平成26年10月 9日(木):初稿 |
○平成26年8月26日、「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」が決定したとのことで、法務省HPに「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案(PDF)」が公表されています。法務省は、平成27年2月の法制審答申を経て、通常国会にこの民法改正案を提出する方針とのことです。改正案PDFファイルを開くと、A4版で72頁もあり、全部読みこなすのは相当骨が折れそうです。 ○週刊ダイヤモンド2014年10月11日号で民法大改正特集が組まれており、先日、購入しました。以下、その備忘録です。 約200項目の改正の内、重要四大項目は、1.法定利率、2.個人保証、3.賃貸借契約敷金、4.消滅時効 ○法定利率が現行5%から3%に引き下げ変動制へ 現行民法 第404条(法定利率) 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、年5分とする。 第419条(金銭債務の特則) 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。 改正民法 民法第404条の規律を次のように改めるものとする。 (1) 利息を生ずべき債権について別段の意思表示がないときは、その利率は、当該利息が生じた最初の時点における法定利率による。 (2) 法定利率は、年3パーセントとする。 (3) (2)にかかわらず、法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年ごとに、3年を一期として(4)の規定により変更される。 ○個人保証に制限-但し、制限例外で骨抜き 現行民法 第446条(保証人の責任等) 保証人は、主たる債務者がその債務を履行しないときに、その履行をする責任を負う。 2 保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない。 3 保証契約がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。)によってされたときは、その保証契約は、書面によってされたものとみなして、前項の規定を適用する。 改正民法 (1) 個人保証の制限 個人保証の制限について、次のような規律を設けるものとする。 ア 保証人が法人である場合を除き、事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約又は主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約は、その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない。 (中略) エ 次に掲げる者が保証人である保証契約については、アからウまでの規定は、適用しない。 (ア) 主たる債務者が法人その他の団体である場合のその理事、取締役、執行役又はこれらに準ずる者 (イ) 主たる債務者が法人である場合のその総社員又は総株主の議決権の過半数を有する者 (ウ) 主たる債務者が個人である場合の主たる債務者と共同して事業を行う者又は主たる債務者が行う事業に現に従事している主たる債務者の配偶者 ○賃貸借契約敷金-明確に定義して、経年劣化原状回復義務無しを規定 現行民法 第316条 賃貸人は、敷金を受け取っている場合には、その敷金で弁済を受けない債権の部分についてのみ先取特権を有する。 第619条(賃貸借の更新の推定等) 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。 2 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、敷金については、この限りでない。 改正民法 7 敷金 敷金について、次のような規律を設けるものとする。 (1) 賃貸人は、敷金(いかなる名義をもってするかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この7において同じ。)を受け取っている場合において、賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき、又は賃借人が適法に賃借権を譲渡したときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭債務の額を控除した残額を返還しなければならない。 (2) 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭債務を履行しないときは、敷金を当該債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金を当該債務の弁済に充てることを請求することができない。 13 賃貸借終了後の収去義務及び原状回復義務(民法第616条・第598条関係) 民法第616条(同法第598条の準用)の規律を次のように改めるものとする。 (中略) (3) 賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この(3)において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。 ○消滅時効-原則5年に統一 現行民法 第166条(消滅時効の進行等) 消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する。 第167条(債権等の消滅時効) 債権は、10年間行使しないときは、消滅する。 第170・171条(3年の短期消滅時効)、第172・173条(2年の短期消滅時効)、第174条(1年の短期消滅時効) 改正民法 1 債権の消滅時効における原則的な時効期間と起算点 民法第166条第1項及び第167条第1項の債権に関する規律を次のように改めるものとする。 債権は、次に掲げる場合のいずれかに該当するときは、時効によって消滅する。 (1) 債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき。 (2) 権利を行使することができる時から10年間行使しないとき。 (注)この改正に伴い、商法第522条を削除するものとする。 (中略) 3 職業別の短期消滅時効等の廃止 民法第170条から第174条までを削除するものとする。 以上:2,629文字
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