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高齢者の遺言-遺言能力の立証方法

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平成19年 4月11日(水):初稿
○高齢者が自分の死後、相続人の間で争いを残さないように遺言書を残したものの、その遺言書を巡って争いが起きないようにするためには①遺言能力と②真意性について確認できる資料を残しておくことが重要ですが、先ず遺言能力について検討します。

○遺言書作成時には全く健康状態に何ら問題ない場合は、特に遺言能力について資料を残す必要はありませんが、特に脳出血、脳梗塞等の脳疾患(中枢神経)を経験した高齢者の遺言作成に当たっては、後で問題にされないためには、担当医師等の診断書を準備しておくべきでしょう。

○公正証書遺言書を作成する場合には「遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授すること。」が要件になっています。「公正証書遺言の方式と問題点-口授に注意」に記載したとおり、この要件は、厳格には守られていないのが実情です。

○しかし、遺言者が例えば脳梗塞等で発声能力に問題がある場合、遺言内容に不満のある相続人は、この点を捉えて「口授」出来るはずがないから、「口授」の要件を欠き、その公正証書遺言は無効であると争うことがありますので、脳疾患によって言語障害が残った場合には、自分の意志を表明できる程度の発声は可能との医師の診断書を用意した方が良いでしょう。

○遺言能力立証のための診断書作成医師は、出来れば精神科の医師が望ましいところですが、本人が長期間治療等を受けているかかりつけの医師がいれば、その医師でも良いでしょう。要は本人の状態を良く知っており、後日、証人尋問等が必要になった場合、証人として耐えられることが必要です。

○遺言能力立証のための医師の診断書は、単に遺言能力があるとの結論だけでの診断書では不十分です。可能な限り、その根拠、例えば見当識の障害の有無、記銘力の障害の有無、計算能力の程度等も記載して貰った方が良く、万全を期すには長谷川式スケール等の客観的資料もあれば更に良いでしょう。

○但し、遺言能力の判断は最終的には法的判断であり、医学的な精神活動の客観的データのみによって決定されるものではありません。遺言者の置かれた周囲の環境も問題になります。これは真意性に繋がるものですが、遺言書作成時の本人の環境が自発性を損なわれない状況であったかどうかも、遺言能力判断の対象になりますので、医学的データがあればそれで万全とは言えませんので、注意が必要です。
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