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”自民党LGBT法案-女湯問題は「デマ」なのか”紹介

令和 5年 6月11日(日):初稿
○自民党LGBT法案は、維新・国民民主案を丸呑み修正して、同党らの賛成も得てまもなく成立する見込みとのことです。LGBT法案について殆ど関心がなく、内容も全く不勉強でしたが、この法案が通ると、男が女と称して女湯に入れるようになるので問題と指摘されていること位は知っていました。そんなことが現実に起こるのかとその問題点指摘に対し疑問を持っていましたが、千田有紀武蔵大学社会学部教授の以下の記事によるとアメリカで現実に起きて、現在訴訟になっているとのことで、その備忘録です。
なお、私は夫婦別姓婚、同性婚いずれも賛成の立場です。特に夫婦別姓婚は、世界で唯一認めない制度を早く改めるべき思っています。

○2021年にカリフォルニアにおける韓国スパでおきたWiSpa事件では、公式に認められたトランス女性が、小さな女の子の前で半勃起させた男性器を見せて寛いでいたので、女の子の母親がスパのスタッフに抗議したところ、スタッフは法律上差別は許されないので見過ごすしかないと答え、その遣り取りがSNSで拡散され、賛否両論の大騒ぎになった事件のようです。このトランス女性については「公然猥褻罪の容疑者として自称トランス女性の連続性犯罪者ダレン・メラジャーをひっそりと起訴」され、現在無罪を主張しているとのことです。

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自民党のLGBT法案――女湯問題は「デマ」なのか、「不当な差別」とはどういう意味なのか
千田有紀武蔵大学社会学部教授(社会学)、2023/6/5(月) 0:05


風呂の話は「デマ」なのか?
ある弁護士は以下のように語っている。
公衆浴場における衛生等管理要領では、身体の特徴に基づく性別ごとのゾーニング(区分け)はトランスジェンダーの利用者にも適用され、現在検討されている性的少数者への理解増進法や差別禁止法が成立しても、「対応に何ら変更はない」と明言。「そもそも公衆浴場は利用者全員が裸になるという特殊な状況であり、トイレのような他の男女別施設では、利用者が自認する性別で判断していくのが国際的潮流だ」
と説いた。
1.トイレは、身体にかかわらず、性自認で利用することが「国際的潮流」である。
2.公衆浴場は、現行では衛生等管理要領があるため、身体に沿った入浴が行われている。
という。しかし、もしも性自認による差別を禁止する法律、要領よりも上位の法律が成立した際に、「対応に何ら変更はない」ということが保障されているのだろうかという疑問がわくのは、申し訳ないのだが、当然だろう。

2021年にカリフォルニアにおける韓国スパでおきたWiSpa事件
日本でいう健康ランドのような場所で、女風呂にいたトランス女性(公式書類も女性)が、小さな女の子のまえで性器を勃起までさせていたという事件である。現在、裁判中であるが、当人は「トランス女性」であると無罪を主張している。結局、2度のデモからの乱闘騒ぎ、アンティファを含む大量の逮捕者を出した事件へと発展した。当初は「極右の宗教原理主義者によるデマだ」とされていたが、そうではなかった。私も違うと思っていた。

なぜならフロントに猛抗議をする女性に対し、従業員は法律なのだから仕方ないのだと対応しており、実際にカリフォルニアの州法民法51条において差別が禁止される「性別」には、「性自認」が含まれていると明記されているからである。当然起こり得ると考えられていた事件だった。WiSpaやその他のコリアンスパについての報道や口コミをひと夏かけて訳してみたが、それまでにも同様のトラブルは多数報告されていた(WiSpa事件について、日本語で読めるもっともまとまった情報は、おそらくBlah氏による「Wi SPA事件を振り返る」である。日本の報道機関による、正確な報道はほとんどない)。「Blah氏による「Wi SPA事件を振り返る」参照

こうした外国での先例を踏まえれば、「性自認による差別」を法律として書き込む際に、将来に生じ得る問題になるのは当然である。ましてやいまは、性別適合手術をしてひとの戸籍の性別変更の審判を許す特例法の、手術要件の廃止までもが大きな議論になっているのである。男性の外性器をつけた戸籍上の女性が成立する可能性すらあるのだから、風呂の話を「デマ」として片付けるのではなく、立法の前にきちんと議論をしておくことは当然、必要とされることであろう。「性自認(性同一性)を理由とする差別」という文言が焦点となるのは当然のことである。

「不当な差別」は許されない?
自民党は、「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されない」という文言を、「性的指向及び性同一性を理由とする不当な差別はあってはならない」と変更した。概ね、法的な意味や効果は変わらないが、「正当な差別」があるかのような印象を与える点がよくない、というような批判的な報道が多くなされている。「差別」の意味を検討する際に「広辞苑」が引かれている報道も見た。しかし、これは法律の話なのだ。引くのは、広辞苑でいいのだろうか。

以下は、16日の自民、公明両党の与党政策責任者会議の合意のあとの新聞報道である。自民党案を批判する記事であるが、私の見た限りでは、「不当な差別」について法学者に聞いたほぼ唯一といっていい記事であった(少なくともこの時点では)。
追手門学院大の三成美保教授(ジェンダー法)によると、「不当な差別」という表現は2016年成立のヘイトスピーチ解消法で使われている。憲法学では、合理的な区別と不合理な差別を分けることが通説であり、不適切とまでは言えないという。ただ「何が正当で、何が不当なのかという範囲を明確にしなければ、恣意的な法解釈がなされる恐れがある」と危惧する(実効性が低下する懸念…LGBTQ理解増進法案 自民、公明が修正合意 識者はその内容をどう見る?)

「不当な差別」という文言が使われているのは、この法案だけではない。上記の指摘通り、ヘイトスピーチ解消法に「不当な差別的言動」という文言があるし、実は、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律にも「性別による不当な差別」、障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律にも「不当な差別的取扱い」という文言がある。なにも、LGBT関連法にだけある用語でもないのだ。

ましてや「憲法学では、合理的な区別と不合理な差別を分けることが通説であり、不適切とまでは言えない」のである。法律の世界では、差別は必ずしも日常用語とは同じではないようだ。ある特定の事由を理由として、あるべき取扱いと異なった取扱いをすることが差別と呼ばれているようであり、日常語に込められるよりは「非難」のニュアンスは薄いようだ。

私は法律の専門家ではないのに、間違うリスクを冒しながら、周囲の専門家に聞いたり、自分で調べたりして、この原稿を書いている。そんなことをしなくても済むように、法案等について報道する際には、報道機関がまず法律の専門家に聞いて欲しい。それが最低限の報道の使命ではないか。一連のLGBT法案にかんする新聞報道を追ってみると、事実認定や解説がほぼ運動団体のものに依拠しており、専門家の意見が聞かれてもいないことに、非常に驚いた。正確な情報がなければ、私たちは判断のしようがない。

いずれにせよ、この「不当な」という文言が入ることで、すべての異なった取り扱いが即座に差別とは認められないことは、一定の意味があるのであろう。なぜ法律の文言なのに、法律の談議にならないのだろうか。「何が正当で、何が不当なのかという範囲を明確にしなければ」という三成教授の意見はもっともである。法案については、もっと議論を尽くすべきではないのだろうか。
以上:3,169文字

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