平成26年 8月27日(水):初稿 |
○「借地借家法第11条地代等増減請求権に関する重要最高裁判決全文紹介1」の続きです。 先ず借地借家法第11条条文内容です。 第11条(地代等増減請求権) 地代又は土地の借賃(以下この条及び次条において「地代等」という。)が、土地に対する租税その他の公課の増減により、土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって地代等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間地代等を増額しない旨の特約がある場合には、その定めに従う。 2 地代等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払うことをもって足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるときは、その不足額に年1割の割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。 3 地代等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた地代等の額を超えるときは、その超過額に年1割の割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。 この条文を整理します。 1項「将来に向かって地代等の額の増減を請求」 「地代又は土地の借賃」ですが、正確には地上権設定契約の対価が「地代」、土地賃貸借契約の対価が「土地の借賃」で、両者併せて「地代等」と表現されています。 「地代等の額の増減請求」の要件は3つ ①土地に対する租税その他の公課の増減(税金増減) ②土地の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動(経済事情変動-土地価格変動は例示) ③近傍類似の土地の地代等に比較して不相当となったとき(他の地代例との比較) 「一定の期間地代等を増額しない旨の特約」は有効 但し、特約期間が長期に渡り、その間に経済事情の激変が生じたときは特約は無効となる(昭和39年11月28日横浜地裁判決) 「一定期間地代等を減額しない旨の特約」は無効(平成16年6月29日最高裁判決) 2項「地代等の増額」 地代等債権者から地代等増額請求を受けても地代等支払義務者は、「増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等を支払」で足りる、従前の額を支払えば債務不履行にならない。 但し、「その裁判が確定した場合において、既に支払った額に不足があるとき」は、増額を正当とする判決で示された賃料増額時期時からの不足分に年1割の利息を付して支払義務を負う。 3項「地代等の減額」 地代等支払義務者から地代等減額請求を受けても地代等債権者は、「減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の地代等の支払を請求」できる。債権者は従前の額を請求でき、これを支払わない義務者は債務不履行となる。 但し、従前額請求に対し、地代等支払義務者が自己が主張する減額地代等しか支払わない場合、債務不履行による解除は、事実上「裁判確定」まではできないと思われる。実務的には、減額請求訴訟と解除請求訴訟が併合審理されて双方齟齬が生じないよう配慮した判決になると思われます。 以上:1,392文字
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