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再転相続での相続放棄に関する判例説明補充

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令和 4年 6月25日(土):初稿
○再転相続での相続放棄に関する第一審昭和58年10月17日神戸地裁尼崎支部判決(家庭裁判月報41巻9号108頁)、控訴審昭和59年4月26日大阪高裁判決(家庭裁判月報41巻9号105頁)、上告審昭和63年6月21日最高裁判決(家月41巻9号101頁、金法1206号30頁)を紹介してきました。

○事案が、判りづらい面もありますので、再度、詳しく紹介します。
・別紙目録(一)乃至(三)記載不動産(甲不動産)の元所有者Aが昭和57年10月26日死亡
・A相続人は、B及び代襲相続人Xら5名
・Bは、Aの相続について承認又は放棄をしないで熟慮期間内昭和57年11月16日死亡
・Bの相続人のB妻Cと子D・Eら3名は、Aの相続について昭和58年1月25日相続放棄申述受理
・Cら3名はその後Bの相続についても相続放棄申述受理
・Bの債権者控訴人Y1乃至3の3名は、甲不動産について、BがAから法定相続分の2分の1につき共同相続したものと主張し代位登記の上仮差押執行
・Aの代襲相続人Xら5名が原告としてY1乃至3に対し、共同相続による代位登記は無効として仮差押登記抹消登記の請求


○最高裁判決結論は、Aが死亡して、その相続人であるBがAの相続につき承認又は放棄をしないで死亡し、CがBの法定相続人となったいわゆる再転相続の場合には、CがBの相続につき放棄をしていないときは、Aの相続につき放棄をすることができ、かつ、Aの相続につき放棄をしても、それによってはBの相続につき承認又は放棄をするのになんら障害にならず、また、その後にCがBの相続につき放棄をしても、Cが先に再転相続人たる地位に基づいてAの相続につきした放棄の効力がさかのぼって無効になることはないものと解するのが相当としました。

○Bの債権者Yらは、Aの死亡によりA所有甲不動産の持分2分の1をBが相続したとして、その旨の所有権移転登記を代位により経由した後、Bを債務者とし右持分2の1につき仮差押命令を得て、その旨の登記を経由し、これに対し、A代襲相続人Xらは、Bの相続人であるCら3名がAの相続を放棄したことにより、Bは初めから甲の相続人とはならなかったものとみなされ、その結果、甲不動産はXらだけが相続していることになるから、Bの相続を前提とする仮差押命令による登記は無効であるとして、第三者異議の訴えを提起しました。

○Yらは、Xらの主張に対し、再転相続人であるCらはBの相続につき承認をするときに限り、Aの相続につき放棄をすることができるのであり、本件では、CらはAの相続を放棄し、かつ、Bの相続を放棄しているのであるから、Bの相続の放棄により先になされたAの相続の放棄はさかのぼって無効になり、その結果、Bは本件不動産の2分の1を相続しており、仮差押命令の執行は適法である主張しました。

○Aが死亡してBが相続人となったが、承認又は放棄の熟慮期間内にBが選択権を行使することなく死亡し、CがBの相続人となった場合を、講学上「再転相続」と呼び、代襲相続と区別しています。代襲相続の場合は、BがAより先に死亡しているため、CがBの地位に上がって甲を相続することになり、相続は一つですが、再転相続の場合には、A→B、B→Cと2つの相続が順次開始しています。

○民法916条は、再転相続の場合の承認又は放棄の熟慮期間について、Cが自己のためにBの相続が開始したことを知った時から3か月と定め、CがA→Bの相続の承認又は放棄をする期間を、BがAからの相続の開始を知った時から3か月とすると、Bの死亡時期によっては僅かな期間しか残らなくなり、Cの選択に無理を強いる結果となるため、一律に熟慮期間をB→Cの相続の承認又は放棄の期間と同一にまで延長し、Cは、Bの相続の熟慮期間内に、Aの相続の承認又は放棄を決めればよいことになっています。

○Cの再転相続の場合の承認・放棄は、①A→B、B→Cの両相続とも承認すること、②A→Bの相続を放棄し、B→Cの相続を承認することは、問題なく認められますが、CがB→Cの相続を放棄する場合に、A→Bの承認、放棄の選択権にどのような影響を与えるか解釈に委ねていました。本件のように、A→B、B→Cの両相続とも放棄されると、Bの債権者は、Aに資産があった場合でも手が出せず、且つ、Cに請求することもできず、Bに資産のない限り、債権回収を諦めなければなりません。

○Cが 先にB→Cの相続を放棄した場合、Cは民法939条により初めから乙の相続人とならなかったものとされ、CはAの相続についてBの選択権を行使する権原を失います。BのA相続について選択権は、Cの次順位相続人、相続人がなければBの相続財産法人がBの選択権を行使することになります。本件でYらが主張したように、Cが先にA→Bの承認又は放棄をし、その後にB→Cの放棄をすることは、許されないとの見解もありましたが、最高裁は、甲の相続の放棄によっては乙の相続の承認又は放棄をするのになんらの障害にならないと判示して、A→Bの放棄がB→Cの放棄に影響を与えないことを明言しました。Bの債権者は、Bに固有の遺産がない限り、債権回収の道を閉ざされてしまいました。
以上:2,124文字

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