平成19年 4月14日(土):初稿 |
○遺言執行者とは、民法第1012条で「相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。」と規定され遺言書の内容を具体的に実現する者で、遺言書に書かれている内容・趣旨にそって、相続人全体の代理人として財産を管理し名義変更などの各種の手続を行います。 ○遺言執行者をおかなくても、相続人が自分たちで執行できるものもありますが、遺言はしばしば相続人の間で利益が相反する内容も多く、相続人全員の協力が得られられない場合があります。そうした場合には遺言の内容を第三者の立場から忠実に、かつ公平に実行してくれる遺言執行者が必要になってきます。 ○遺言執行者は、遺言で指定される場合と、家庭裁判所により選任される場合とがありますが、遺言で遺言執行者に指定されたからといって、その者が必ず遺言執行者にならなければならないというものではなく、指定された者が承諾してはじめて遺言執行者になります。 ○遺言執行者を選任するのは、遺言の内容によっては、相続分の指定や遺産分割の禁止のように、執行を必要としないものもありますが。執行を必要とするものも多くあります。たとえば、認知の遺言があればその認知届をしたり、相続人以外への遺贈があれば引渡しや登記という執行が必要になります。 ○遺言執行者による執行が必要なものは ①認知、②推定相続人の廃除・取消 この場合は、遺言執行者が必要で、もし遺言執行者がいないときは、家庭裁判所に遺言執行者を選任してもらわなければなりません。 ○遺言執行者がいない場合、相続人が執行できるもの ①遺贈、②遺産分割方法の指定、③寄付行為 遺言執行者がいる場合には、相続人は相続財産の処分その他遺言の執行を妨害する行為をすることはできません。 ○遺言の執行を必要としないもの ①相続分の指定、②遺産分割の禁止、③遺言執行者の指定など 被相続人の死亡と同時にその効力が生じ、それ以上に遺言を執行する余地のないもの。 ○「相続させる」と指定された財産は、遺言者死亡時に直ちに指定された財産が指定者に承継されると解釈されており(平成3年4月19日最高裁判決)、指定者が単独で名義移転手続が出来ますので、遺言執行は不要で遺言執行者の関与は不要です。通常、相続財産で重要な不動産の所有名義移転に遺言執行者の関与は不要です。また、預金払戻も「相続させる」と指定された相続人が単独で出来ますから、これも遺言執行者の関与は不要です。「相続させる」と指定された場合、不動産の名義移転も預金の払戻も遺言執行者の関与は不要で、遺言執行者がやることは意外に少ないのです。 以上:1,069文字
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