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夫婦間贈与契約取消の主張を認めない地裁判決紹介

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令和 4年 2月 9日(水):初稿
○死因贈与の取消については、民法1022条がその方式に関する部分を除いて準用されると解すべきとした昭和47年5月25日最高裁判決(判タ283号127頁、判時680号40頁)がありますが、事案解明のため、その第一審昭和43年9月5日福岡地裁久留米支部判決(民集 26巻4号809頁)を紹介します。

○当初は、以下の民法第754条夫婦間契約取消の有効性が争いになっていました。
民法第754条(夫婦間の契約の取消権)
 夫婦間でした契約は、婚姻中、いつでも、夫婦の一方からこれを取り消すことができる。ただし、第三者の権利を害することはできない。


○掲載された判決には、理由文が無く、詳細は不明ですが、事案は以下の通りです。
・亡夫Aが、妻の原告に対し、居宅を贈与し、夫婦仲が悪くなってから、妻原告が贈与に基づく居宅の所有権移転仮登記仮処分決定を得て仮登記をした
・亡A生存中に妻原告に対し、その贈与契約取消の通知をした
・亡A死後、亡Aの先妻の子原告X1,X2らが、被告に対し、亡A・被告間居宅贈与契約取消、所有権移転仮登記仮処分決定・仮登記抹消の請求をした

○判決は、原告らの請求を棄却するとなっていますが、その理由文が掲載されていません。被告の妻は、仮りに亡Aの契約取消が可能であるとしても、それは、亡A及び被告間になされた贈与に関する紛争中の意思表示であり、それは被告の将来に於ける生活の期待権を喪失させるばかりか生活権そのものを破壊するもので権利の乱用であり公序良俗に反する不法行為で無効であると抗弁しており、この抗弁を判決は認めたと思われます。

○控訴審昭和46年9月29日福岡高裁判決は、一審判決を覆し、Xらの請求を認めており、別コンテンツで紹介します。

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主   文
原告等の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告等の負担とする。

事   実
原告等訴訟代理人は、原告等先代亡Aと被告間に昭和38年4月21日別紙目録記載の物件につきなされた贈与契約は存在しないことを確認する。
右物件につき福岡地方裁判所久留米支部昭和41年(モ)第5号事件により、昭和38年4月21日付贈与を原因とする所有権移転請求権保全仮登記の許可決定は、これを取消す。
被告は原告に対し、別紙目録記載の物件につき福岡法務局三井出張所昭和41年1月12日受付第158号を以てなした所有権移転請求権保全仮登記の抹消登記手続をなせ。
訴訟費用は、被告の負担とする。
との判決並びに仮執行の宣言を求め、被告訴訟代理人は、主文同旨の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、別紙のとおりである。

証拠(省略)

(別紙)
原告の事実上の主張
(請求の原因)
一、原告等先代Aは、訴外Bの仲介で、昭和36年4月3日、被告と事実上の婚姻をなし、同年9月19日婚姻の届出を了し、右届出に先立つ同年7月中別紙目録記載の宅地上に同目録記載の家屋を新築し、爾来昭和40年12月22日まで同棲生活をなし、その間右Aの長男原告X1は右Aの生活費として毎月金4万円と米、味噌、鶏卵等を贈つていた。

二、被告は、当初入籍してもらえば、財産は要らないといつていたが、その後右Aに不産動の贈与を要求するので、昭和38年4月21日原告X1宅で親子夫妻一同集合し、恒例の花見の宴を催した際、被告は右先代の終生看護を誓い、また先代の死後は原告X1と同居することを誓つたので右先代は本件宅地及び建物を被告と原告X1の共有として贈与することを約し、爾余の子女にもそれぞれ株券等を贈与することを約し、その旨を記載した決議事項と題する書面(甲第4号証)が作成された。

ところが、花見の宴も終りに近づいた頃、被告は原告X2に対し、本日の決議事項の写を書いてくれと要求したが、先の決議事項書は原告X1の妻が箪笥の中にしまつており、原告X2は酒に酔つていて記憶も確かでないからといつたところ、被告は、自分が億えているというので、被告の口述を別紙に書き留め、関係人の署名押印を求めたが、関係人等は、その内容は前に作成されたものと同一であると同じて内容を確かめることもなく署名押印した。(これが乙第1号証である。)

その相違点は、前者は本件宅地建物を原告X1と被告との両名に贈与する。とあるに反し、後者は被告だけに贈与する。となつていることであるが、このことに筆記者である原告X2が気付いたのは、被告が福岡家庭裁判所久留米支部に調停の申立をなした後、昭和40年10月19日同庁調査官の来訪を受けた時である。

三、右Aは、昭和40年夏癌腫の疑ありとして、附近の嶋田医院に入院したが、その頃から被告は、右Aの看護がおろそかになり、外出勝となつた。右A退院後病臥中も同様不誠意な状態が続いた。そのため、右Aは、同年12月22日長男一宅に移転したが、被告は右Aと同棲しなかつたので、右Aは居町の民生委員婦人会長等に、被告が同居看護するよう説得方を依頼し、折捗してもらつたが、被告がこれに応じなかつたため、己むなく附添婦を雇つていた。

なお、右Aは、右原告X1宅の周辺に鉄条網を張つたが、これは被告の来訪を妨げるためではなく、玄関からはいつでも出入できるようにしてあり、被告もその後来訪したこともあつた。

四、右のような事情であつたから、右Aは本訴原告等訴訟代理人を代理人として、前記決議事項記載の贈与契約を民法第754条に基き取消すべき旨の意思表示を昭和41年1月11日付内容証明郵便を以てなし、右意思表示は同月14日被告に到達したので、これによつて原告等先代Aと被告間における右贈与契約は消滅した。

五、これより先、被告は福岡地方裁判所久留米支部に前記贈与契約による所有権移転請求権保全のため必要ありとし、仮登記仮処分の申請をなし、昭和41年1月10日その旨の決定を得た上、福岡法務局三井出張所昭和41年1月12日受付第156号を以てその旨の仮登記をした。

六、しかし、前第四項記載の如く本件贈与契約が取消された以上、右仮登記仮処分はその原因を欠くこととなり、これに基く右仮登記も亦失当であるから、原告等はここに右贈与契約不存在の確認を求めると共に右仮処分決定の取消並びに右仮登記の抹消登記手続を求めるため本訴に及ぶ。

(被告の抗弁に対する陳述)
一、被告の抗弁を否認する。

被告の事実上の主張
(被告の答弁事実)
一、被告は訴外Bの媒酌によりAと昭和36年4月3日習俗による結婚式を挙げ同年9月19日婚姻届を提出し同人と同棲し居たものである。

二、被告はAの後妻として結婚したものであるが、Aは婚姻当時67才、被告は45才で其の年令差22年あり其の為Aは自身死亡後被告の生活を慮り且その生活を保持するため現在被告が居住する本訴物件と金100万円を被告に与えることを累次繰返し約束していたが其の所有権移転登記を為さざるうち、昭和38年4月21日三井郡小郡町端間原告X1方にAと被告及び原告等各夫妻集合し花見の宴を催し其の席上A所有の財産中被告に対し予て約束の通り、被告現住居の本訴物件を与え、原告等には不産動、其他株券等を分与する旨の申出をなし被告は勿論原告等もこれに同意し、その決議書と題する乙第1号証を作成した。

三、其後、原告中X2はその夫Cと数回被告方に来たり被告の面前でAに対し「あとよりのくせに、家屋敷を貰うとは横着だ、やることはいらぬ」と怒鳴つていたが、その後昭和40年4月頃よりAは癌腫の疑いで病床の人となり、次いで同年8月上旬住家付近の嶋田外科病院に入院加療していたが、全快せざる中、同年9月下旬上記X2夫妻は強いてAを退院させ、被告等住家に於て療養につとめたが、依然として病癒えざる中原告X1、同X2とその夫C、同Dの夫E、同Fの夫G、及び訴外H等計6人が、突如同40年12月22日午前10時頃自動車2台を連ねて乗りつけ、病中の夫Aをかつぎ出して自動車に乗せ更に被告方を捜索し、
  ミシン
  冷蔵庫
  洗濯機(日立)
  テレビ
  応接セツト(椅子4、長椅子1、机)
  掛軸2本
  器 大2、鉢盛2、
  ラヂオ
  ジヤー(飯入)
  布団(A分)
  銀行預金通帳、A実印、株券
を原告X1方に持去つた。

四、被告は日常使用する家財道具の殆どを原告等に持ち去られ、がらんどうの様な家屋内に漸く僅かの炊事道具にて不便、不自由な毎日を過し他面日々Aをその死亡迄原告X1方に尋ね慰問、看護をしようとしたが2、3回病床に面会を許されたのみで殆ど追い返され、果ては被告の裏木戸よりの訪問を防止するため原告X1方の裏木戸は勿論一方の周辺を鉄条網にて囲いし、被告の訪問を防圧するに至つた。

五、被告はA生存中同人に対し、しばしば被告が贈与を受けた本訴物件に対する所有権移転登記の手続を求めたが、同人は必らず登記してやる、疑いがあるなら家庭裁判所に行つて聞くがよい、と言うのみでその手続を為さず他面上記A入院中原告X2夫妻はAに対し「被告Yにはあの家屋敷(本訴物件)はやるな、実家に持帰る、それより自分(X2)の名義にせよ」とせまつていたとのことを病院同室の患者から聞き、被告は本訴物件に対する完全確保の不安をおぼえ久留米家庭裁判所を訪れ、上記事情を述べ如何すべきかを尋ねた結果、調停手続等により権利関係を明白にするがよいだろうとの注意を受け被告は福岡家庭裁判所久留米支部に昭和40年10月21日所有権移転に関する調停の申立をなした(昭和40年(家イ)第232号)ところ、Aは自分死亡後本訴物件は被告にやると審判官及び調停委員並びに調査官西本正吉氏に供述した為か原告等は急ぎ本訴物件に対する名義替手続を為す準備中なることを被告が知つたので大いに驚き、請求権保全のための仮登記申請を昭和41年1月10日御庁に申請し(昭和41年(モ)第5号)その決定を得た(原告等は第三者に対しまさに右名義書替登記寸前のことであつた)

六、Aは昭和41年2月7日被告に対し離婚調停の申立をなし(昭和41年(家イ)第24号)たが不調となり、

七、次いで上記の様に夫Aは原告X1方に連れ去られ原告等は上記被告の調停申立に対し、Aの弁護士に対する委任状を提出し弁護士名義をもつて原告主張の様な本件Aの贈与取消の通知をなし、且調停に於ても贈与を拒絶し、事件はたやすく終結しないので被告の生活は窮乏し困難を極めるので更に昭和41年3月中同居又は扶養料の請求調停申立を同一家庭裁判所に提出し(昭和41年(家イ)42号)調停中Aは同年4月21日死亡するに至つた。

(抗弁)
一、贈与に関する調停中調停委員会及び調査官に対しAが本訴物件を贈与することを申出たことは前記の通り明白であるが、A代理人出席後は右申出を変更し拒絶したので、被告は本件に於て原告主張の代理人名義をもつてする贈与取消の通知及び本訴請求は真実Aの意思をもつて為されたるものでないことを信じ主張する。

二、仮りに意思表示が真実であり且つ取消の意思表示は夫婦間に於ける契約の取消として可能であるとしても、右は上記の通りA及び被告間になされた贈与に関する紛争中の意思表示であり右行為は被告の将来に於ける生活の期待権を喪失させるばかりか生活権そのものを破壊するもので権利の乱用であり公序良俗に反する不法行為であるので無効である。

目録
福岡県三井郡小郡町大字小郡字前伏247番地の51、宅地 283、04平方米(85坪6合2勺)
同所同番地
 家屋番号第247番51、木造セメント瓦葺平家建居宅 1棟
   床面積 81.98平方米

以上:4,720文字

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