平成25年 9月10日(火):初稿 |
○賃貸借や売買等の契約において、その契約約款或いは法律の規定により、解除権を定められているときは、相手方に対する解除の意思表示によって、解除することが出来、また、一方に債務不履行がある場合、相当期間を定めて履行催告をして、その期間内に履行がないときは、解除することが出来ます。民法の以下の規定によります。 第540条(解除権の行使) 契約又は法律の規定により当事者の一方が解除権を有するときは、その解除は、相手方に対する意思表示によってする。2 前項の意思表示は、撤回することができない。 第541条(履行遅滞等による解除権) 当事者の一方がその債務を履行しない場合において、相手方が相当の期間を定めてその履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は、契約の解除をすることができる。 ○この契約解除権は、解除権者が解除権発生の事実を知ると否とを問わず、これを行使し得る時から時効の進行を始めると解釈されている判例があり、この考えが通説となっています。平成25年現在からは、100年近く前の大正6年11月14日大審院判例で、その判決要旨は以下の通りです。 一 解除権が時効に因り消滅するは主として相手方を長年月間権利不行使の状態に置かざる公益上の理由に基づくものなれば法律の規定に依る解除権なると否とに由りその消滅時効に差別を設くべきものに非ず(判示第一点) 一 一定の日時を指定し其日時に於いて一定の銘柄限月株式単価にて売買すべき委託契約は当事者の意思表示に依り其一定の日時に履行を為すに非ざれば契約を為したる目的を達すること能わざるものなるを以て注文の全部履行なく各其時期を経過したるときは委託者は直ちに契約を解除することを得べく其解除権は之を行使得る時より起算し商法第285条の5年の時効に因りて消滅すべきものとす(同上) ○大正時代の判例ですから文語体となっており、判決要旨で結論しか記述していませんので、ちと判りづらい点はあります。契約解除権も消滅時効にかかることは争いなく認められています。問題は、この解除権の消滅時効の起算点ですが、この大審院判例の要旨だけでは、法律の規定に依る解除権であろうと、当事者の約定による解除権であろうと差別を設けることは出来ないとするのは明確です。解除権も消滅時効にかかるのは、「相手方を長年月間権利不行使の状態に置かざる公益上の理由」によると説明していますが、この記述から、「契約解除権は、解除権者が解除権発生の事実を知ると否とを問わず、これを行使し得る時から時効の進行を始める」と解釈できるかどうかは疑問も感じます。 ○しかし通説は、解除される側が、いつ解除されるか判らない中途半端な状態に置かないための「公益上の理由」との文言から、解除権者が解除権発生の事実を知っているかどうかを問わず、兎に角、解除権発生時期から一定期間経過したら、消滅時効を認めるべきと解釈したと思われます。 ○この契約解除権の消滅時効が争われる事件として、無断転貸が為された場合の法律が定めた解除権消滅時効起算点の問題があります。民法の次の規定で発生する解除権で多数の判例がありますので、別コンテンツで説明します。 第612条(賃借権の譲渡及び転貸の制限) 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。 以上:1,434文字
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