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民法第907条3項適用し遺産分割を2年間禁止した家裁審判紹介

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令和 2年 9月21日(月):初稿
○判例時報最新号の令和2年9月11・21日合併号を見ていたら、被相続人がした複数の遺言の効力及び解釈について相続人間に争いがあり、これに関して民事訴訟の提起が予定されている遺産分割事件につき、遺産全部の分割を2年間禁止するとの珍しい審判例が掲載されていました。令和元年11月8日名古屋家裁審判(判時2450・2451号○頁)です。

○関連条文は次の通りです。
民法第907条(遺産の分割の協議又は審判等)
 共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。

家事事件手続法第197条(遺産の分割の禁止の審判の取消し及び変更)
 家庭裁判所は、事情の変更があるときは、相続人の申立てにより、いつでも、遺産の分割の禁止の審判を取り消し、又は変更する審判をすることができる。この申立てに係る審判事件は、別表第二に掲げる事項についての審判事件とみなす。


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主   文
1 被相続人の遺産の全部について,令和3年11月7日までその分割をすることを禁止する。
2 手続費用は各自の負担とする。

理   由
 本件記録に基づく当裁判所の事実認定及び法律判断は,下記のとおりである。

第1 本件の経過
 本件記録によれば,下記の各事実が認められる。
1 被相続人(大正6年○○月○○日生の女性)は,昭和15年2月26日,Gと婚姻し,その後,両者の間には,同年○○月○○日に長男Hが誕生した。
2 Hは,昭和41年10月15日,Iと婚姻し,その後,両者の間には,昭和42年○○月○○日に長男として申立人Aが,昭和44年○○月○○日に二男として申立人Bが誕生した。
3 申立人Aは,平成7年12月25日,申立人Cと婚姻した。
4 Gは,平成10年○○月○○日に死亡した。
5 申立人Bは,平成13年7月5日,Jと婚姻した。

6 被相続人は,平成22年4月30日,被相続人の姪に当たる相手方と養子縁組した。この養子縁組に対して,申立人A及び申立人Bがその無効確認を求める訴訟を提起したが(名古屋家庭裁判所岡崎支部平成25年(家ホ)第67号,控訴審は名古屋高等裁判所平成28年(ネ)第335号。),平成28年9月14日,同訴訟の控訴審において請求棄却の判決が言い渡され,その後,同判決は確定した。

7 被相続人は,平成23年11月18日,全財産を相手方に相続させる旨の自筆証書遺言(以下「本件第1遺言」という。)をした。
8 被相続人は,平成23年12月10日,全財産をHに相続させるとともに,遺言執行者として申立人Aを指定する旨の自筆証書遺言(以下「本件第2遺言」という。)をした。

9 被相続人は,平成24年3月29日,申立人ら及びJとそれぞれ養子縁組した。このうち,申立人らと被相続人との養子縁組に対して,相手方がその無効確認を求める訴訟を提起したが(名古屋家庭裁判所平成28年(家ホ)第314号),平成30年11月29日,請求棄却の判決が言い渡され,その後,同判決は確定した。

10 Hは,平成25年○○月○○日に死亡した。
11 Jは,平成27年○○月○○日に死亡した。
12 被相続人は,平成28年○○月○○日に死亡した。
13 被相続人は,死亡した当時,別紙遺産目録記載の財産を保有していた。

14 申立人らは,平成29年12月15日,本件審判を申し立てた。これに対して,当裁判所は,平成30年3月28日,本件を名古屋家庭裁判所豊橋支部の調停に付するとともに(以下,この調停事件を「本件調停事件」という。),本件調停事件が終了するまで審判手続を中止する旨を決定した。

15 相手方は,平成30年4月7日,相手方の夫である当事者参加人に対し,自己の相続分の50分の1を無償で譲渡した。
16 当事者参加人は,平成30年4月10日,相手方から相続分の一部譲渡を受けたことにより,当事者となる資格を取得したとして,本件調停事件への当事者参加を申し出て,本件調停事件の担当裁判所からこれを認められた。
17 本件調停事件は,平成31年1月18日に調停不成立となり,本件審判手続が再開された。

18 現在,申立人らは,本件第1遺言は,これと抵触する本件第2遺言により撤回されており,かつ,本件第2遺言は,全財産を相続させるものとされたHが被相続人より前に死亡した場合には,Hの代襲者たる申立人A及び申立人Bに全財産を相続させる趣旨のものであるから,被相続人の遺産は,すべて申立人A及び申立人Bに相続されると主張している。

これに対して,相手方及び当事者参加人は,本件第2遺言は,全財産を相続させる対象とされたHが被相続人より前に死亡したことで失効しており,その結果,本件第1遺言は撤回されることなく効力を維持するから,被相続人の遺産は,すべて相手方及び相手方から相続分の一部譲渡を受けた当事者参加人に相続されると主張している。

19 申立人らは,本件審判手続において,本件第1遺言の無効確認等を求める訴訟を提起する旨の意向を表明しており,現在,その提訴を準備中である。

第2 当裁判所の判断
 前記のとおり,被相続人の遺産分割については,その前提となる本件第1遺言及び本件第2遺言の効力等に関して当事者間に争いがあり,その効力等の如何によって,相続人の範囲や各自の相続分が大きく左右される状況にある。また,申立人らは,これらの争いを民事訴訟により解決すべく,その提訴を準備中である。

このような状況下においては,当裁判所が本件第1遺言及び本件第2遺言の効力等について判断の上で遺産分割審判をしたとしても,その判断が提起予定の訴訟における判決等の内容と抵触するおそれがあり,そうなれば,既判力を有しない遺産分割審判の判断が根本から覆されてしまい,法的安定性を著しく害することとなるから,本件第1遺言及び本件第2遺言の効力等に関する訴訟の結論が確定するまでは,遺産の全部についてその分割をすべきではない。

 そして,当事者間の争い及び申立人らが提訴予定の訴訟の内容,申立人らの提訴の準備状況その他諸般の事情に鑑みると,本件第1遺言及び本件第2遺言の効力等に関する訴訟の結論が確定するまでには,向こう2年程度の期間を要することが見込まれるから,令和3年11月7日までの間,被相続人の遺産全部の分割を禁止することが相当である(なお,それより前に当該訴訟が解決に至った場合には,事情の変更があったものとして,分割禁止の審判を取り消し又は変更することが可能である(家事事件手続法197条)。)。

第3 結論
 したがって,被相続人の遺産全部の分割を令和3年11月7日まで禁止することとして,主文のとおり審判する。
 名古屋家庭裁判所家事第2部 (裁判官 山田哲也)
以上:2,993文字

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