仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 >    

預金口座帰属者についての平成15年2月21日最高裁判決説明1

貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。
平成26年 2月25日(火):初稿
○「預金口座帰属者についての平成15年2月21日最高裁判決全文紹介1、2」で紹介した平成15年2月21日最高裁判決(判タ1117号211頁、判時1816号47頁)についての私なりの説明です。
先ず事案概要です。
・X保険会社の損害保険代理店A社は、Y信用組合に保険契約者から収受した保険料のみを保管するための専用普通預金口座を「X社代理店A社」名義で開設
・A社は、保険契約者から収受した保険料をそのまま本件預金口座に入金し、毎月X社から送付されてくる請求書に従って、翌月に預金の払戻しを受け、代理店手数料を控除した残額をX社に送金
・本件預金口座の預金通帳および届出印は、A社が保管し、人出金事務は、A社のみが行っていた
・A社が2度目の不渡り手形を出すことが確実となったことから、A社は通帳と届出印をX社に交付
・Y信組は、A社に対する貸付債権と本件預金債権を対当額で相殺
・X社がY信組に対して「X社代理店A社」名義預金の払戻しを請求
・1、2審とも、X社の請求を認容


○控訴審は、本件預金の出損者が預金債権の帰属主体であるとしたうえ、A社が収受した保険料の所有権はX社にあるか、または、かりにそうでないとしても、本件預金の出損者はX社であるから、本件預金債権はX社に帰属すると判断していました。

○保険募集の取締に関する法律第12条(損害保険代理店の保険料保管方法)で、「損害保険代理店は、委託保険会社のために収受した保険料を保管する場合においては、自己の財産と明確に区分しなければならない。」と規定されこれを受けた同法施行規則等によって損害保険代理店が本件のような専用預金口座を開設して、保険契約者から収受した保険料を保険会社に送金するまでの間保管するのは、従来から一般的に行われている保険実務です。なお、保険募集の取締に関する法律は、平成7年に規制緩和を目的として廃止されましたが、その後も大蔵省の通達により、実務に変更はありませんでした。

○このように「X社代理店A社」名義で金融機関Yに預金して、A社が倒産した場合、この預金は誰のものかが深刻な争いになります。A社倒産の場合、通常、YはA社に貸付債権を有しており、この貸付債権と預金を相殺します。そこでX社がYに対し、その預金は自分のものだから返せと請求してもYは相殺を理由に拒否します。また、Yに貸付金債権がなく、預金は相殺されず残った場合、A社の債権者とX社が、その預金の帰属を巡って争いになります。

○この「X社代理店A社」名義口座預金がいずれに帰属するかの問題について、下級審裁判例および学説は、
①保険会社X社に帰属するとの説
東京地判昭和63・3・29判時1306号121頁、判タ685号248頁、金法1220号30頁、東京地判昭和63・7・27金法1220号34頁、山下友信「損害保険代理店の保険料保管専用預金口座と預金債権の帰属」ジュリ929号46頁、石田満「保険代理店専用口座預金とその帰属」金法1229号9頁、黒沼悦郎「保険料保管専用口座の帰属主体」鴻常夫=竹内昭夫他編『損害保険判例百選〔第2版〕』86頁、遠山聡「保険料保管専用口座と預金債権の帰属主体」ジュリ1150号119頁、宗田親彦「損害保険代理店専用口座の預金債務との相殺」Credit&Law141号58頁
②保険代理店A社に帰属するとの説
千葉地判平成8・3・26金法1456号44頁、山田二郎「損害保険代理店が収受した保険料を専用預金口座に保管中に保険代理店が破産宣告を受けた場合、右預金は保険会社に帰属するとされた事例」金法1232号11頁、伊藤眞「判批」判時1330号223頁〔判評372号61〕、弥永真生「取戻権の対象―代理店が収受した保険料が専用口座に保管された場合の預金債権」ジュリ995号107頁、岩崎憲次「損害保険代理店が集金した保険料の保管のためその名で開設した預金口座につき、代理店を預金者と認めた事例」リマークス15号122頁、雨宮啓「損保代理店専用口座預金者の認定について」銀法21・549号29頁、吉田光碩「代理店預金の帰属と金融実務上の留意点」金法1555号43頁、森川隆「損害保険代理店が保険料保管のために開設した専用口座の預金債権が保険会社に帰属するとされた事例」早法75巻1号322頁
が対立していました。

○これに対し平成15年2月21日最高裁判決判タ1117号211頁、判時1816号47頁)は、本件事実関係の下においては、本件預金債権はX社にではなくA社に帰属するとして、原判決を破棄し、X社の請求を棄却する自判をしました。

以上:1,883文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック

(注)このフォームはホームページ感想用です。
貸借売買無料相談ご希望の方は、「貸借売買相談フォーム」に記入してお申込み下さい。


 


旧TOPホーム > 貸借売買等 > 金銭貸借 > 預金口座帰属者についての平成15年2月21日最高裁判決説明1