平成20年10月31日(金):初稿 |
○「呉服販売業者・従業員間売買の無効例1」の話を続けます。 A呉服店の従業員Bさんは、昭和16年生まれの年金生活者でしたが年金だけでは生活が出来ず平成14年から平成17年までの3年間A呉服店に毎月16万円の給料でのパート従業員として勤務している間に27回にわたって総額1100万円もの着物類を購入させられ内26回はクレジットを利用し金利を含めた支払総額は1400万円に達し最終的な毎月のクレジット債務返済額は20万円を超えて居ました。 ○そこで従業員Bさんは消費者事件のパイオニアである大阪弁護士会の木村達也弁護士等に依頼して、A呉服店とニコスを初めとする各クレジット会社に対して以下の理由で損害賠償及び債務不存在確認の訴えを提起しました。 ①A呉服店は使用者という地位を利用し、従業員にノルマ達成を強要し,従業員制服としての着物着用を義務づけるなどして、不相当な金額で高齢で判断能力が低下していたBさんに結果的にBさんの生活を破綻させる程の不相当な量の着物類購入を強要したもので、これらの売買(本件売買)は公序良俗に違反して無効である ②本件売買は一連一体としてBさんに対する不法行為でありA呉服店は損害賠償責任を負う ③クレジット会社は加盟店であるA呉服店が違法な行為を行わないように注意する加盟店管理義務や過剰与信防止義務を負いこれを怠ったのでA呉服店を連帯して損害賠償義務を負い、クレジット契約も公序良俗違反で無効なのでクレジット残債務は存在しない ④仮にクレジット契約は有効でも、本件売買契約が公序良俗違反で無効なので割賦販売法30条の4(抗弁の接続)でクレジット債務支払拒絶を対抗できる ○これに対しA呉服店はノルマ達成を強要したことはなく、制服としての着物着用を義務づけたが殊更高価な商品の購入を強制したことはなくBさんの自由意思で購入したものあるとして違法性を争い、各クレジット会社も違法性を争い且つ事業者が従業員に対し行う割賦販売については30条の4は適用除外になるとの割賦販売法30条の6、8条5号により抗弁は接続されないと主張して争いました。 ○これに対し平成20年1月30日大阪地裁判決(判時2013号94頁)は次のように判示しました。 ①本件売買契約はこれに伴うクレジット契約が極めて過大でBさんの資力からは到底支払不能でA呉服店の行為は事実上強要したものでBさんの負う債務の程度によって公序良俗違反となるとして、残債務額・返済月額の一定基準点以後の契約は公序良俗違反として無効とし ②その公序良俗違反部分については不法行為責任を認め ③クレジット契約については公序良俗違反による無効は認められないが、割賦販売法30条の6、8条5号による30条の4は適用除外は妥当しないとして、Bさんが本件売買無効部分についてクレジット債務履行を拒むことが出来るとしました。 ○この売買無効を理由にクレジット債務の履行を拒むことが出来ることを、 「支払債務の履行の請求を受けたときは,これを拒絶することができる地位にあることを確認する。」と表現したのです。 以上:1,265文字
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