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自筆証書遺言の方式と問題点

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平成18年 2月23日(木):初稿
○自筆証書遺言(民968条1項)では、「自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。」とされていますが、遺言の相談で多いのは自筆証書遺言が多少要件に欠ける場合の有効性です。

○自筆証書遺言に「自書」を要件にしたのは「筆跡によって本人が書いたかどうかを判定でき、それ自体で遺言者の真意に出たものであることを保障するため」であり、その要件の解釈は「自筆証書遺言は、偽造・変造の危険が大きく、遺言者の真意を巡って争いが生じやすい方式なので、厳格にすべき」とされています(最判昭和62.10.8判時1258号64頁)。

○自筆証書遺言の有効性について問題になった判例を紹介します。
・他人の添え手を受けて作成された自筆証書遺言は原則として無効ですが、①遺言書作成時遺言者が自書能力を有すること、②他人の添え手は単に始筆・改行・文字間や行間揃えのため遺言者の手を正しい位置に導くにとどまるか、または筆記を容易にするために支えとして借りただけであること、③添え手をした他人の意思が運筆に介入した形跡のないことが筆跡の上で判定できることの3要件があれば有効になります(最判昭和62.10.8判時1258号64頁)

・カーボン複写による作成は有効ですが(最高裁三小平成5.10.19判時1477号52頁)、重要部分である末尾財産目録がタイプ印刷された場合は無効です(東京高判昭和59.3.22判時1115号103頁)。

・押印については、遺言者が印章に代えて拇印その他の指頭に墨、朱肉等をつけて押捺したものでも有効です(最判平成1.6.23判時1318号47頁他)。

・数葉(複数頁)に渡る場合で1通の遺言書として作成されているときは、日付、署名、捺印は一葉にされただけで十分であり(最判昭和36.6.22月報13-11-73)、その間に契印・編綴がなくても有効です(最判昭和37.5.29月報14-10-111)。

○自筆証書遺言の加除変更は、民968条2項で「遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない。」とされています。この点が争いになった判例を紹介します。
・遺言書中の加除変更が遺言者以外の他人によってなされても、加除変更部分が僅少部分にとどまり付随的補足的なもので、その部分を除いても遺言の主要な趣旨が表現されており、加除変更が遺言者の遺志に従ってなされたものであれば、この他人による加除変更を持って遺言書全部を無効にすることは出来ません(大阪高判昭和44.11.17判時587号38頁)

・遺言者が書き損じ文字を抹消した上、これと同じ趣旨の文字を改めて記載したような明らかな誤記の訂正については、方式違背があっても遺言書の効力に影響はありません(大阪地判昭和57.10.25判タ489号105頁)。
以上:1,210文字

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