平成19年 4月14日(土):初稿 |
○遺言書は相続人間に争いを生じさせないために作成するものですが、その内容によっては「お父さんはそんな遺言書を作成するはずがない」と確信して最終的には遺言無効確認の訴えが提起されるなど却って争いになることがあります。 ○争いになる遺言書は、特定の相続人に殆どの財産を相続させるなどの法定相続分を大きく外れた財産処分内容になっている場合であり、このような遺言書を作成する場合は、特に注意が必要で、私は、その動機や背景事情を遺言書の中に記載した方が良いと思っております。 ○また遺言による財産処分は遺留分を侵害した部分は無効とされ、遺留分減殺請求をされて争いになる例は、遺言無効より遙かに多くあります。私の経験では、遺言書に関する相談の殆どは、この遺留分に関するもので、遺言書を無効と出来ないかと言う相談はそれほど多くはありません。 ○そこで遺言書を作成する場合は、明らかに遺留分を侵害する内容の遺言書作成は避けるようにアドバイスしています。ある公証人の方から聞いた話では、妻の身の上が心配として妻に全部相続させるとの内容の遺言書は結構多いとのことでしたが、母子の争いを避けるためには、例えば子供が3人いる場合、その子供の遺留分は12分の1になりますので、遺留分に近い割合の財産は子供にも相続させる内容にした方がよいでしょう。遺留分については、「相続概観の遺留分」にその基本を、又、「遺留分減殺請求権雑感1-遺留分制度の趣旨」以下に問題点の説明をしています。 ○何としても相続させたくないと言う相続人に対しては、遺言で相続人から廃除すると記載すれば、遺言執行者が家庭裁判所に排除の申立をして認められれば目的を達します。廃除の要件は、「被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったとき」で簡単には認められません。 ○遺言書に関して争いが生じるのは、相続人の誰かが遺言書内容が「納得できない」となったときです。そのためには極端に不公平になることを避け、また不公平になった場合は、その理由等も記載し、遺言書内容を納得せざるを得ないように工夫する必要があります。 ○納得させるための遺言書の要件は ①判断能力があるうち即ち惚けないうちに書くこと、 ②自分で考えて作ること-誰かの言いなりで書かないこと、 ③判りやすく書くこと ④出来る限り実質的公平さを保つこと が重要です。 以上:993文字
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