式会社第四銀行(以下「第四銀行」という。)のE歯科クリニックの預金通帳及び預金を,預金口座の名義人であるC医師をして,紛失届を提出させるという欺罔行為により第四銀行の担当職員を錯誤に陥らせ,新たな通帳を再発行させるという手段によって詐取したものであり,これは被告に対する不法行為に当たる。
 原告は,被告のこのような不法行為によって,次の損害を被った。
ア 平成16年12月及び平成17年1月の診療報酬 442万6394円
イ 平成17年2月から平成18年10月までの診療報酬の得べかりし利益 平均診療報酬額205万6886円の21か月分である4319万4606円
ウ 歯科医院の経営権 1000万円
 被告は,第5回口頭弁論期日(平成18年7月25日)において,上記損害賠償請求権を自働債権として,原告が請求する賃料債権と対当額で相殺する旨の意思表示をした。

4 争点
(1) 本件賃貸借契約の月額賃料は50万円か,60万円か。その支払開始時期は何時からか。
(2) 本件賃貸借契約の違約金の特約は公序良俗に反するものかどうか。
(3) 原告の行為が不法行為になるか。


以上:2,623文字

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