平成20年 7月25日(金):初稿 |
○日弁連の法曹増員ペースダウン緊急提言に対し、日経社説は、「弁護士が増えて、割の良い仕事が奪い合いになる懸念」が最大の理由、質を問題にするのは、競争激化を心配する増員反対派の本音を覆い隠す方便、等と批判し、「『司法サービスを国民が利用しやすい、身近なものにする』、『法の支配を社会の隅々にまで行き渡らせる』。この司法改革の目標を早く実現するのに、まず、在野の司法サービスの担い手である弁護士を早く大幅に増やす必要があることは自明だ。法曹増員のペースを落としてはならない。」と反論しています。 ○私が仙台弁護会に入会した昭和55年当時は仙台弁護士会会員数は、130名足らずだったように記憶していますが、28年経過した平成20年4月現在で284名と2倍以上に増加しています。日弁連全体での会員数も、日弁連会員数の推移によると昭和55年の1万1441人が平成20年2万5062人と2倍以上に増加しています。 ○私は昭和55年に弁護士稼業に入り、「これからの弁護士-三大特権喪失の時代に備えて」に記載したとおり、「弁護士業務はサービス業としてみる限りは実に恵まれていると思い続けてき」ました。それは弁護士には、①法律事務独占、②少人数での寡占、③統一料金と広告禁止の競争排除原理と言う三大特権が与えられていたからです。 ○しかしこの三大特権は事実上剥奪されつつありますが、最大の特権は②少人数での寡占即ち年間500人体制と思っていました。それが平成3年約600人に増加されて以来徐々に増加し、平成11年に1000人、平成16、17年各約1500人、そして平成18年には法科大学院卒業者の新司法試験合格者約1500名が誕生し、平成17年の現行試験合格者約1500人と平成18年の新司法試験合格者約1000人の合計約2500人が法曹資格を取得する平成19年はその就職先確保について2007年問題と危機意識を持たれていました。尚、平成19年は現行試験合格者が549人、新司法試験合格者が1851人で平成20年には約2400人の法曹資格者が誕生しました。 ○仙台弁護士会への毎年の新入会員の平均は平成18年以前は、平均数名止まりで10人を超したことはありませんでしたが、約2500人の新人法曹が誕生した平成19年には一気に19名の大量入会し更に平成20年には25名が入会し、仙台弁護士会会員数は284名に達し、平成21年には300名を超えると言われています。 ○最大の特権が②少人数での寡占と述べた理由は、これが維持される限り、特に③統一料金と広告禁止の競争排除原理がなくなっても、事実上競争なくして楽に商売できるからです。逆に言えば、②少人数での寡占が失われるといくら③統一料金と広告禁止の競争排除原理を謳っても事実上破られます。司法改革との美名で弁護士特権剥奪を目指す勢力には、②少人数での寡占体制排除即ち法曹増員は欠かせないテーマであり、いくら日弁連が「質の低下」を強調しても説得力は持たないでしょう。 以上:1,235文字
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