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法律事務所譲渡に伴う事件・顧問先の譲渡は”紹介”に該当するか?

平成31年 3月20日(水):初稿
○現行弁護職務基本規程第13条では
弁護士は、依頼者の紹介を受けたことに対する謝礼その他の対価を支払ってはならない。
2 弁護士は、依頼者の紹介をしたことに対する謝礼その他の対価を受け取ってはならない。

と規定されています。

○弁護士法第72条では、
弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
と規定され、法律事務の周旋について、弁護士自身は規制されていません。

○ですから現行弁護職務基本規程第13条での弁護士の依頼者紹介についての対価授受禁止は、弁護士法の要請ではありません。日弁連の職務基本規程逐条解説(コンメンタール)によれば、依頼者紹介対価支払禁止の趣旨は、弁護士が、単に依頼者を紹介したということだけで、その相手方から対価(紹介料)をもらうことは品位にもとるからであると解説されています。要するに弁護士は、一般的事業者ではなく、世の指導者たるべきであり、一般の事業者には当然に許されている仕事を紹介して紹介手数料を貰うようなえげつないことはするなという趣旨です。

○弁護士が高齢・病気等を理由に法律事務所を他の弁護士に譲渡する場合、机・打合せ机等什器備品・書籍等動産物件の譲渡だけでなく、現在受任中の事件或いは顧問契約を締結して定額の顧問料を頂く契約を譲渡することになります。この受任事件或いは顧問先(顧問契約)を譲渡して対価を貰うことは、弁護士職務基本規程第13条事件紹介に該当して、対価授受禁止規定が適用されるのかとの問題があります。もし適用されるとすれば、弁護士は対価を受け取って事業を譲渡することができなくなります。

○法律事務所の譲渡の際に、苦労して得た事件や顧問先を譲渡しても対価が受領できないというのは極めて不合理です。そこで私は、弁護士職務基本規程第13条の「紹介」には、事業としての委任契約の受任者の地位「譲渡」は含まれないと解釈すべきと考えています。「紹介」とは弁護士法第72条の「周旋」と同義とすれば、紹介も周旋も「(訴訟)事件の当事者と訴訟代理人との間に介在し、両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為を指称し、必ずしも委任関係成立の現場にあつて直接之に関与介入するの要はない」と定義されます(昭和34年2月19日名古屋高裁金沢支部判決)。

○法律事務所譲渡に伴う受任中の事件或いは顧問先の譲渡は、既に譲渡人弁護士と依頼者の間には委任契約が成立しています。この成立した委任契約で弁護士は受任者の立場であり、その譲渡は、委任契約の受任者たる地位の譲渡になります。「紹介」とは「周旋」と同義であるとすれば、「事件の当事者と訴訟代理人との間に介在し、両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為を指称し、必ずしも委任関係成立の現場にあつて直接之に関与介入するの要はない」ことになります。

○この「紹介」での弁護士の立場は、「両者間における委任関係成立のための便宜をはかり、其の成立を容易ならしめる行為」という事実行為をすることです。紹介された弁護士が依頼者と委任契約に至りますが、紹介した弁護士は、単に紹介だけであり、自ら法律行為である委任契約締結には至りません。これに対し、法律事務所譲渡に伴う受任中の事件や顧問先の他の弁護士への譲渡は、既に成立している事件委任契約や顧問契約という委任契約の受任者たる地位を譲渡する契約を締結します。従って譲渡契約の相手方である譲受人から対価を取得しても、それは事件や顧問先の「譲渡」の対価であり、単なる「紹介」に対する対価ではなく、弁護士職務基本規程第13条に違反しないとの結論です。
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