平成19年 9月 2日(日):初稿 |
○「過払い金についての2つの判例紹介」で、平成19年2月13日最高裁判決について、「同小法廷は『継続的な貸し付けを予定した基本契約がなくても、最初から2回目以降の融資が想定されていたような場合は、例外的に充当が認められる』との初判断を示した。同種訴訟で借り手に有利な影響を与える可能性が出てきた。」なんて言う毎日新聞の報道を紹介しました。 ○しかし、この判決が「同種訴訟で借り手に有利な影響を与える可能性」なんて全くありません。過払金請求側にとってはとんでもない判決です。過払金返還請求で良く問題になるのは、第1貸付で過払金が50万円発生し、その後、第2の貸付で100万円借りた場合、借りると同時に第1貸付過払金債権で100万円借入債務と相殺し第2貸付は残50万円からスタートできるかどうかです。 ○これについて現在の過払金返還請求実務では当然に相殺できることを前提に請求していますが、この平成19年2月13日最高裁判決が出たお陰でサラ金業者側が強気になって第1貸付過払金で第2貸付借入金債務を相殺できず、個別に計算すべきだと裁判でも主張するようになりました。 ○平成19年2月13日最高裁判決原審の平成18年3月31日広島高裁松江支部判決では、第1貸付で過払金が発生した後に第2貸付の債務が発生した場合、「借主は、第2の貸付に係わる債務に第1の貸付に係わる過払金を充当する意思を有していると推認するのが相当である」と極めて妥当な判断をしていたものが、最高裁は「特段の事情がない限り、第1の貸付に係わる過払金は、第1の貸付に係る債務の各弁済が第2の貸付の前になされたものであるか否かにかかわらず、第2の貸付に係る債務に充当されない」として広島高裁判決を破棄差し戻ししたからです。 ○問題は最高裁の言う「特段の事情」ですが、「基本契約が存在し、各貸付が一体であること」、「当事者間に一体の貸付として充当計算するという特約が存在すること」が挙げられています。しかし、サラ金とその利用者の「当事者間に一体の貸付として充当計算するという特約」なんてあり得ません。 ○すると「基本契約」の存在が重要になりますが、結構、基本契約が存在しない例が多いもので、サラ金と消費者の取引では、基本契約が存在しようがしまいが、連続取引がなされることが多く、形式的な「基本契約」の有無で、充当計算方法が異なり請求額が大幅に差が出てくるのは、不公平と思っております。そこで2月13日最高裁判決に基づくサラ金の主張には、実質基本契約が存在し、実質一体の取引であることを地道に主張するしかありません。 ○ところが、平成19年6月7日及び同年7月19日最高裁判決で、この2月13日判決が相当修正されており、後日報告します。 以上:1,131文字
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