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投資目的での競売物件入札の際の要注意判例紹介1

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平成25年 3月20日(水):初稿
○競売物件は、通常市価の半額程度まで下がることが多い格安物件です。そこで資金の余裕のある方には、この低金利時代で預金しても殆ど金利がつかないため、例えば賃貸用アパートなどの競売物件に入札を考える方も居ます。銀行に預金するよりは、アパートを購入して賃料を得る方が、資金の投資効率が遙かに高いからです。そこで時々、弁護士にこの競売物件の入札を検討していますが、問題はないでしょうかとの相談を受けることがあります。この賃貸用アパートなどの競売入札について、注意を要する最高裁判例を紹介します。平成10年3月24日最高裁判決(民集52巻2号399頁、裁時1216号1頁、判タ973号143頁、判時1639号45頁)です。

○事案は、次の通りです。
・Xは本件建物を所有していたAに対する債務名義に基づいて、本件建物の賃借人4名を第三債務者として、Aが賃借人4名に対して有する賃料債権について平成3年3月に債権差押命令を取得して、その正本が各第三債務者に送達された
・Aに対する債権を有していたYが、平成4年12月ごろ、Aから本件建物の代物弁済を受け、平成5年1月に、本件建物について、真正な登記名義の回復を原因とするAからYへの所有権移転登記が経由された
・Yが本件建物の賃借人らに対して賃料をYに支払うよう求めたところ、賃借人らは、平成5年2月以降、債権者不確知(民法494条)と差押え(民事執行法156条一項)の両者を原因とする賃料の供託をした(混合供託)
・Xは、Yに対し、この供託金の還付請求権を有することの確認を求める本件訴訟を提起した


○原審は、賃料債権の差押手続中に賃貸人たる地位の承継があっても、賃料債権の差押えとの関係ではこの承継は無効であって、賃料債権は依然として従前の賃貸人に帰属しているものとして、この差押えの効力が及ぶものと解するのが相当であるから、本件の債権差押命令の効力は、Yが賃貸人の地位を承継した以後の賃料債権にも及ぶと解すべきであるとして、Xの請求を認容し、Yは、原判決には法令の解釈適用を誤った違法があると主張して上告しました。

○これに対する判決が平成10年3月24日最高裁判決前文を以下の通り紹介します。この事案に対する私なりの解説は、別コンテンツで紹介します。

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主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする

理由
 上告人の上告理由について
 自己の所有建物を他に賃貸している者が第三者に右建物を譲渡した場合には、特段の事情のない限り、賃貸人の地位もこれに伴って右第三者に移転するが(最高裁昭和35年(オ)第596号同39年8月28日第二小法廷判決・民集18巻七号1354頁参照)、建物所有者の債権者が賃料債権を差し押さえ、その効力が発生した後に、右所有者が建物を他に譲渡し賃貸人の地位が譲受人に移転した場合には、右譲受人は、建物の賃料債権を取得したことを差押債権者に対抗することができないと解すべきである。けだし、建物の所有者を債務者とする賃料債権の差押えにより右所有者の建物自体の処分は妨げられないけれども、右差押えの効力は、差押債権者の債権及び執行費用の額を限度として、建物所有者が将来収受すべき賃料に及んでいるから(民事執行法151条)、右建物を譲渡する行為は、賃料債権の帰属の変更を伴う限りにおいて、将来における賃料債権の処分を禁止する差押えの効力に抵触するというべきだからである。

 これを本件について見ると、原審の適法に確定したところによれば、本件建物を所有していた矢野孝夫は、被上告人の申立てに係る本件建物の賃借人4名を第三債務者とする賃料債権の差押えの効力が発生した後に、本件建物を上告人に譲渡したというのであるから、上告人は、差押債権者である被上告人に対しては、本件建物の賃料債権を取得したことを対抗することができないものというべきである。以上と同旨をいう原審の判断は、正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

 よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官千種秀夫 裁判官園部逸夫 裁判官尾崎行信 裁判官元原利文 裁判官金谷利廣)
以上:1,763文字

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