平成19年 1月16日(火):初稿 |
抗告理由書仙台市○町二丁目11の14 抗 告 人 甲 野 太 郎 仙台市一番町二丁目10番26号旭開発ビル1203号 上記代理人弁護士 小 松 亀 一 御庁昭和60年(ラ)第4号執行抗告事件につき、抗告人は以下のとおり抗告の理由を陳述する。 記 原決定は最低売却価額の決定とその手続に重大な誤りがあり違法である(民事執行法71条6号)。 以下その理由を詳述する。 1 原執行裁判所のなした本件競売物件(以下本件土地という)についての金342万円の最低売却価額決定の根拠となった鑑定評価書の作成に重大な誤りがある。 2 鑑定評価書には「建築ができる幅員の条件を満たす道路に接しない」とのいう事実に反する記載内容がある。 抗告人は、本件土地を昭和38年12月28日に乙野二郎より代金49万円で買い受けたものであるが、同日次の内容で本件土地の通路としての共有持分権も買い受けた(疏甲第1、2号証)。 (1)売却物権 ①乙野二郎所有 ○市□森字△島39番の26 山林36㎡ ②丙野三郎所有 ○市□森字△島39番の24 山林42㎡ ③丙野三郎所有 ○市□森字△島50番の37 山林23㎡ のうち3分の1の共有持分権 (2)売買代金 3万0990円 (3)特約 共有持分権は共有者各自が道路として使用するもので、本件土地の承継人にも引き継がれる権利である 3 従って本件土地には道路としての上記共有持分権(以下持分権という)が付着していたのであり本件土地の所有権と持分権は主物と従物の関係にあった。両者には客観的・経済的主従結合関係があるからである。 4 従って債権者㈱徳陽相互銀行の抵当権の効力は従物である持分権にも及びその持分権も含めた鑑定評価が為されるべきであった。 然るに、評価人はこの点を見逃し、本件土地を盲地として評価し、通常は1㎡当たり2万1000円で1000万円近くするのに、342万円と不当に低く評価したのである(鑑定評価書)。 5 実際、抗告人は昭和60年4月20日、本件土地について持分権付きで、代金600万円で売却することを決定してた(疏甲第3、4号証)。原執行裁判所の本件土地についての金342万円の最低売却額の決定は、その客観的な価値に比して著しく低額であり、重大な誤りであった。 6 原売却許可決定の買受人乙野四郎は乙野二郎と同居している長男で、乙野二郎のワラ人形であり、実質的には乙野二郎と同一人である。 乙野二郎は、抗告人に対して本件土地を通行権としての持分権付きで売却した当人であり、抗告人から本件土地の売却処分についての相談も受けていたもので、抗告人の事情を熟知していた(疏甲第1号証)。 従って乙野二郎は、本件土地の調査に来た執行官に対して、本件土地には通行権がある事を告知する義務があるのに、敢えてこの事実を秘匿して、報告せず、そのため評価人は盲地として不当に安く評価し、その結果、乙野二郎は自己所有地に隣接する本件土地について不当に安い売却許可決定を得ることに成功した。乙野二郎にしてみれば、本件土地に隣接する自己所有地に通路を設定し、本件土地の価値を通常とおりの1000万円近い価格に上げ、自己の買取価額との差額600万円の利益を上げることを目論んでいることが明白である。 抗告人にしてみれば、本件土地を乙野二郎が取得することにより、乙野二郎から取得した通行権としての持分権の価値を全く失う結果となる。 7 原決定を維持することは、かような乙野二郎の抗告人の利益を犠牲にした不当な利益取得に裁判所が手助けするに等しい。 確かに最低売却価額が決定された時点で、抗告人は執行異議等の手続を取り、自己の権利保全を図るべきなのに、何らの措置も講じなかった点は、抗告人が非難されても仕方がない。 しかし、債権者の債権回収を十分にして、債権者にも債務者にも利益となるべく適正な価額での売却の実現を目的とした最低売却価額制度の意義及び乙野二郎の行為の悪質性を鑑みれば抗告人に対するかような非難があってもそれは原決定を維持する理由には成り得ない。 8 民事執行法60条によれば、執行裁判所は必要があれば最低売却価額を変更することができる。変更の理由としては最低売却価額の決定の前提とした事実認定又は法律判断に誤りがあったことなどがある。 本件土地については、通行権があるのに盲地と評価したものであり、正に事実認定に誤りが有った場合であり、最低売却価額を変更すべき場合である。 そのことが抗告人にとっても又競売申立人である㈱徳陽相互銀行にとっても利益になることであり1人乙野四郎のためにのみ本件売却許可決定を維持することは民事執行制度の根本目的に逸脱するもので到底許されることではない。 よって原決定を速やかに取り消し、乙野四郎に対する売却を不許可とする裁判を求める次第である。 以上:2,073文字
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