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再転相続での相続放棄に関する昭和59年4月26日大阪高裁判決紹介

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令和 4年 6月24日(金):初稿
○「再転相続での相続放棄に関する昭和58年10月17日神戸地裁判決紹介」の続きで、その控訴審昭和59年4月26日大阪高裁判決(家庭裁判月報41巻9号105頁)を紹介します。

○事案は以下の通りです。
・別紙目録(一)乃至(三)記載不動産の元所有者Aが昭和57年10月26日死亡
・A相続人のBは、Aの相続について承認又は放棄をしないで熟慮期間内昭和57年11月16日死亡
・B相続人の妻Cら3名は、Aの相続について昭和58年1月25日相続放棄申述受理
・Cら3名はその後Bの相続についても相続放棄申述受理
・Bの債権者控訴人Y1乃至3の3名は、別紙目録(一)乃至(三)記載不動産について、BがAから法定相続分の2分の1につき共同相続したものと主張し代位登記の上仮差押執行
・Aの代襲相続人である孫5名が原告として被告らに対し、共同相続による代位登記は無効として仮差押登記抹消登記の請求
・原審が原告らの請求を認めたため控訴人Y1乃至3の3名が控訴


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主   文
本件各控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。

事   実
第一 申立

一 控訴人ら
1 原判決を取消す。
2 被控訴人らの請求を棄却する。
3 訴訟費用は第一,二審とも被控訴人らの負担とする。
二 被控訴人ら
 主文同旨

第二 主張
 次のように訂正,付加するほか原判決事実摘示のとおりであるから,これを引用する。
一 原判決2枚目裏7,8行目,10行目の「別紙」を「原判決添付」に,8行目の「本件不動産」を「「本件不動産」」に訂正し,3枚目表11行目の「ものとして」の次に「その不動産につき前記仮差押命令の仮差押登記請求権に基き」を,12行目の「登記」の次に「がなされているが,右登記は」を付加する。

二 控訴人らの主張
1 B(以下「B」という)は,その生前,A(以下「A」という)の生存中から同人の相続開始の場合は,自己の相続財産をもつて控訴人らに対する債務合計約750万円を支払う旨控訴人らに約し,Aの死後においては,自己の死亡前まで一貫してその旨を控訴人らに述べ続けたから,これによりBは,亡Aの相続につき単純承認をしたものである。

2 亡Bの妻,相続人であるC(以下「C」という)は,Bが将来Aの財産を相続する旨のB名義の念書(乙第1号証)を自ら記載し,Bの意思を承知していて,その死亡後,同女自身が亡Aの相続財産をもつて前記債務の弁済をする旨控訴人らに告げたから,Cは再転相続につき単純承認をしたことになる。

3 亡Bの相続人C,D,Eは,Bの死後現在まで居住している,Bの賃借にかかるマンシヨンの敷金返還債権100万円の存在を隠匿し,悪意でこれを亡Bに関する相続放棄申述書に記載しなかつたから,亡Aを被相続人とする相続につき単純承認をしたものとみなされるものである。

三 被控訴人らの主張
1 控訴人ら主張の念書(乙第1号証)は、Aの生前,まだBが相続人でもなければ相続財産の存否も不明の段階において,控訴人株式会社Y1代表者Fが債務の弁済をしないと商品の取込詐欺で告訴すると執拗に迫り,自らその文言を口述してCに筆記させたものであつて,Bの意思に基づき作成されたものではないのみならず,その内容も「父Aより相続を受けた際,弁債(済)する事をお約束致します」と債務弁済の時期を表示しただけで,なんら財産処分を約したものではなく,又BやCがAの死後において,同人の相続財産で弁済する旨述べた事実はないから,BやCが亡Aの相続につき単純承認したものということはできない。 

2 控訴人らの前記二の3の主張は,亡Bの相続に関するもので,再転相続である亡Aの相続には関係がない。又民法921条3号の財産目録は,財産目録の調整を要する限定承認において作成された財産目録を指し,相続放棄申述書に記載洩れのあつた場合は,これに該らない。なお,本件の記載洩れは,素人の無知によるもので,悪意あつてのことではない。

第三 証拠関係〔略〕

理   由
 当裁判所の認定判断は,次のように訂正,付加するほか原判決の理由説示のとおりであるから,これを引用する。
一 原判決4枚目表5行目の「所有である事実」を「所有であつた事実」に,6行目の「争いはない。」を「争いがない。」に,8行目の「本件不動産」から9行目の「死亡した事実」までを「前記当事者間に争いのない事実」に訂正する。

二 控訴人らは,Bが亡Aの相続につき単純承認をしたと主張し,当審証人Cの証言及び当審における控訴人Y1代表者Fの供述により真正な成立が認められる乙第1号証(公証人の確定日付部分の成立は争いがない)並びに右証言,供述(一部)を総合すると,Aの生存中である昭和57年10月24日,Bが,右F,控訴人Y2及び同Y3株式会社の社員Gから,売買取引にかかる商品の代金を支払わなければ詐欺罪で告訴すると迫られ,止むなく妻Cに代筆を命じて古川の口述をそのまま筆記させて控訴人ら主張の念書(乙第1号証)を作成した事実並びに同書面に「父Aより相続を受けた際,弁債する事をお約束致します」との文言及びBの署名捺印の存する事実を認めることができ,右供述中これに反する部分は措信しない。

そうすると,右念書(乙第1号証)によるBの意思表示は,Aの生存中の,相続開始前における意思表示であり,その内容も将来BがAを相続した場合における弁済約定にすぎないから,民法920条の単純承認ないし同法921条1号の相続財産の処分に該らない。

又前記古川の供述中には,BがAの死後同人の相続財産をもつて控訴人らの債権を弁済する旨述べた趣旨の部分があるけれども,前記当審証人Cの証言と比較して措信し難く,そのほかにはBが控訴人らとの間で右相続財産につき代物弁済ないしその予約をした事実を認めるような証拠はない。したがつて,控訴人らの前記主張は,採用できない。


 なお,Bの死亡後,Cが亡Aの相続財産をもつて控訴人らの債権の弁済をする旨控訴人らに告げたことを認める証拠は全くない。

三 更に控訴人らは,亡Bの相続人C,D,Eが,亡Bに関する相続放棄申述書に,Bの賃借していたマンシヨンの敷金返還請求権100万円の記載をしなかつたから,亡Aを被相続人とする再転相続を単純承認したものとみなすべきであると主張する。

しかし,右債権がBの固有の財産であり,亡Aの相続財産でないことは,控訴人らの主張に照らして明らかであるから,控訴人らの右主張は,主張自体理由がない。

 よつて,被控訴人らの請求を認容した原判決は正当であつて,本件各控訴は理由がないからいずれも棄却することとし,控訴費用の負担につき民事訴訟法第95条,第89条,第93条を適用して,主文のとおり判決する。
以上:2,785文字

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