平成20年 7月24日(木):初稿 |
○Aさんは20年前に自己所有の甲地(150坪)をB株式会社に建物所有目的で月額金15万円の約定で賃貸し、B社は、B社は、C銀行から金3000万円を借り受けて乙建物(50坪)を建て、乙建物で薬品等の販売業を営んできました。ところが、B社は3年前に多額の負債を抱えて倒産し、B社社長は夜逃げし、3年前から賃料不払状態が続いています。 ○Aさんは、甲地から何らの収益が上がらなくなったので、甲地を他に売却したいと考えていますが、老朽化した乙建物があるためなかなか買い手がつきません。乙建物にはB社のC銀行に対する借入金債務約2000万円の抵当権がついています。この借入金債務もB社倒産の3年前から不払状態が続いているのに、C銀行は土地には抵当権がなく競売にかけても乙建物のみでは売れる見込みがないため競売手続も取らず中途半端な状態が続いています。 ○そこでAさんは、B社相手に賃料不払いによる甲地の賃貸借解除をして、乙建物収去甲地明渡の訴えを提起したいと思っていますが、B社のC銀行に対する金2000万円の抵当権がついている建物を収去出来るのか心配しています。 ○本件ではB社が3年前に倒産し社長も夜逃げし3年間も賃料不払が続き更に今後賃料支払が解消される可能性は皆無ですから、AさんのB社に対する甲地賃貸借契約解除は問題なく認められます。問題は、乙建物の抵当権者C銀行との関係ですが、昭和56年10月30日東京地裁判決(判時1045号100頁)によると「借地上に借地人が所有する建物が存在し、これに抵当権が設定された場合、一般に、賃貸人が借地人の賃料不払を理由にして賃貸借契約を解除し、建物収去土地明渡を求めるには、賃貸人は借地人に対して催告すれば足り、建物の抵当権者に対し、事前に賃料の支払状況などについて何らかの連絡をしなければならないものではない」とされており、C銀行に断りなく解除も出来ます。 ○但し、昭和47年10月31日東京地裁判決(判時694号74頁)では建物収去土地明渡の強制執行に対して建物の抵当権者から提起された第三者異議の訴えが認容されています。この事案では抵当権者が借地権者の不払賃料を賃貸人に現実の支払提供をしたものを賃貸人が受領を拒否したとの経緯がありますので、用心のためAさんはC銀行に対しB社の未納賃料3年分をAさんに対し支払う意思があるかどうか確認しておいた方が良いでしょう。C銀行は乙建物に2000万円以上の価値がない限り支払するはずがありませんから。 ○その上でAさんはB社に対し公示送達の方法で土地賃貸借契約解除と乙建物収去甲地明渡の訴えを提起し、判決に基づき執行官によって乙建物解体による甲地の返還を実現できます。但し、乙建物解体費用等理屈上はB社に請求できますが、B社は支払不能状態であり、一切の費用はAさんが事実上負担しなければなりません。 以上:1,180文字
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