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迷惑行為を理由とする賃貸借解除が認められた裁判例判断部分紹介2

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平成26年 9月 6日(土):初稿
○「迷惑行為を理由とする賃貸借解除が認められた裁判例判断部分紹介1」の続きです。


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(5) 以上の経緯により、近隣住民等は、控訴人による度重なる迷惑行為に耐え難くなり、D警察署、C区役所に対し、上記(4)の控訴人による迷惑行為を記載した上、「控訴人から嫌がらせとも思える理不尽で非常識な言いがかりを15年以上も受けている。控訴人に対して話合いを申し出ても控訴人は応じない。大家や不動産管理業者にお願いしても個人的なことで話が進まない。個人の力では到底解決できる問題ではないと判断し、町会にも協力を仰ぎ、近隣住民で立ち上がり、この度行政に対し要望を出すことにした。」旨記載し、本件建物の近隣住民13名を含む合計16名の町会所属の住民の氏名を明記し押印し、その代表者1名と町会長を作成名義人とする同年5月16日付けの本件要望書(乙5)を提出し、被控訴人にも交付した。

 これを受け、被控訴人は、同年6月9日に公民館で近隣住民等との会合を開き、D警察署交通安全課の職員が出席し、平成24年における控訴人からと考えられる匿名の110番通報が合計8件あったことが報告され、近隣住民等からの通報があれば対応する等の話がされた。被控訴人の社員3名は、この会合の後に本件建物を訪問したところ、控訴人は大音量で音楽を流していたため、注意するために控訴人を呼び出したが、控訴人は応答せず、その後も同様の状況が続いた。

(6) 控訴人は、同年5月31日、被控訴人作成の上記(2)の平成21年7月16日付け通知書の内容が脅迫的であること等を理由として被控訴人に対して慰謝料50万円の支払等を求める本件本訴を提起した(東京地方裁判所平成24年(ワ)第15636号事件、同年11月30日に控訴人不出頭による取下擬制により終了。)。被控訴人は、同事件の同年9月21日の口頭弁論期日に本件解除を行い、同年10月17日に本件反訴を提起した。

3 控訴人本人は、上記2の認定に反し、控訴人の方が近隣住民等から受忍限度を超える子供の遊び声や飼い犬の鳴き声、室外機の音等の騒音を受けて迷惑を被っており、区役所もその騒音を測定しているなどと供述記載(甲3)している。

 しかし、その裏付けとなる証拠はなく、他方、近隣住民等が控訴人から受けた迷惑行為を具体的に指摘した本件要望書に16名の連名で押印の上で警察及び区役所に提出していること、本件建物の隣室の入居者が控訴人による迷惑行為に対する苦情を被控訴人に再三申し入れた後に実際に隣室の賃貸借契約を解約して退去するに至っていることは優に認定することができる(控訴人本人も本件要望書がC区役所に提出されていることを控訴理由書提出後である平成25年4月4日に確認したと供述記載(甲3)している。)のであって、控訴人本人の上記の供述記載は、これらの事情及び被控訴人が日常的に不動産賃貸・管理業務の遂行のために作成しているクレーム処理登録、控訴人本人作成・投函に係る書面等を含む前掲各証拠に照らし、採用することができず、他に上記2の認定を左右するに足りる的確な証拠はない。

4 本件賃貸借契約における信頼関係の破壊の有無について
(1) 上記2の認定事実によると、控訴人は、近隣住民等に対して迷惑行為を行い、これについて被控訴人から再三口頭で注意を受け、更にこれが特約違反となり解除事由となると書面によって指摘されても、近隣住民等に対する迷惑行為を繰り返しており、また、これにより生じた近隣住民等との間のトラブルに対して近隣住民等からの申出による話合いもしていない。これらのことに加え、控訴人の度重なる迷惑行為によって近隣住民等には耐え難い深刻な事態となり、近隣住民等が警察及び区役所に対する本件要望書に連名で押印の上で提出するに至っていること、さらに、控訴人は本件建物の隣室の入居者に対しても迷惑行為を行ったばかりか粗野な行動をとって不快の感を抱かせ、ひいてはこれに耐えかねた同入居者が被控訴人との間の賃貸借契約を解約して退去するに至り、賃貸人である被控訴人に対して同室の長期間の賃料の受領不能及び同室の新入居者を決めるための同室の賃料の減額という経済的損失まで与えていること、控訴人は本件訴訟の係属中にされた本件解除の後においても同室に入居した者に対して同様の迷惑行為を行い、同入居者から賃貸人である被控訴人に対して苦情の申入れがされている。

(2) 以上によれば、控訴人が当審において主張する、控訴人が15年ほど前に統合失調症の診断を受けたことがあり、それ以後は睡眠導入剤の服用が欠かせない生活をしており、就労する機会がなく、本件建物の入居当時から現在まで一貫して生活保護を受け、現在も本件建物の賃料相当額に係る住宅扶助を受けて被控訴人に対して支払っていること(証拠・略)等の事情を斟酌しても、本件賃貸借契約の基礎となる賃貸人である被控訴人と賃借人である控訴人との間の信頼関係は、本件特約が定める禁止行為に該当すると認められ、本件特約に違反する控訴人による上記説示の近隣住民等に対する度重なる迷惑行為によって著しく損なわれ、完全に破壊されており、その回復の見込みはないといわざるを得ない。

 したがって、本件解除は有効であり、これにより本件賃貸借契約は終了していることが肯定される。控訴人が当審において他に縷々主張する点を斟酌しても、上記の認定判断を左右するに足りず、他に上記の認定判断を覆すに足りる的確な証拠はない。
 5 よって、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとして、主文のとおり判決する。
    東京高等裁判所第9民事部
        裁判長裁判官  下田文男
           裁判官  橋本英史
           裁判官  小野寺真也
以上:2,432文字

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