平成30年 2月 8日(木):初稿 |
○「”裁判手続等のIT化検討会”第2回会議配付資料-韓国裁判手続紹介」の続きで、平成30年2月7日開催第5回検討会での資料「民事訴訟の手続段階ごとに見たIT化の視点」を紹介します。 ○概要は以下の通りです。 ・第1回口頭弁論期日指定からIT技術で双方期日調整をしTV会議等により実質審理に入る(第1回期日の現状は原告のみ出頭での形式審理) ・争点整理手続/期日における審理も、ITツール活用で、メリハリの付いた効率的・効果的な審理(出頭の必要性に応じた対応、充実した議論の確保等) ・争点整理手続/期日間のやり取り・提出は、オンライン提出に一本化し、期日の確保や期日間隔の短縮化し、争点整理手続をより計画的・集中的に進行 ・争点整理手続/争点の確定・和解協議は、電子データ共有・確認によりウェブ会議等の活用で迅速・合理的に行う ○これが実現すると弁護士業務も、これまでのような時間をかけることを当然の前提とした処理では、まかないきれなくなり、より一層の業務合理化・迅速化が求められ、これに対応できる事務所とできない事務所で益々差が出てくることが確実です。弁護士事務所自体のより一層のIT活用・合理化が必要なことを自覚しなければなりません。 ******************************************** 民事訴訟の手続段階ごとに見たIT化の視点(その2) ― 第1回口頭弁論期日の指定から争点整理手続まで ― 1 第1回口頭弁論期日の指定段階 【再掲】 (1) 第1回口頭弁論期日の調整・指定について、利用者目線で、当事者の負担軽減や業務の効率化という観点から、どのような方策が考えられるか。原告と裁判所のみの都合で指定することが多い現行の取扱いに代えて、例えば、当事者双方と裁判所がオンラインのシステム上で、互いの都合を確認して調整・指定するような仕組みも考える余地があるのではないか。 (2) オンラインでの期日調整等のやり取りを通じ、第1回期日前の早期段階で、被告の応訴態度等を適切に確認・把握し、当事者の一方のみしか出頭せず、形式的になることが少なくない第1回口頭弁論期日を見直す方策も検討することが考えられるのではないか。 (3) e事件管理の観点から、オンラインを通じて、当事者双方が指定期日やその予定等を確認・把握することができるようにする仕組みが有用と考えられるのではないか。 2 第1回口頭弁論期日の段階 【再掲】 (1) 第1回口頭弁論期日について、擬制陳述制度のために当事者の一方が出頭せず、期日が形式的なものとなることが少なくない現行の取扱いについて、IT技術を活用したe法廷(e-Court)の実現として、期日の在り方を含め、民事訴訟のプラクティスについて必要な見直しの検討をすることが望ましいのではないか。 (2) 第1回期日について、当事者の裁判所への出頭の負担を軽減するため、当事者の一方又は双方によるテレビ会議やウェブ会議(例えば、最寄りの裁判所や弁護士事務所等に所在して対応)を積極的に活用するなどの新たな方策を講ずることが考えられないか。 (3) 第1回期日の審理において、電子記録を有効に活用し、紙媒体の存在を前提としない審理の在り方について、考えていく必要があるのではないか。 (4) 請求内容に争いがない場合や被告の応訴がない場合には、テレビ会議等を有効に活用すること等により、当事者の出頭の負担等をなくして、速やかに和解手続や判決手続につなげていく方策を検討することが考えられないか。 (5) e事件管理の観点から、第1回期日の結果や次回期日の予定等を当事者が容易かつ随時に確認することができる仕組みが有用と考えられるのではないか。 3 争点整理手続/期日における審理 (総論) (1) 利用者の立場から見れば、上記2と同様、争点整理手続についても、IT技術を活用したe法廷(e-Court)の実現として、期日の在り方を含め、民事訴訟のプラクティスについて必要な見直しの検討をすることが望ましいのではないか。特に、利用者の立場からは、争点整理手続の運用について、主張書面の応酬に陥り全体として冗長になりがちではないかという指摘もあり、ITツールの活用等を通じ、より効率的で充実した争点整理の実現が期待されるのではないか。 (2) 争点整理手続について、基本的に全ての期日に双方の当事者が裁判所に出頭することを前提とする現行の取扱いを見直していく必要があるのではないか。各期日に裁判所への出頭を希望する当事者等には、従前と同様の機会を保障する一方で、出頭以外の方法で参加を希望する当事者等のニーズに対応して、ITツールの活用により、当事者等の出頭に代わる争点整理期日への関与の在り方を検討することが期待されるのではないか。その場合には、利便性の向上と共に、一方当事者が裁判所に出頭していない場合等における適正手続の保障や公平性にも十分配慮する必要があるのではないか。 (3) 争点整理手続においては、事件の内容や進行等により、①当事者からの準備書面等の提出や進行の確認等にとどまる場合と、②主張・証拠に基づいて裁判所・双方当事者が口頭で議論を重ねる場合の双方があるため、ITツールを活用することにより、メリハリの付いた効率的・効果的な審理(出頭の必要性に応じた対応、充実した議論の確保等)が可能になるのではないか。 (4) 共同訴訟や訴訟参加など、多数の訴訟関係者が関与する事案においても、ITツールの活用により、効率的・効果的審理が可能になるのではないか。 (争点整理手続におけるウェブ会議等の活用) (5) 利用者の立場からは、争点整理手続期日において、ウェブ会議(音声・映像のみでなく、文字やファイル等を用いたリアルタイムのコミュニケーションが可能な会議)やテレビ会議を積極的に活用することが望まれるのではないか。当事者の時間・費用の負担の軽減という観点はもちろん、裁判に対する参加機会の確保や審理の効率化(司法アクセスの向上)の観点からも、ウェブ会議等の活用に対する利用者ニーズは高いのではないか。 (6) ウェブ会議等の活用に当たっては、幅広い者にとって利用可能で、かつ、利便性の高いものとする観点から、一方当事者のみが最寄りの裁判所に赴いて利用することができる現行の争点整理手続期日におけるテレビ会議の取扱いを見直し、当事者が希望する場合等には、双方又は一方の当事者が、裁判所以外の場所(例えば、弁護士事務所や企業の会議室等の適切なスペース)に所在しながら、オンラインで期日に対応することを可能とする新たな方策を講ずることが望ましいのではないか。 (7) 争点整理手続は、紙媒体による訴訟記録を前提とした現行の制度・運用を前提としても、ウェブ会議等を活用することで、訴訟記録を参照しながら口頭で議論することにより、期日の目的を達成することが十分可能と考えられるのではないか。したがって、訴訟記録の電子化や書証のe提出の実現を待つことなく、速やかにウェブ会議等を活用した争点整理の実施に向けた検討が望まれるのではないか。 (8) 将来的に訴訟記録が電子化された場合には、電子情報として交換・共有された主張・証拠をもとに、ITツールを活用することで、より効率的・効果的な争点整理が可能となるのではないか。その議論の手法については、民間の会議や諸外国の裁判所の取組等も参考になるのではないか。 (争点整理作業におけるITツールの活用) (9) 様々な主張や多数の証拠がやり取りされる争点整理手続の特性に鑑みれば、争点整理段階で、電子ファイル、サーバー等のITツールをより広く活用して、より効果的・効率的に整理作業を進める方策の検討も必要ではないか。 (10) 訴訟記録が電子化されたものになることにより、当事者からの事件記録に対するアクセスや検索が容易になるとともに、例えば、各当事者が共通フォームにそれぞれの主張・証拠を入力することで一覧性・対照性を高めたり、裁判所と双方当事者が互いに主張整理内容を書き込む単一ファイルを作成したりすることで、争点整理の結果を速やかにまとめて共有することが考えられるのではないか。 (争点整理手続のe事件管理) (11) e事件管理の観点からは、争点整理手続期日の結果や次回期日の予定等を当事者(当事者本人と代理人の双方)が容易かつ随時にオンラインで確認することができる仕組みが有用と考えられるのではないか。これにより、裁判所・双方当事者が争点整理手続期日で確認された進行計画やプロセスをオンラインで容易に確認し共有することができ、当事者からの提出期限の遵守も含めた進行予定の着実な実施と計画的審理の実現を期待することができるのではないか。 (争点整理手続のIT化のあい路) (12) 本人訴訟の場合におけるIT面のサポート方策(ウェブ会議等の利用が困難な場合等)について、他の場面と同様、必要かつ十分な対応を検討する必要があるのではないか。IT面のサポート方策として、その実施主体や内容等については様々な方策やアプローチが考えられるが、例えば、ウェブ会議等で行う争点整理期日について、特に配意・対応すべき事項はあるか。 (13) ウェブ会議等において必要とされる情報セキュリティレベルや情報セキュリティ対策(漏洩等)について、どのように考えるか。例えば、民間サービスとして広く利用されているウェブ会議ツールを争点整理手続のために試行的に活用するなどの取組を進めていくことが考えられるのではないか。 (争点整理手続のIT化プロセス) (14) 争点整理手続でのウェブ会議等の活用は、期日ごとに裁判所に赴く現行の取扱いを維持しつつも、ウェブ会議等での期日参加を容易にする選択肢を加えるものとも捉え得るから、利用者目線で見れば、導入に当たってのハードルが低く、条件が整えば速やかに導入することが望まれるのではないか。 (15) 争点整理手続でのIT化(e-Court)の速やかな導入は、弁護士等の訴訟代理人や官公署等にとって、IT化されていく新しい裁判実務に親和・精通していく契機ともなるため、裁判手続等のIT化を進める第一歩として速やかな検討の着手と実現が必要ではないか。 4 争点整理手続/期日間のやり取り・提出 (オンラインでの主張等のやり取り) (1) 利用者目線に立ち、e提出(e-Filing)による裁判手続の全面IT化を目指す観点から、訴状・答弁書等と同様、当事者からの主張等(従前の準備書面、書証等)の提出についても、紙媒体のものを裁判所に提出する現行の取扱いに代えて、オンラインでの提出等に一本化していくことが望ましいのではないか。 (2) 当事者から提出される主張等を相手方に送付するには、ITツールを活用して、オンラインで迅速かつ効率的に行うことが相当ではないか(例えば、専用システムに当事者がアップロードした電子情報を、相手方がダウンロードして入手するなど)。また、上記の専用システム構築までの措置として、準備書面等について、当事者間で電子メール等のITツールを用いた直送の実施等が考えられるのではないか。 (3) 期日間に、裁判所・双方当事者間で行われる釈明・確認・事務連絡等のやり取りについて、従前の電話、郵便又はファクシミリによる方法に代えて、ITツールを活用したオンラインでのやり取りを取り入れる(例えば、ウェブ会議上でチャット類似のやり取りを可能とするなど)ことが考えられるのではないか。 (4) 当事者から提出される主張等の電子化、オンライン提出のほか、第三者から情報が提出される場合(例えば、文書送付嘱託・調査嘱託の場合等)の対応についても、考えていく必要があるのではないか。[証拠調べの在り方として、主に第6回会議で検討予定] (オンラインでのやり取りのあい路) (5) 本人訴訟の場合におけるIT面のサポート方策(オンラインでの電子情報の授受が困難な場合等)や、情報セキュリティ対策についても、他の場面と同様、必要かつ十分な対応をする必要があるのではないか。このような観点から、期日間のやり取り・提出について、特に配意・対応すべき事項はあるか。 (オンラインでの事件管理) (6) 必要な場合には、オンラインでの期日の調整(システム上のカレンダー利用)等のやり取りを通じ、裁判所・双方当事者が複数期日を一括して予定・確保することなどにより、期日の確保や期日間隔の短縮化が容易となり、争点整理手続をより計画的ないし集中的に進行させることが可能となるのではないか。いったん指定した期日の変更・再調整についても、同様に考えられるのではないか。 5 争点整理手続/争点の確定・和解協議 (1) 争点整理の結果として確定したものについて、裁判所及び双方当事者が電子データにより共有・確認することができる仕組みを設けることが考えられるのではないか。また、その確定した最終成果物のみを争点整理の結果とすることで、その後の審理を効率的なものとすることも考える余地があるのではないか。 (2) 争点整理段階で随時に試みられる和解協議についても、ウェブ会議等の活用を可能とすることが十分に考えられるのではないか。和解協議の場合、裁判所・双方当事者が一堂に会さず、裁判所が当事者の一方のみと交互にやり取りをする場合も少なくないが、そのような場合にも、利用者の立場からは、適正手続に配慮した上で、ウェブ会議等のITツールを活用して和解協議を迅速かつ効率的に行うことを可能とすることが望ましいのではないか。 (3) e事件管理の観点からは、事件の進捗状況や争点整理の結果等についても、当事者が容易かつ随時にオンラインで確認することができる仕組みが有用と考えられるのではないか。 以上:5,642文字
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