平成21年12月 2日(水):初稿 |
○「賃料未納賃借人の簡単な追い出し方法2」で、家賃の滞納があったときは建物に立ち入ることができると定めた契約条項に基づいて賃借人に無断で建物に侵入し鍵を取り替えた行為が違法であるとして、賃貸管理業者の損害賠償責任が認められた事例(札幌地方裁判所平成11年12月24日判決・判例時報1725号160頁)を紹介していました。 ○同様にマンション一室賃貸人が、賃借人の賃料支払遅滞を理由にマンション玄関の鍵を交換して賃借人の立入を禁止した行為について、賃借人の居住権を侵害するとして金65万円もの慰謝料等支払を命じられた判決が出されましたので紹介します(大阪簡裁平成21年5月22日判決、判例時報2053号70頁)。 ○事案概要は以下の通りです。 Xは平成20年2月Yからマンション一室を賃料月額4万5000円で賃借したが、同年7月から賃料を滞納したところ同年8月と10月に建物玄関の鍵を交換され建物に入ることが出来なくなったため、Yに対し居住権の侵害を理由に慰謝料・逸失利益等として約140万円の損害賠償請求。Yは、Xは賃料滞納常習者で信頼関係が著しく悪化しており、Xの連帯保証人からも部屋を閉めて欲しいと要望されたもので、不法行為にはならないと抗弁。 ○これに対する判決概要は以下の通りです。 ①賃貸マンション玄関鍵の交換行為は、居住者の平穏に生活する権利を侵害するもので不法行為に該当 ②鍵の交換、ロックアウトは間接的に賃料支払を促すことで自力救済の問題ではない ③保証人が鍵の交換を要請したとしても鍵交換行為の違法性判断には影響しない として、Yの不法行為責任を認め慰謝料・逸失利益等合計金65万円の支払を認容。 ○当事務所でも不動産賃貸業の顧問会社が3社あり、その他継続的に相談に訪れる不動産業者がいて、賃料不払を理由に鍵を交換しても良いかとの相談が良くあります。そこで、「賃料未納賃借人の簡単な追い出し方法1」、「賃料未納賃借人の簡単な追い出し方法2」を記載して,解説しており、原則、ダメですとお答えしています。 ○ところが、本件のYは、管理物件460室もある不動産業者で、社員は鍵交換の技術を有し、賃料滞納対処方法として日常的に鍵交換を実施し賃料支払があれば元に戻す行為を繰り返しており、賃料滞納に対し明渡訴訟を提起したこともなく、鍵交換の違法性を全く認識していなかったようです。おそらく社長は、何で訴えられるのかと不思議に思ったことでしょう。世の中には色々な会社があるものです(^^)。 ○鍵交換による締め出し期間にも争いがありましたが、合計34日間と認定され,その間ホテル等宿泊費用を逸失利益として5万1000円が認められ、更に慰謝料が何と50万円も認められました。この慰謝料は、Yが日常的に鍵交換という不法行為を繰り返していたことに対するきついお灸の意味がありました。しかしYは判決に納得できず控訴したようで、控訴審の判断が気になるところです。 以上:1,211文字
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